少女の大罪 (1)
これは懺悔ではない。
許されるとは思っていないし、誰に許しを求めているのではないので批判をするのは勝手だが私が本当に伝えたいと思っていることにフォーカスをするのも忘れないで欲しい。
これは私が犯して今も償おうとしている罪で1人でも同じことをしないために書く。
私は優等生だった。学校もちゃんと行っていたし、成績も平均以上、友達も少なくはなくて部活も生徒会も頑張っていた。家では弟と妹がいて年が離れていることもありよく遊んだり勉強を教えたりしていた。両親にもよくしてもらい、受験勉強を頑張って大学生になって東京の学生寮で一人暮らしをはじめた。
大学に入って初めてちゃんとした彼氏ができた。
今までは付き合ってもキスまで、高校で付き合った2人は1ヶ月ぐらいしかもたなくて「そういう」ことにあまり免疫がなかった。
私はほとんど無知だったと言えると思う。
確かに小・中・高と性教育というものは受けていたけれど、実質よく分かっていなかった。「子どもを作る行為」がどういうメカニズムなのか、ということは知っていたが実際どういう行為なのかは知らなかった。学校でちゃんとそこにダイレクトに触れられなかったことも原因だし、みんながそれは淫らなことでとにかくそれについて知っているとキモいしそんなことを考えてるのがキモいと言っていたから私もそう思っていた。
「その行為」をすると病気が移ったりするかもしれないから「アレ」を使わなきゃいけない、と知識としては知っていたけれど「アレ」がどこに売ってるかも知らなかったし、どんなものかもよく分かっていなかった。そして子どもなんだから「その行為」はしちゃいけないと誰に直接言われたわけではないが教材のビデオから、先生から、親から、社会から言われている気がした。
そして女の子だから、そんなことについて詳しく知ってちゃよくないとずっと信じていた。そういうことは男子は好きだけど、女の子はあまり知っていちゃいけない。
彼と私は数ヶ月お付き合いをして、手を繋いで遊びに行ったり、一緒に講義に出たり、部屋で映画を見ながらキスをしたりした。彼と触れ合っているのは今まで感じたことない感覚で驚きだった。
洋画が好きな私は恋人同士が熱烈なキスをするのを不思議に思って、中学生ぐらいの頃に鏡の自分にキスをしてみたが当然ドキドキも何の面白みもなかった。しかし、彼と触れ合うのはそれとは全く違っていた。別にキスだけでなく彼の手や色々な部分がどうしても惹かれて触れたくなるような引力を持っていた。
ある日、私たちは彼の部屋にいて一緒に作ったご飯を食べながら和やかに話して初めてキス以上のことをした。何度かお互いの家に泊まったことはあったけれど、抱き合ったりする程度でそれ以上のことはしていなかった。
私は初めてで、彼は私の前に一度だけ前の彼女としたことがあると言っていた。
私たちは18歳で愛し合っていたし、とても信じ合っていたし、無知だった。
初めての時は私もよくわからなかったが(私よりも)経験値の高い彼がリードしてくれた。私がアレはあるの?と聞いた時も彼は一応買っといたとイタズラそうに笑って彼が用意してくれたものを使って行為に及んだ。とても幸せだったし、楽しかった。愛をいっぱいに感じた。
何度かそういった触れ合いを重ね、慣れてはいったけれど知識は未だにあまりなかった。私は彼の物で初めて男性の性器を見て、彼が持ってきてくれたもので初めて避妊具を見た。でも体に合わなかったのか気分が悪くなったり痒くなることもあって、大したことはないけれどちょっとした、しかし誰にも言えない悩みがあった。
別の日にまた彼と一緒に遊びに行って翌日も休みだったし2人で私の部屋に帰った。
その時私は少し痒みのことだとか痛みの話を彼にしてみた。彼はちょっと考えて、アレを着けないでしてみる?材質が合わないのかもしれないね。と言った。私は、うーん、でもそれって危なくない?と答えた。彼は、最後に抜いたら危なくないよ。と言った。
