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足取り軽く、いや軽くもつれながら

大阪出張を利用して、かつての同級生と再会した。

同級生ということは…大学? 高校? 中学? それとも小学?
いやいや、もっと新しい。
キャリアコンサルタント養成講座の同級生だ。
わずか2年前の話。

駅の改札で待ち合わせ。
養成講座は完全リモート授業だったから、リアルでは初めまして。
でも画面越しに80時間も見続けた顔だからすぐ分かると思っていた。
ところが、互いに改札にいるようなのに分からない。
え? どこ?

「あ、〇〇さん?」と講座で僕が使っていたニックネームを呼ぶ声がした。
僕の通った養成講座では、生徒のみならず講師、アシスタントさえもみなニックネームを使う決まりだったのだ。
僕は「へんいち」とはまた違う別のニックネームを使っていた。
ニックネームにもTPOに合わせた使い分けがあるのだ。

「わ、やっぱり〇〇さんですね? メガネかけてへんから分からんかった」
そういうことか。
講座中、僕は常に老眼鏡をかけていたのだ。
逆にその人は講座中はメガネがなかったのに、待ち合わせではメガネ姿。
互いに頭に刻み込んだ顔に会えず、改札でウロウロしていたのだ。

駅前の適当な居酒屋を選んで入る。
大阪市内の大ターミナルだが、再開発の波をかいくぐって生き残った昭和の飲み屋街はとにかくすべてが安い。
どれもうまいのに、何を選んでも100円台から300円台まで。
金銭感覚がおかしくなる。

「かんぱーい!」
講座から2年の時を経て、まさかいっしょに飲むなんて思ってもなかった。
あの日のこと、その日の思いに話の花が咲く。

講座の頃から僕の生き方に興味を持ってもらえていたようで、キャリコンの資格を取ってからのいろんな選択も含め、いっぱい質問してくれる。
結果、ほとんど僕の話で終わってしまったよ…
アカンアカン、次はたくさん聞かせてよ。

3時間の飲みの席なんてあっという間だ。
同じキャリコン仲間として互いの精進を誓い合い、お開き。

お別れして電車に乗り込み、スマホでも見ようかとカバンを探ったら、出てきたのは空っぽのメガネケース…
「うげぇー! メガネ忘れたー!」

かろうじて出発前だった電車をすんでのところで飛び降り、酔っておぼつかない足取りをしっかりしっかりと自ら鼓舞して居酒屋に向かう。
駅前の店にしておいてよかった。

店に着いてみると、まだ何も言ってないのに「あ、これ忘れはったでしょ」と店員のほうからメガネを差し出された。
どうやらメガネをかけていない僕の顔を覚えてくれていたようだ。

メガネに始まりメガネに終わった同級生との飲み会。
僕は足取り軽く、いや軽くもつれながらホテルに帰った。

(2024/9/13記)

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