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どうやらやっぱりピンチはチャンス

ガコン!

日中、仕事をしていたらベランダで大きな音がした。

フリーランスとなって以降、僕は常に在宅ワークだ。
その日ももちろん自宅でPCに向かっていた。

朝から風が強かったこともあり、ベランダに置いてある掃除用具入れが倒れたのだろうと高をくくった。
すぐ起こしたところでどうせまたすぐ倒れるだろうからと、見に行くこともしなかった。

しばらくして風がやや収まってきたので、そろそろ直しておこうかとベランダに出てみてビビった。
見慣れぬピンチハンガーが転がっていたのだ。

こういうやつ👆

50個ほどものピンチ(洗濯ばさみ)がぶらさがった大型ピンチハンガーだ。
そういえば最近あまりピンチという言葉を聞かなくなってきたな。

うちはマンションだから隣の家とベランダが繋がっている。
飛んできたとしたら隣からしかあり得ない造りだ。
とはいえいくら強風といえど、こんな大きなものがどうやって。

もちろんピンチハンガーだけではなく、タオルやら靴下、下着類も…
男の僕は少し顔を赤らめる。

これ、いったいどうしたものか。
こっそり隣のベランダに戻せればいいが、構造上、かなり身を乗り出して手を伸ばさなければ隣の物干し竿には届かない。
たまたま向かいのマンションから目撃されたら確実に下着ドロボーとして通報されるだろう。
さすがにそんな面倒なことにはしたくない。

日中、隣がだいたい留守にしていることは知っていたが、すぐ洗濯物を回収してピンポンを押す。
でもやはり不在。

しょうがないからしばらく預かり、まだ生乾きだったから家の中で干す。
うちは柔軟剤を使わないので、他人の洗濯物が家にぶら下がるだけでその香りが家中に充満し、どうにもそわそわする。

夕方まで待ってもう一度ピンポンを押すがやはり不在。
さすがにもう十分に乾いていたので、洗濯物をぶら下げたままピンチハンガーを真ん中から畳み、大きな袋に入れて隣の玄関の扉にぶら下げておいた。

実は数週間前にもTシャツが1枚だけ飛んできたことがあり、その時も「飛んできました」とのメモをつけて返したことがあった。
今回もまた「うちは別に構わないですが、1階に落ちないよう対策されたほうがいいですよ」とメモをつけて。

夜、隣の奥さんが申し訳なさそうにやってきた。
手にはなにやら紙袋を提げて。
ご迷惑をおかけしたのでこれを、とその紙袋には立派な柿が。
銘柄入りの紙で1つずつくるまれたブランド物の柿だ…(柿大好き)
——いえいえ、こんなことしていただかなくても…(柿大好き)
実はこれ、実家で作ってるものなんです…(え、柿大好き)
——そ、そうなんですか? じゃ、じゃあ遠慮なく…(わーい、柿大好き)

こんないただきものができるなら、いくらでも洗濯物やってこい!
どうやらやっぱりピンチはチャンス、のようである。

(2023/12/11記)

チップなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!