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そんな化学って、いったいなんだ?

昨日、睡眠の乱れを書いたら、心配してコメントをくださった方が何名も。
もう、なんて温かい場所なんだろう、このnoteってとこは。
本当に感謝してもしきれないくらい。

いただいたアドバイスをもろもろ試し、昨晩は6時間眠ることができた。
ただやっぱり一度、1時にガバッと起きて着替えようとしてしまったが。

***

ある農家の話を聞く機会があった。
完全有機農法を実践している農家だ。

近隣は同じ作物を作っている農家が多く、その作物がご当地の名産品になっているということだった。
しかし、他の農家はすべて従来どおりの化成肥料と農薬を使った農法。
他の農家に自分の農法を伝え、普及しようとしたこともあったらしいが、まったく聞き入れてもらえないか、鼻で笑われてしまったそうだ。
そんなことができるはずがない、と。

実はどちらの言い分も正しい。

一般の農家は農協の傘下にあり、勧められた化成肥料や農薬を使う。
農協では化成肥料や農薬を「生産資材」と呼び、これが重要な収益源となっている。
窒素、リン酸、カリをほどよくブレンドした肥料を土に入れ、農薬をまく。
化学の力はてきめんで、抜群の収穫があがってくる。
いろんな効率を考えたとき、そんな選択肢があることは否定できない。
しかし、土の力は失われていく。
土に棲む微生物が化学の力に耐えきれず、死滅していくためだ。
あとは想像通り、化学を補い続けなければ作物が育たない土になっていく。
だから、一般農家が有機農家の言を聞き入れられなかったのは「正しい」。

一方、その有機農家も過去には化学の力を借りていたが、そんな農業に疑問を持ち、本来の農業を取り戻すべく脱化学を実践したという。
畑に化学を投入しなくなると、最初は微生物がいないために作物が育たず、何年にもわたる土壌改良の苦労があったようだ。
その結果、化成肥料以上に作物の育つ土になったという。

作物を育てるためには土を育てなければいけません。土を育てるというのは微生物の居心地がいい土にするってことです。作物ではなく微生物のご機嫌を取るのが農業なんです。
ウソの上塗りってありますよね。一度ウソをつくと、そのウソをごまかすために次のウソをつかなくてはならない。僕は土にウソがつけないんです。

と話す姿が印象的だった。
だから有機農法が可能というのも「正しい」。

どちらも言っていることは正しいのだ。
そして作物はどちらでも育っている。
あとはどちらを食べたいか、消費者が決めるしかない。

***

朝、洗顔をしながらその有機農家の話を思い出した。

石鹸や洗顔料で顔を洗うとさっぱりして気持ちよい。
しかしそれは本来必要だから分泌された皮脂を奪う作業にほかならない。
そしてご丁寧に代替の化学品を塗り込んで、潤ったと満足する。
身体は対抗しようとさらに皮脂を分泌してギラギラテカテカとなり、ますます化学的な脱脂が手放せなくなる――

そんな化学って、いったいなんだ?

(2021/4/8記)

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へんいち
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