オレンジワイン最高のネタ本みつけた
Vol.045
恵比寿や渋谷のワインバーに立ち寄ると、トレンドの勢いに乗ったかのように、ナチュールワインのラインナップが目立ちます。それも、オレンジ系のワイン。これまでオレンジワインについて、その成り立ちと主の視点をnote(直近の記事)で何度か書いてきましたが、今回は、オレンジワインに関する格好のガイドブックにであったので、面白いところを抜き書きします。あとは、ぜひ本書を手に取ってみてください。
探し当てた本は、『オレンジワイン 復活の軌跡を追え!』。2020年初版。まず、執筆したサイモン・J・ウルフさんのプロフィールです。著者紹介には、英国生まれで、ワインと飲料の評論家。本書が初著作。アムステルダム在住。2011年、オンラインワイン誌『モーニング・クラレット』創刊を機に、ワインの執筆を開始。その後、自然派ワインについて、専門誌やオンラインで発表を続けるジャーナリスト。この本をまとめるために、頻繁に取材しはじめたのは、2011年。
いまから、13年前ですね。
主は、この本に出合うまでサイモン・J・ウルフさんの名前を知りませんでした。“オレンジワイン”と命名した張本人は、英国のインポーター、デイヴィット・ハーヴェイ氏が周知なので、ウルフさんはまったくのノーマーク。ウルフさんも本書の1章で、オレンジワインの名付け親は、デイヴィッド・ハーヴェイ氏、と述べています。
ウルフさんはこの本を、オレンジワイン元祖の国といわれるジョージアまで遡り、現在の状況に返ってくるという道のりでは書き進めていません。まず、イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州の州都、トリエステからほど近い、カルソ地区を取材します。そこから北上し、現在、最も有名なオレンジワインの造り手であり、先駆者の、ヨスコ・グラヴネルさんやスタニスラオ・ラディコンさんのワイナリーを訪問。そして、若干、時代を遡って回想するように“イタリアワインの近代化”に言及します。
1960年代以降は、ブドウの皮まで漬け込んだ白ワインは、ある意味で古く、邪道とされました。
1980年代、ワイン造りの技術革命に一石を投じたのが、グラヴネルやラディコンです。ただ、グラヴネルのワイン造りの変遷がユニークです。もともとは「醸した白ワイン」を造り、その後、ステンレスタンクを使った近代的なワインで名をはせた。そして、再び伝統的な「醸しワイン」造りに回帰しました。ラディコンも共感し、現在のオレンジワイン造りに到達しました。そこで、フリウリで起こったことを図式化すると。
濁ったワイン → 澄み切った近代のワイン → オレンジワイン
(1960年代以前) (1960~70年) (2000年)
このあとは、オレンジワインのキーワードになる内容を選び、短く解説します。
イタリアのワイン発祥よりも遥かむかしに、ジョージアでワインを造っていたことがわかります。なんと8000年前から!
ヴィーノサローネで推しのワインがスキオペットです。是非、リンク先からご用命ください。
グラヴネルは、すでにクリーンで香りの高い白ワインを造っていた。白ワインの銘醸地としてイタリア全土に知られたフリウリだったが、新しいアイデンティティ、つまり「醸しワイン」造りの準備を手にしました。
ここはポイントですね。ワイン造りの大転換を図る。近代的なワイン造りに疑問を持っていたグラヴネルは、1982年にグリーンハーベストを試み、1994年には、少量だったものの、白ブドウを皮ごと発酵させることに成功。いよいよ、グラヴネルやラディコンたちのオレンジワイン造りが本格化します。
どのくらいの期間がいいのか。マセレーションの最適化の試行錯誤は続いたようです。
これは参考になりますね。
これも覚えておくといいですね。
ジョージアにも訪ねて、ワイナリーをみたくなります。
グラヴネルさんの見識では、圧倒的にイメレティ州の土なんですね。
イタリアでは素焼きの甕(土器)を「アンフォラ」といいますが、ジョージアでは「クヴェヴリ」と呼びます。オレンジワインの醸造は、ほかにも、木樽、セメント樽、ステンレスタンクも使いますが、『オレンジワイン 復活の軌跡を追え!』を読み進めると、素焼きの甕で醸造する方が、古典的で本質的な魅力を感じます。
今回はこのあたりで区切りをつけます。
また機会があれば、『オレンジワイン 復活の軌跡を追え!』を深読みします。
次回の“ディアリオ ヴィーノサローネ”に続きます。