点と面

 編成の大きいオケの弦楽器最後尾プルト(舞台袖に近い場所)で弾くときに訪れる、必要以上の緊張感や恐怖感、孤独感とどう対峙していくか。
 
 どうやら音符や音楽という「的」に対して「点」で合わせて演奏しようとするのは、特に編成が大きくなると難しいものらしい。
 舞台中央からの物理的距離、距離によって生じる時差、指揮者やセクショントップが見づらいなど、点で合わせるには演奏上不利な条件が重なることが多い。加えて自分の音だけがやたら大きく聞こえてしまって、結果恐怖と緊張、孤独感が募り、演奏するのがどんどん怖くなってしまう。
 舞台中央から距離が離れている状況で「点」で合わせるということは、両手を離した状態で針の穴に糸を通すようなものであるようだ。

 必要以上に縮こまらず、でも音楽に対する命中率は上げたい(もとい命中しないと色々困る)。

 点ではなく、「面」で演奏することを心掛けたら楽になった気がする。
 休符を含め自分が演奏する音符一つ一つを、針などピンポイントのものではなく、シールやマジックテープなど接着面が広いものと考えて、手の平で大雑把に貼っていく。接着面が広ければ、どこかは的に貼り付いてくれる。
 「自分の音がやたら大きく聞こえる」現象はあまり気にならなくなり、必要以上に細かいところで怖いと感じる時間は減り、音楽の流れを落ち着いて把握する確率が上がった気がする。音がズレたなどの苦情も特に来なかったので、恐らく迷惑にはなっていなかったのだろう。

 この音符の捉え方がフルオケだけでなく無伴奏や小編成のアンサンブルでも有用なのかは、これから実践実験の予定。
 最近バロックヴィオラ演奏時音の掠れが悩みの種なので、こちらも解決できれば嬉しいところ。

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