それだけ文化は複雑、ということだ
3日前、たぬき・きつねの調査を呼びかけた。
「あげの載ったそば」とか「天かすの載ったうどん」とか。
地域によって名前が違うので、皆さんどう呼んでますか? の調査。
唐突な調査にもかかわらず、かつ、回答したからといって何の得にもならないのに、25件もの回答をいただき、感激している。
ではさっそく結果を見ていこう。
🔶あげ
🔹① そば+あげ(あげの載ったそば)
圧倒的多数は「きつねそば」「きつね」で全国的に分布。
次いで多かったのは「たぬきそば」。
🔹② うどん+あげ(あげの載ったうどん)
こちらはそばと違って「きつねうどん」「きつね」ほぼ一色。
あげの載ったうどんは「きつね」で確定だ。
🔶天かす
🔹③ そば+天かす(天かすの載ったそば)
多いのは「たぬきそば」「たぬき」で全国に分布。
次いで多いのは「ハイカラそば」だが、関西だけ。
🔹④ うどん+天かす(天かすの載ったうどん)
こちらも多いのは「たぬきうどん」「たぬき」、次いで多いのは「ハイカラうどん」で、分布も含め上の結果と似たものになった。
これらを大雑把に分類すると、こうなるだろうか。
🔶大雑把なまとめ
🔹全国的に主流の呼び方
麺の種類によらず、あげ→「きつね」、天かす→「たぬき」。
分かりやすい。
🔹兵庫、大阪
あげが入っていても、そばなら「たぬき」となるのが特徴的。
そしてなんといっても、天かす→「ハイカラ」だ。
なぜ天かすを「ハイカラ」と呼ぶかについては諸説あってはっきりしない。
一説によると、東京の人が天かすを載せているのを見て「いやん、ハイカラやわ」と言ったとか言わなかったとか。
🔹京都
あげ→「きつね」と呼ぶのは全国主流と同じだが、天かす→「ハイカラ」はお隣の兵庫、大阪と同じ。
全国主流と関西の折衷版といえるだろうか。
ちなみに京都で「たぬき」といえば餡かけのことを指すらしい。
*
東京で、兵庫人・大阪人が「そば+あげ」を食べたくて、あるいは京都人が「餡かけ」が食べたくて「たぬき!」と注文したら、「そば+天かす」が出てきてたまげる
大阪で、東京人が「うどん+天かす」が食べたくて「たぬきうどん!」と注文したら、「何それ、そんなんないで」と言われてたまげる
というのはこうした食文化の差異からきている。
🔶やっぱりコメントがおもしろい
一部のコメントを抜粋して紹介しよう。
僕もそうなると思っていたが、結果は関西だけが特殊だった。
🔹全国主流(あげ→きつね、天かす→たぬき)系
至極もっともだ。
これだけ全国広範囲な呼び方だと、これが標準、と十分言える。
🔹天かすハイカラ系
そう、兵庫・大阪には「きつねそば」「たぬきうどん」はない。
このため、「きつね」だけで「うどん+あげ」、「たぬき」だけで「そば+あげ」のことと通じる。
🔹はんなり京都系
京都は少々複雑。
やはり、「たぬき」は餡かけを指すようだ。
今回の調査では票が少なく、京都の天かすは「ハイカラ」となったが、票が多くなればまた違った結果になったかもしれない。
🔹天ぷらメイン・天かす無料系
セルフうどん店の台頭で、天かす無料があたりまえになってきている。
チェーンのセルフうどんもさることながら、セルフうどんの元祖といえる讃岐(香川)に近い地域は、大昔から天かす無料だったと思われる。
天ぷらって海老天とかだろうか。
天かすより天ぷらメインとは豪勢で、いいなぁ。
*
天かす無料系のコメントには、店が天かすを載せたものを商品にするなんて…という疑問が渦巻いていそうなので、いちおう証拠を。
大阪のうどん屋からスタートした丼チェーンの〈なか卯〉には、「はいからうどん」「はいからそば」がある。
*
以上でたぬき・きつね調査を終えよう。
なかなかに回答がバリエーション豊かで、集計に少々手こずった。
それだけ文化は複雑、ということだろう。
ご協力、まことにありがとうございました。
(2023/1/25記)