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松尾芭蕉とBL道の旅に出た話(番外編) 🌸男色花紀行<梅>

「梅」

芭蕉がゲイだったことから男色にまつわる花があることを知り、その意味を辿ってみるシリーズの2回目。今回は「梅」です。

芭蕉が、天才俳句少年に「梅舌」という俳号を贈った話から、
「梅」も男色の意味合いがあるんだろうと想像しました。

そして菅原道真に関する梅の話を前の記事では書きました。

今回、「男色の風景」を読んでいると、
やはり「梅」も男色との関係が非常に強い花であるというのが説明されており、やはり私の勘は間違ってなかった!!となりました。

花において、梅は春、一番に咲き始める花です。
そして菊は秋、花の時期の最後の方に咲く。

ということで、梅が兄貴分、菊が弟分、と考えるそうです。

古今和歌集に「なには(難波)づ(津)に~さくやこのはな」という歌がある。この花は梅の花。
そして難波が色子=男娼が多くいたエリア
そのことから梅~男娼~男色が関連付けられて考えるようにもなっている。
東男に京女、これに難波色子を加えた浮世絵などもある。

東京では湯島天神辺りも陰間茶屋が多くあった場所。
天神とは菅原道真のことなので、そこから梅に関連付けられる。

中国、唐の詩人蘇東坡が、美少年李節推を追って風水洞に行き、共に過ごす…という二人の関係の中でも梅の花が出てくる。
そういう故事に倣って、日本の歌人などは梅=男色のイメージを固定していったと思われる。

能の演目「粉河寺」
ここに出てくる寺の稚児梅夜叉。
旅の都人を内緒で寺に泊めて、一夜の契りを結ぶ。
内緒で泊めたのがバレて、罰を受けそうになった梅夜叉を都人が助け、二人で熊野詣に旅立つ、という話。
ここでも男色と梅が関連付けされてる。

ちなみに女性は桜、柳に例えられるらしい。

「男色山路露」の序文に
なる一雙眼を具てみれば~(雅な両目で見てみれば)

桜はボジャボジャしてもたれる風情。
梅はスンと立つ枝、蕾に浅い色も含んで、情の香りも混ざる。
とにかく梅(=男)を好む方が、粋なのだ!!と言っている。

ここで「真の雅」と書いているのは、空海の弟が真雅僧正といい、彼の名前も男色世界で超有名。なのでわざと入れている。

真雅に関連しては次の花、岩つつじで再登場するのですが、とりあえず今はスキップして、梅の絵画の話。

芭蕉や西鶴などの文学作品には男色の影響がこれほど溢れているのに、同じ芸術の絵画のではどうなんだろう?…と気になっていました。

それに対する答えも「男色の風景」では教えてくれています。

まずは本阿弥光悦が男色と関連付けられる。
「野郎と庭樹と大きうならぬ物ならばと、物ずきのよき光悦も申されしとなり」
(男の子と庭木は成長しないものだったらなぁ…と、あの光悦も言っていたよ=若い男の子が成長してトウが立たないでいてくれたらなぁ←男色を嗜んでいたことがわかる)

光悦の姉が尾形道柏に嫁ぐ。
道柏の息子が宗柏、孫が宗謙。二人は光悦の近くに住み、書も学んだ。
この辺りに男色の関係を匂わせる。

そして宗謙の息子が尾形光琳

尾形光琳が描いた「中村内蔵助像」
光琳の描いた唯一の肖像画。

それを美術史家の小林太市郎は、
内蔵助を愛撫するかのように描いており、光琳の愛人であることは疑う余地がない、と評していた。

愛していたのは確かだろうが、そこまでの関係とは言い切れない、という反対意見もある。

しかし、「男色の風景」の丹尾氏は補強する。
37歳の光琳が、貴族・五摂家である二条家、23歳の二条綱平の夜の御伽(一緒に過ごしたり、添い寝したりする相手)として、何度も召されている記録がある(二条綱平は光琳のパトロンの1人)。
最初は複数人の1人だったが、段々1人で行くように…。

内蔵助も京の銀座の役人で裕福。彼の娘を預かり、のちに自分の息子と結婚させている。二人の間には強い絆が見受けられる。
内蔵助が京から江戸へ転勤した際には、光琳も追って江戸に行っている。

そして「中村内蔵助像」の、座る内蔵助の前には、が描かれた扇が置かれている。

次に光琳の「紅白梅図屏風」

先述の小林太市郎は、これにも性的な解釈をしていて、
白梅が光琳、紅梅が内蔵助、そして黒い川が光琳の妾「さん」だと。
白梅の枝が川の出っ張ってる所に触れてるのは、乳房を触っているところ、
紅梅の小さい枝の出っ張りが内蔵助の男根で、”さん”のお尻が邪魔をしてる?もしくは3Pの様子、男女男=嬲の字を表しているのだと。

しかし、「男色の景色」の丹尾氏によると、
男同士のセックスを描いた春画に、両サイドに梅を配し、二人の横に水が流れている構図の絵があると紹介している。

そういう絵が存在していることを考えると、
光琳の紅白梅図男同士のセックスと、濡れる描写の湾曲表現と考えることも十分可能。

文学の芭蕉、西鶴、演劇の若衆歌舞伎。
これだけ男色文化が花盛りの元禄期に美術だけ関係無いなんてありえないと思っていたので、ハア~スッキリしました!!

次回「岩つつじ」に続く。

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「岩つつじ」編はコチラ↓

前回の「菊」編はコチラ↓

そもそもの芭蕉BL話はコチラ↓


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