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恐怖体験

親と別れて暮らすようになってはや2ヶ月。
規則正しい生活は影もなく、家を出る10分前にも関わらずソファで横になっているなどそれまでの歪みを解放するかのような自堕落生活。

そんな自分の平穏を打ち破るように突然玄関の鍵が鳴る。
親が戻って来たのか?今?こんな急に?
完全に油断していた。
親が帰ってくると知っていればもっと早く家を出ていたのに。
そう思いながら布団を撥ね上げ、鞄を掴んで脇に隠れる。
両親とも基本的には自分の部屋から出てこない人達。
部屋に入るまでの時間さえ稼げば入れ違いで逃げられる…はずだった。
部屋に入った瞬間動けるように様子を見ながらその時を待つ。
ドアが開く。そして自分は錯乱状態に陥る。

帰ってきた母親は白いガウンに包まれた赤ちゃんを抱いていた。
その赤ちゃんは一体なんなのか。
「妊娠期間が短すぎる」「相手がいない」そんなことを考える前に頭がそいつの存在を拒絶する。血染めのガウンだったとかではない。奇形でも、醜くもなかった。
そもそも自分は顔を見てない。本能が“それ”に警鐘を鳴らす。

状況が頭に入って来ない。理解する前に戻ってくる。
いつも通りの光景と、有るべきでない“それ”の共演は異質すぎた。
包丁を向けられた時や知らない土地に置いて行かれた時とは全てが違う、あまりにも未知で、あまりにも異質。対象よりもその感覚自体から逃げたくなる、そんな絶対的な恐怖を覚える。

なるほど、母親は出産で弱ってる姿を見られたくなかったから家を出ていったのか。猫みたいだな〜
そういえば猫の妊娠期間って2ヶ月だったか?
猫が出ていくのは死ぬ時で出産の話は聞いたことがないから違うかも。
いや、それ以前に自分の母親は人間だから何一つ関係ないな。

そんな現実逃避じみたことを考えていられるのも一瞬だけ。
どれだけ空想の世界に逃げてみたところで目の前の現実は変わらないし、頭の奥を直接刺激するような恐怖からも逃げられない。
視線は合わないのに母親がこっちを見ているのを感じる。
頼むからそのまま部屋に入ってくれと念じても一向に動かない。

両者ともに動かない無言の空間で、白いガウンがやけに目立つ。

3秒くらい続いただろうか。
ついに堪え切れなくなった自分は、母親から隠れているという状況も忘れてその空間から逃げ出そうとした。
そして絶叫と共に走り出した…つもりが絶叫と共に起き上がっていた。

……起き上がる?さっきまでずっと立ってたのに?
混乱しながら周りを見渡すとそこは見慣れたリビングだった。
さっきまでいた納戸の陰ではない。
混乱しながらも各部屋の様子を確認するも異変はなく、締められた内鍵の存在が侵入者の存在を否定している。
夢オチかよクソって思いながら2度寝しようと時計を見ると7時40分。家を出るのが7時30分だから完全にやらかした。クソは自分ですね。


怖い怖い。怖がってる余裕ないけど怖いものは怖い。
そう言えば夢では自分の求めてるものを見るって聞いたことがある。
え? 18歳が? 赤ちゃんを欲しがってる? ……怖いわw

そんな現実は認めない!
ということで「知らない人の夢」で調べてみた。

夢に出てくる知らない人は予期せぬトラブルの象徴。
寝ている時に入ってきた相手に強い恐怖心を抱いた場合は新たない出会いが良くないものである可能性を意味する。
う〜ん、不吉。これから大学生になろうかという人が見る夢じゃない。


夢オチネタにしたかったけど20行目でわかっちゃうんよな。
夢オチくだらんとか言ってるけど夢オチが書けるの凄いと思うわ。
                  
by 5日ぶりにnoteに帰ってきた受験生