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スマホ販売のカラクリと私

いらっしゃいませ〜。ドアが空き営業時間終わりかけの今、賑やかな子連れ家族が来店。私の役割は、この人たちにスマホを買わせること。目標は最新の機種で最新の5G契約させること。販売員、今日の最後の一仕事ね。

自分・会社の利益のために人間心理を操る販売員 vs 欲しいという気になるまでは買わない客 の駆け引きが行われるこのビジネス現場に隠れた戦略を分析していきます。

1)二つのカラクリ

このビジネスには2つのカラクリがあります。

A:問題意識の洗脳
肩こりと言う概念は、肩こりというのが問題ではないと思っていた時には問題ではなかった。人々が問題であると意識して初めて、問題になるのである。客自身が問題を意識し始めればそれが購入という問題解決のための行動を生む種になる。

私の場合はこんな感じで問題を掘り起こす。
「3Gや4Gだと遅い時イライラしますよね…」「充電が長持ちしないで切れると困りますよね…」って感じで、現在のお客様の携帯の状況を「あ、やっぱりこれって問題なんだ」と認識させる。

この問題認識を芽生えさせる作業はは、やればやるほどお客様の中にストレスが溜まる。ストレスを抱えた人間はそれを解決するために、購入という行動につながりやすい。

ここでのまとめとしては、問題を意識させる洗脳を行うことが、需要を生み出す鍵である。

B:比較
次のフェーズは比較。この比較という作業は、お客様が意識し始めた問題が解決されるかのように述べると効果抜群。

「ネット回線は従来のものより〇〇倍早いです」とか「充電は従来のものと違い、〇〇時間長く持ちます」とか、携帯会社がそれぞれテストしたものを述べる。もちろん嘘はつかない。でもこの比較を使う事で相手が勝手に「あ、これなら悩み解決できるんだ」って思ってくれる。ぶっちゃけAの洗脳がしっかりできてれば、Bの比較は勝手に客の中でいくらでも拡大解釈してもらえる。だって〇〇倍とかって言われても、普通の人には分からんし、想像するしかないから。

比較については、実際にその場で示せるものがあればより効果的。例えばメガネ販売。視力検査ついでに、「コレが現在のお客様の視界、対して、メガネをかけたらこのくらい見えます」って実際に比較を体験させれば、効果は非常に。5Gの早さとかは簡単に体感はできないけど、画面の大きさとか、タッチパネル性能とか、見せたり触ったりで体験させて比較すれば、多少効果的な気がする。

今回は閉店間近ということで、比較を十分にはできず、購入までは持っていけなかった…残念。でも洗脳だけは上手くいった気がするわ。観察結果はきちんと頭の隅に留めておく。

2)実は私だけじゃないのよねこういう商売してるの…

わかってる。人の心を操って金稼ぐなんて詐欺みたいだなっと思う側面はある。実際に私も働いて、裏を知れば知るほど、後ろめたい事もある。でも明らかに綺麗事に従って行動するより、「〇〇は問題だ」というと洗脳と、比較による「現状の悪さ、購入後の良さを強調」することは確かに需要を作り出すのに絶大な効果を発揮して、自分の業績が評価されるのだ。自分にもメリット、会社にもメリット、顧客も洗脳に気づかなければハッピーになる。ビジネスって結局は、やり方よりも結果が重要なんだろうなぁ。私の他にもたくさんこの洗脳と比較のサイクルは見つかるので、ここでは2つ紹介。

化粧品販売:「ニキビケアしないとまずい」
 別にニキビがちょっと顔にあるからって別に劣ってるわけでもないのに、つい化粧品売り場で「それは残念、手入れしたら世界変わる」って問題視を強要。からの「私もこれ使ってます」って言う店員の肌を見て比較まで見事にやられ、何度買わされたことか…

歯医者:「歯列矯正しないとまずい」
 ちょっと歯並びが悪いだけで、一大事・醜いという洗脳が行き届いた欧米文化を見れば、どれだけこの洗脳がお金を生むかわかる。日本でも国が保険対応までし始め、もう活発に洗脳する必要すらない程度に、問題認識が広まった。比較は周りを見てたら明らかだし、もはや歯医者が努力することなく市民が流れ込む場所になりつつある。

占いとかカウンセリングみたいに、疑い深い人が多い洗脳には皆気がつくんだけど、皆んなが当然と思い始め社会全体に洗脳が広まってしまうと、なかなか洗脳戦略に気づくことは難しい。まあ気づいたところでそれに抗えるかどうかは別問題だが。

私にとって、ビジネスの場は、人間心理の駆け引きが行われる本当に面白い場所の一つ。実際に駆け引きを行う立場から人々の心理動向を観察する事が楽しんでいる。そして今日もスマホのフロアに立って心理実験をしている。今日の業務も残り5分、これが終われば帰宅して、お客さんとの観察結果をノートに記録。心理学や社会学を教育機関で学んだことはないけど、経験と分析からの学びの毎日の隠れた私の趣味。

3)この文章の受け取り方

●この文章は、ビジネスの効果的なやり方を、言い方を丸めずに分析したありのままをスマホ販売員の視点から考察したフィクションです。
●「私」の考察は、レトリックに注目をしており、実際にどれだけ効果があるのか、データには基づいてはいません。購買行動に関する研究はたくさんあるので、統計的データを見て自身で見解を深めると、より詳しい理解が進むと思います。
●ビジネスに限らず、子育て・恋愛・友達付き合いなど、相手の心理誘導をしなければいけない(自然としている)場面はよくあります。マクロな視点からコミュニケーションを見る事ができたらとても楽しいですよね。

Rubinより♪

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