別に彼のせいにするわけでも何でもなく、彼は悪い男だと勝手に思って欲しくはない。
彼が私を愛してくれているのは私が一番知っている。
問題は2人とも無知だったことだ。
私は自分の今まで学んだことを考えてみても、最後に抜いたら危なくないのか、まあ確かにそうだな。そんなものなのか。と思った。彼は経験も浅く病気の心配もなかったので、私たちはその日初めてアレをしないで触れ合って、彼は約束を守った。
私はちょっと心配はしていたが、彼に生理も近いからきっと大丈夫だよと言ってくれそれについて少し調べたりなどもしたが、知らなかったけどそんなもんなのか。と納得した。
その次の時には彼は新しい避妊具を選んできてくれてそれを試したら不具合がなかったのでそれからは必ず着けてするようにした。
それからも私たちはとても仲がよく、ご飯を食べたり勉強したりたまに遊びに行ったりしつつ、お互いそれ以外にも勉強にバイトにサークル活動に充実した日々を送った。
私は高校の時には全国大会に行くような部活に在籍していて、充実してはいたが活動や人間関係の問題でストレスが溜まる日々を過ごしていたので食事や睡眠、生理の周期などのパターンが崩れるのには慣れてしまっていた。特に大学に入り課題やサークル、バイトなどで遅くまで起きたりご飯を抜いたりしていて気がついたら生理が2、3ヶ月きていなかった。
高校の時には8ヶ月ほど生理が止まっていたときがあり、その時も私はまたか〜ぐらいにしか思っていなかった。彼は体調のことも含め心配してくれていて、来月来なかったら病院に行ってみなよと言ってくれたが私は正直どこに行ったらいいか分からなかったし、前にもこういうことがあったし、なんか怖いから嫌だな。と言った。
次の月も生理は来なかった。彼は万が一もあるから、と病院に行かないならこれを使ってみてと言って検査薬を渡してくれた。私は初めて見るものにびっくりし、気持ち悪いと感じた。そしてそれから、もしかして...と思うようになったが、映画やドラマでよく見るようなつわりはないし、「妊娠 可能性」と検索して出てきたチェックリストを見てもあまりピンとこなかった。それかそんなはずはないと自分で思い込んでいただけなのかもしれない。
私はだんだん怖くなってきて、検査薬を貰っても数日は使うことができなかった。
もしかしたら...いやそんなはずはない、大丈夫。でも万が一そうだったら...イヤイヤ、無理だ育てられない。親になんて絶対に言えない。でも私が、あんなことをするような非道な人間にはなれない。どうかそうではありませんように。と常に考えていた。
彼からの説得もあり、私は学校から帰ってきてから検査薬を使った。
トイレですごく恥ずかしく惨めで一人ぼっちな気がした。自分は淫らなことをしたんだ、ダメな人間だ。と思った。何度も使い方を読んだ。結果は陰性だった。
やっぱりね、そうだよね、よかったーと安心した。彼にも連絡すると、そうだよね、よかった。と言ってくれ一緒にご飯を食べに行った。
私は心の負担から解放されて安心した。リラックスしたから下手に心配していたときよりも来やすくなるだろうなと思った。
しかしそれからまた2ヶ月も生理は来なかった。
その間、私の不安は日に日に積もっていき、1秒ごとに増すようになった。
その頃から彼の触れ合う経験も重ねて、「そういうこと」についての抵抗が少なくなってきて自分でも少しずつ調べるようになった。私は毎日のように「妊娠 可能性」を調べて、彼も私の不安が伝わったのかもう一度調べてみたら?と提案してくれた。
私はまた安心したくて、そうだね。と言って今回は自分で薬局に行って検査薬を購入し検査した。そのとき初めて薬局に避妊器具や検査薬が売っているのを知って目にした。
結果は陽性だった。