バーでマスターやバーテンダーさんにお酒をおごるのはどうなのか?
「飲むなら自尊心を忘れないように飲みたまえ」とは
小説「ロンググッドバイ(長いお別れ)」の中の探偵フィリップ・マーロウの台詞です。
こんにちは、今日は嗜み講師の鵜沼です。
今日はある意味タブーな話に切り込んでいこうかと思います。
タイトルにあるように「バーでマスターやバーテンダーさんにお酒をおごるのはどうなのか?」という疑問、お持ちですか?
それがバーでお酒を飲むものの嗜みだという方もいれば、そうじゃないという方もいる。
カッコいい飲み方だという方もいれば、そうじゃないという方もいる。
ロンググッドバイに登場する”ヴィクター”のような、入ると体温が下がる音がわかるくらい静かなバーもあれば
ボクが大好きなロックを音と会話で楽しめるバーもある。
どちらもいるし、どれもある。この問題は結末があるミステリー小説のようにはいきません。
ですが、こう書いている以上結論のようなものは出さなきゃいけないので
結論には早すぎるかもしれませんが、結論から言います。
それは
あなたも、隣りのお客さまも、お店もよければいい。
というのをひとまずの結論とし、この問題に絶対の正解を出せる人はいないかもしれないということだけはお伝えしたいです。
少しずつ紐解いていきたいと思います。
まずは「あなた」がいいこと。
例えば、看板や名前、友達の友達のSNSの投稿で知って行ってみたくなったバーでは
あなたは完全アウェーです。1人でも、誰かが隣りにいたとしても。
勇気を出して扉を開けた空間は自分が好きな雰囲気。
お店の方も素敵な感じだし、お酒の種類も豊富。すでに”また来たい”と思った。
そんなとき、お店の人との話のきっかけに「よろしければ一杯いかがですか?」と声をかける。
仲良くなって帰りたいですからね。あなたにとってはいいことです。
でもそこはお店の主義・形態によります。オーセンティック(伝統的なスタイルの)バーならNGかもしれません。
伝統的なスタイルのバーには、作ることに徹するため、そういった心遣いに対して「感謝の気持ち」だけ受け取られるところもあるということを覚えておくといいと思います。
断られてもそれがそこのスタイルだから心を痛める必要はありません。
その時はお酒を出してもらうタイミングで聞きたいことをお話してみてください。
グラスを受け取ってもらえ、素直にお店を気に入ったことを伝え、無事に乾杯できたとします。
聞きたいことはたくさんあるでしょう。
お酒のことかもしれないし、お店のコンセプトも気になるし、バーテンダーやマスターが魅力的なこともあると思います。
それでも、矢継ぎ早に話をして、自分の前に足止めするようなことにならないようにしてみてください。
興味があることは、隣りのお客さまも同じだから。
「隣りのお客さま」がいいこと。
バーによっては隣りのお客さまに話しかけることを遠慮してもらっているところもあります。
もう少し考えられることとしては、お店の方に一杯すすめた一部始終を見ています。
そんなとき、隣りのお客さまは「私もそうした方がいいのかな…」と少しプレッシャーを感じてしまわれると、その方のいい時間を壊すことにもなってしまうので気をつけたいところです。
常連であればあるほどに。
そんなときは「一杯どうですか?」の理由を明確にするとそれも和らぐかもしれません。
「はじめましてのご挨拶として…」
「日頃の感謝の気持ちとして…」
「随分とご無沙汰してたので…」とかね。
なにもご馳走するだけが「お店もいい」ことにつながるわけではありません。
先に書きましたが、お店の主義もありますし、周りのお客さまのことも気にかけますし、アルコールが入ればミスも多くなったりもします。
お仕事としては避けたいことです。
今日の売上が一杯でも増えるのは嬉しいことですが、飲んで売上が上がることよりも、
「また来ていただければ、それで結構でございます」というお店も少なくありません。
なかなか外側からは判断のつきづらいことかもしれませんが、
『あなたも、隣りのお客さまも、お店もよければいい。』に折り合いがついてバーでのいい時間を過ごしてください。
バーでの嗜みとして参考になったら嬉しいです。
『ギムレットには早すぎる。』
小説「ロンググッドバイ」の中でフィリップ・マーロウは飲み友テリー・レノックスと「また明日な」「さよなら」の意味でその日の最後にギムレットというカクテルを飲みます。
マナーが悪く、帰ってほしいお客さまに「あなたは出入禁止!」とは言いづらいので、
そっとギムレットを出して暗に「出入禁止です」という意味を込めた「勝手にギムレット」が業界に広がったら面白いと思うんだけど、
自分がやられたらイヤだからこれからずっとギムレットしか注文できないというジレンマも含むね。
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