誰がこんな日ににゅうめんにしたん
昨日の昼は〈にゅうめん〉にした。
夏にキーンと冷やした素麺も、もうムリと動けなくなるまで箸が止まらないが、真冬にフーフーいってすするにゅうめんもまた格別だ。
にゅうめんって、漢字で書けば「煮麺」。
でも、字面の印象が堅いし、うっかり「にめん」と読んでしまいそう。
かといって「$${\large{\sf{New\space Men\hearts}}}$$」だと各方面いろいろ誤解を受けそうだし。
やっぱり「にゅうめん」と書きたいな。
にゅるんとしたやわらかな語感がどことなく似合っているように思うから。
幸い冷蔵庫にカボチャはあったが、ナスはなかった。
この二つは、にゅうめんになくてはならない具材だ。
でも昨日から続く雨が、買い物に行く気持ちを消し止める。
よく考えたら、カボチャもナスも夏野菜。
なぜ冬に食べることの多いにゅうめんに入れるのだろう。
カボチャを入れる麺といえば、山梨の〈ほうとう〉も。
味噌仕立てなのもいっしょだ。
にゅうめんとほうとう、何かつながりがあるのかな。
聞いた話では、関東ではあまりにゅうめんを食べないらしい。
そもそも三大素麺が兵庫・奈良・香川と西日本に偏っていることからして、にゅうめんのみならず素麺自体、西が多いのかもしれない。
これも聞いた話で申し訳ないが、東ではにゅうめんを食べたとしても醤油仕立てが多く、味噌仕立てはあまりないのだとか。
*
雨はまだ降り止まない。
にゅうめんに欠かせないナスだが、昨日は欠かすことにした。
カボチャのほか根菜、キノコ、豚、お揚げさんを軽く煮て、さっと湯がいた麺を入れ、味噌をとけばできあがり。
温まりたいなと思い立ち、その10分ほど後にはもうフーフーできるにゅうめんは、真冬の救世主。
子供の頃、母がよく作ってくれた。
夏の素麺が好きすぎる僕は、温めるとはなにごとかと実はその頃にゅうめんがあまり好きではなかったが、今となっては素朴で懐かしい。
ダシと味噌のきいた汁に、カボチャやニンジンの甘み。
汁をみるみる吸って成長し、食べても食べても減らない魔法の麺。
この冬、早いうちから足指にしもやけができた。
血のめぐりがどうにもよくないらしい。
そんな極寒の冬はもちろんにゅうめんに限る。
かじかんだ手足もこれでやっと…いや、なんだかやけに暑い。
ん? シャツの下はじっとりと汗ばんでいる。
誰がこんな日ににゅうめんにしたん。
(2023/1/15記)