「ずっと探してくれたの？　8年も？」

ずっと探していたブカティーニを入手した。

ブカティーニとは、中心に穴が開いているやや太いロングパスタで、ペルチャテッリとも呼ばれる。
ロングパスタのしなやかな食感と、穴開きパスタのソースの絡みのよさという両方の特徴を兼ね備えていて、味の濃いソースとの相性が抜群。

今回手に入ったブカティーニはディチェコのだ。

初めて買ったのは東京に住んでいたうら若き頃。
とあるレシピを見て試しに作り、かなりおいしくてヘビーリピート。
使い切ってしまっても、東京なら比較的容易に手に入った。

その後、愛媛の山奥に引っ越して、なかなかの入手困難に。
山には当然ないから、神戸出張にあわせ元町の明治屋で購入していた。
2013年、そこが閉店となってからはまったく買えなくなった。

それから8年が経ち――
またそのパスタメニューが食べたくなり、そして作りたくなった。

神戸の百貨店、小売店、輸入食品店を探し回るが置いていない。
ならばと京都三条の明治屋にまで足を伸ばしたが、ここにもない。
諦めかけた一昨日、三宮を歩いていて、あそこに輸入食品店あるけど、こんな小さなところにはないなと通り過ぎようとした店頭に…

あった。

「やっと見つけた」
「ずっと探してくれたの？　8年も？」
「うん。神戸も京都も探してダメだったし、もう会えないと思っていたよ」
「どうしてここが分かったの？」
「前を通りかかったとき、君はここにはいないと頭で思ったのに、どういうわけか足が勝手に進んだんだ」
「そんなことってある？」
「僕にも分からない。でも頭と体の不一致ってたまに起こることがある。不一致を起こすだけの何かがあるんだろうね」
「嬉しいわ。ずっと探してくれていたこと、そして頭に体が勝ったこと」
「僕も嬉しいよ。やっと君を食べられるんだから」

話がホラーになってきたので、ここらあたりで。
さてどんな料理になるのかは、また後日のお楽しみ。

（2021/9/30記）