盆栽に学ぶ:人材育成とマネジメントの三つの心得
私が今年始めたことで良かったことのひとつが盆栽です。盆栽は鉢植えの樹木を言いますが、盆栽との付き合い方から学ぶことが多くあります。それは大きくまとめて次の3点です。
対象の全体像と環境に気を配ること
任せっきりにするのではなく適切な箇所に手を入れてガイドすること
手を入れ過ぎず対象の自ら伸びる力に任せること
まず1点目ですが、盆栽は全体の姿を整えることが重要と言われています。また、気温や湿度、日当たりや風通しなどの生育環境にも配慮しなければなりません。気温が低い冬の夜には室内に入れるなどして根の凍結を保護する必要があります。ただし保護しすぎるとかえって寒さへの耐性が低下するなど、樹木本来の生命力を損なうことがあるため、傷まない程度に寒さを経験させる必要があるそうです。ビジネスにおける人材の育成にも同様のことが言えるのではないでしょうか。人材を過保護にし過ぎると能力が伸びませんが、適切な環境を用意しないと仕事どころではなくなるでしょう。
2点目については、盆栽は針金をかけて幹や枝を曲げて育てることがあります。これは樹形を美しくするという目的が主であるようですが、日当たりや風通しを良くして健康を保つという効果もあるそうです。また、下向きに伸びたり同じ個所から何本も出たりしている枝などを忌み枝と言い、不要な枝として切ることをしますが、これも同じ理由です。つまり、樹木が伸びるに任せるのではなく、適切な箇所に手を入れて全体の生育をバランスよくすることが重要です。これも人材育成に例えれば、放任するのではなく適切に指導しガイドすることで早く大きく、バランスよく育っていくということが言えそうです。
最後の3点目も重要です。盆栽が育つには長い時間がかかりますし、病気や虫によって生育が妨げられることもありますから、毎日その姿形や健康状態を確認しないといけません。しかし何より大切なのは自分が盆栽を育てているというよりも、盆栽は樹木そのものの生命力によって育っているということです。自分はその生育をサポートする存在であり、生育のすべてをコントロールすることは決してできないわけです。ビジネスに例えれば、プロジェクトも人材も組織も必ず相手があって成り立つものでありますから、全てを自分の意のままにしようとするのではなく、注意深く見守ることと、自律的な活動を助けることが重要と考えられます。
以上のように、盆栽は人材育成やマネジメントに役立つ、深い趣味であると思っています。私も今年42歳で人生の折り返し地点に来ていますが、盆栽は80歳になっても楽しめるでしょうから、ライフワークにすることもできると考えています。人生は一回きりなので、樹木のように日々生長していきたいものです。それでは皆さま、良いお年を!