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特別研究員コラム⑪:ジャーナリング~自分を深く知るために~

 こんにちは、特別研究員の黒木です。7月に入り、暑い日が続くようになりましたね。梅雨も明けず、ジメジメとして気分の晴れない日が多くなり、メンタルヘルスが心配な季節です。皆さんは、自分の気分/感情の動きが何に影響を受けていて、自分の行動と、どう結びついているのか、考えることはありますか?私は自分の気分の波に気が付かず、衝動的に行動してしまい、後から反省するタイプです。意外と自分では気付きづらい気分の波、どんなことに影響を受けているか、興味深いですよね。そこで今回は、自分を深く知るために、書く瞑想とも言われるジャーナリングについて書いてみたいと思います。

ジャーナリングとは                    ①紙に書き出してみるだけの、お手軽メンタルケア

 ジャーナリングとは、「書く瞑想」とも呼ばれ、頭に浮かんでいることを一定の時間内でただ紙に書いていくというものです。もやもやと頭の中がすっきりしないときに、頭の中に浮かんでいる感情や経験などを文章にすることで、「自分が無意識に感じていること」や「見過ごしていたけれど、実は悩んでいたこと」などが分かりやすくなり、自己理解を深めることができると考えられています。また、ストレスや怒りなどのネガティブな内容を紙に書き出すことで医療機関への受診回数低減に効果があることが明らかになっています。

The first expressive writing experiment was run in the Fall of 1983 with the help of Sandy Beall, a new graduate student. In retrospect, the study was horribly underpowered. Nevertheless, we discovered that students randomly assigned to write about traumas for 4 days, 15 minutes a day, ended up going to the student health center over the next 6 months at about half the rate of students in the control condition (Pennebaker & Beall, 1986). When the paper was published, it received a great deal of interest from people in clinical and social psychology. Two years later, a replication was conducted with Jan Kiecolt-Glaser and Ron Glaser (Pennebaker, Kiecolt-Glaser, & Glaser, 1988) finding both reductions in health center visits and immune changes that were theoretically consistent with better health.

Expressive Writing in Psychological Science ; James W. Pennebaker,2018  

ジャーナリングとは                    ②自分を客観的に見つめ、内省を深めることができる自己との対話ツール

 ストレスが溜まっていたり、強い感情に支配されている状態だと、なかなか自分のことを客観視することができなくなってしまいますよね。そんな状態が続くと、疲れが取れずに余計ストレスが溜まってしまいます。こんな時、ジャーナリングをすることにより、自分の状況を客観的に見ることができるようになります。自分がなぜストレスを感じているのか、何故強く怒っているのか、何に悩んでしまっているのか、頭の中にあることを、紙に書き出していくうちに、少しずつ感情が整理され、強い感情が湧いた背景に何があったのか、自分自身で捉えることができるようなります。
 ストレスに感じていることや愚痴などを口に出して発散する機会はなかなかありませんが、ジャーナリングは紙に書くだけでいいので誰に気兼ねすることなく手軽にできますよね。溜め込んでいた感情を継続的に書き出すことでストレスが軽減されていくだけでなく、自分自身を客観的に理解する力が高まっていきます。ジャーナリングは、思う存分、自分の内面と向き合うことが目的であるため、今の自分の気持ちや事実をありのまま書いていきます。恥ずかしい感情や自分を情けなく思う感情などは気にせずに、そのまま書き続けてみることで、本当の自分の気持ちに気付くことができるようになります。湧いてきた自分の感情を受け止めることで、自分がどんなときに感情に支配されやすくなるのか、冷静に気が付く余裕が生まれます。

『彼を知り己を知れば百重殆からず』

 孫子の言葉に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」というものがあります。相手をよく理解するだけでなく、自分を客観的によく知っていれば、戦いに勝つことができるというものです。沢山の情報が世の中に溢れている現代、”知っている、分かっている”という感覚を持ちやすいように感じる一方で、本当に”知ることができているのか”、より深く考えるための時間を持つことが減っているようにも感じます。SNSを眺め、外側ばかりに目が向いてしまい、一体自分は何者なのか?何が好きで、何が嫌いで、何をしている時がハッピーで、何があると落ち込むのか、自分が日々どう過ごしたいのか、何のために働くのか、どんな人間でありたいのか、自分の内側を知る機会が少なくなっているのではないでしょうか。自分を知らないから、相手も理解できない。目の前のことに振り回されて、必ずあるはずの相手との重なり合いを見失ってしまう。。。

VC面談とジャーナリング

 VCラボが提供しているVC面談では、管理職の皆さんとの対話を通して、管理職の皆さんが「自分」を見つめ、省察を深めるサポートを提供しています。面談の場面で自分について話してみようとすると、意外と納得のいく表現が思いつかない、ということがあります。面談前や、面談後にジャーナリングをすることで、自分の気持ちを表現するのにぴったりフィットする言葉を見つけることができるかもしれません。自分を表す言葉を少しずつ見つけ、VC面談で話してみることで、自分がどんなことに影響を受けていたのか、どうなりたいのか、今までもやもやとしていた霧が少しずつ晴れていく感覚をもつことができるかもしれません。
 忙しく、目の前の出来事に自分の感情を支配されてしまう今日この頃、自分と深く向き合い、己を知り、明日の自分がよりよく居られるように、自分がどうありたいのか、眠る前のほんのひととき、ジャーナリングの時間を作ってみたいと思う、今日この頃です。


寝る前に、何かしようとすると、寝てしまう。。。

特別研究員プロフィール
黒木 貴美子  (クロキ キミコ) 
ビジョン・クラフティング研究所 特別研究員
精神保健福祉士