「うつ」のしくじり_02
~中年、泣きながら帰る~
◉症状を「話して伝える」のは誤り?
心療内科のクリニックでは、初診の前に問診票に諸々記入することになっていました。
基本情報とともに、症状を記入する項目や治療方針を希望する欄もありました。
こういうことは診察時に言えばいいことでは? と疑問に思ってしまったので、テキトーに書いて済ませ診察に臨みました。
医師からどうしたかを聞かれましたので、起きていることを答えました。
眠れない、早朝目が覚めてしまう
起き上がれない
食欲がない
気分が上がらない
何もする気が起きない 等々
医師は、ヤレ紙みたいなものに時々メモしてましたが、言ったことの1/3も書いてないなあ、という感じです。
医師「薬はコレとソレを出します」
――これは、どういう薬でし…
医「薬剤師に聞いてください」
――…あ、はい
医「カウンセリングも受けてください」
――えっとお金…
医「8000円です」
――え?
医「はい。ではまた6日後来てください」
こういうやり取りで初診は終了しました。後から聞いた話ですが、1回の診察時間は10分と決めているそうです。
病気の説明とか、療養生活の過ごし方なんかの話があると思っていましたが、極めて事務的な会話というスタイルでした。
病状が良くない上にこんな扱いなもんですから、この後は混乱して往来を泣きながら帰ったのを覚えています。
すれ違う大人も子供も、いい歳の中年が道で泣いて歩いているのですから、相当気持ち悪かったと思います。
ただ問題だったのは、診察前に自身に起きている症状なりをリスト的なものにしておくべきだったとは思います。
何が起きているか、正確に伝える重要性を軽く考え、その後の影響を理解できていなかったのです。
当時のブログなり掲示板などの精神疾患のコミュニティサイトでは、
《うまく話が伝わらないことはままあるので、文字化して医師に渡しておくのが確実》
というコメントが少なからずあったのに、このミスです。
◉処方された薬は…
テキトーにあしらわれた格好ですが、診察料は2210円で、次回は6日後とのことでした。
その足で、処方箋を持って調剤薬局へ行って薬を買いました。処方された薬はこの2種です。
抗うつ剤……パキシル(のジェネリック)10mgの6錠。うつにはコレというほどメジャーな薬です。1日に10mgから40mgまで増やしていくようです。
抗不安薬……ワイパックス0.5。1日1mgから3mgとありますが、症状が強いときの頓服ということで、0.5mg×6錠でした。
これらは多くのうつの人に出されるようです。
処方薬から見ても、よくある「うつ状態」にあったことがわかります。
薬代は540円です。
容量からいっていかにもスターターセットそのものですので、飲み始めでは効果を感じることはありませんでした。
”頓服”とだけ言われて出された抗不安薬も、毎朝飲むことにしました。
良くないときに飲むといっても、毎日良くないのですから飲むしかないです。
精神疾患の薬は他の病気と違って、少ない量から始めて徐々に増やすようなので、やはり症状maxの最悪の状態で受診するのではなく、多少余力のある段階で診るもの、ということなのでしょう。
困ったのは、カウンセリングのことです。
毎週8000円も払っていては、お昼代もなくなってしまいます。
家庭の事情があるので医療費も何もかも、自分で才覚せねばならないからです。
それにカウンセリングで得られる具体的なものは何だろうかと考えると、費用対効果が謎過ぎたのです。
意欲的になる言霊でもかけてくれる?無気力の取り憑きを除霊してくれる?そう思うと馬鹿馬鹿しくなり、止めてしまいました。
ただこのことは、十年経ってから考えが足りなさすぎるミスと気づきました。
診察前に、恐怖に怯えていた《ニセうつなのでは》という不安は、思い違いのようでした。
実際会社では、診察前のうちの5日間は、精神の平衡を保つつもりで、Wikipediaにある「史記」の各篇を眺めているだけの奇行を続けていました。
それ以外の日も始業からすぐにネットカフェに行って、ひたすらソフトクリームを食べて、終業時間近くに戻ったりです。
脳の異常かただのサボりなのかわからなかったですが、正常な人間のすることではないのは確かでしょう。
次回は、2回目以降の診察と病状をお話しします。
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