通勤で毎日同じ人とペアシートに座るって、ふつうはない
島の勤務になってから、毎日高速バスで通勤している。
この島、架橋前は神戸や明石の各港から多くの航路で結ばれていたが、長大な橋が架かってからというもの、わずかに旅客船が明石から出るのみ。
その代わり、神戸から島への高速バスは1時間に何本も走っていて、そのどれもがなかなか混雑している。
大阪からのバスはガラガラだから、神戸がこの島の玄関口として認知されているといってよい。
昔、神戸から新幹線を分岐させ、島を通って四国へと通じる四国新幹線の計画があったくらいだから、神戸はやっぱりこの島の玄関口なのだ。
公立高校の学区も神戸市・芦屋市・島で一つの学区。
僕が乗るバスは早朝に島を出て神戸に着いての折り返し便だが、島から神戸の高校に通う生徒が降り、続いて神戸から島の高校に通う生徒が乗る。
神戸と島の密接な繋がりを感じる朝のひとコマだ。
このバス、高速道路を走るから立ったままの乗車はできない。
僕が乗る時点ではガラガラの状態だが、途中から、え?まだ乗る?というくらい続々と乗車。
小学校の遠足以来ご無沙汰だった補助席まで総動員して満席になる。
実は、その途中の停留所で毎朝楽しみにしていることがある。
僕の隣の空席にどんな人が乗ってくるか、毎日ワクワクしているのだ。
そこから僕の降りる停留所までわずか5分、4kmの橋を渡る間だけだから、きれいなお姉さんだろうが汗まみれのおっさんだろうが、別に大して変わりはないのだけど。
それでも今日はどんな人が座るのだろうと楽しみにしている。
ところがだ。
そこを選んで座るおっちゃんがいるのだ。
その人はいつも列の前の方で乗り込んでくるので、他にもまだいっぱい空席があるのだが、決まって僕の隣に。
他の人が僕の隣に座るのは、ごく稀にその人が列の後ろの方で乗り込んできた時だけだ。
これには正直ガッカリする。
別にその人は紳士だし、まったくもってその人には何の問題もない。
ただただ僕のワクワクが満たされないだけの話。
わずか5分だが、その5分の過ごし方は人それぞれ。
深い気遣いの人、深い眠りに落ちる人、不快な人…
窓側に座っている僕は、降りる時にその隣人に声をかけることになるが、またそこでの反応もさまざまだ。
そんなさまざまな分岐が次の分岐を生むからおもしろいのに。
通勤で毎日同じ人とペアシートに座るって、ふつうはない。
(2021/12/5記)