ある先生への手紙
以下は、本日、自分がある先生に向けて書いた手紙です。宜しければご覧下さいませ。
突然お手紙を差し上げる失礼いたします。また、先生にお手紙を差し出しておきながら、こちらの身分を一切隠す私達のご無礼を、どうかお許し下さいませ。
私達は二十代の在日ベトナム人並びに特殊なベトナム人達であり、かつて、技能実習制度・日本語学校・特定技能制度の下で勤務した者であり、四年前から、先生並びに(場所の名前)の皆様方の徳行を学び知り、以後、今日に至るまで、個人的に、時折、先生や皆様方のご健康やご活躍を、心から誠に願いつつも、ますます徳行が盛んにならんことを、謹んで願っております。
私達は、残念なことに、力不足な上に不徳な者達であるが故に、技能実習制度・特定技能制度の下での勤務は、大したことが出来ず、技能実習生達に対して、「本当の意味で」お役に立てられませんでした。これは、本当に痛恨の極みです。そして、先生並びに大恩寺の皆様方の徳行には、本当に頭が下がる思いであり、誠に深謝しております。
さて、私達は誠に残念ながら、行も名も財も、そして徳も大変過不足しており、先生や皆様方に感謝しておきながら、大した支援も助力も出来ません。ですが、先哲の御言葉に、「人に財品を贈ることは、人に善言を贈ることに敵わない。」ともありますので、不届き至極ではございますが、せめてこのお手紙で、深謝の念と言葉を通じた精神的な支援並びに助力になればと思います。
先生は、私達よりも遥かに学識も徳行もございますので、既にご存知かと思いますが、技能実習制度は極めて劣悪な制度であり、また、留学制度も、学問活動という観点からすれば、既に著しく形骸化しており、そして今、創設並びに運用されて、新しい展開を見せている特定技能制度もまた、このままでは、形式は変わっても、実質的には、前述の制度と同じ悲惨な道を辿ると思われます。
私はかつて、ベトナムの八月革命から参加して、その後亡くなり、そして今、こよなく愛する我が祖国ベトナムの現状を、第二のこよなく愛する祖国日本に居ながら見て、私見として、やはり、我が祖国ベトナムは、今、著しく成長や発展している段階であるとは言え、未だ未だあまりにも、寡聞浅学で浅学短才な国家であり、歴史であり、諸民族であり、そして、そのような「国運」即ち「天命」を背負って来た、不運で未熟な共同体ではないでしょうか?
そして日本は、あの悲惨な大戦から、経済的や社会的な復興どころか、奇跡的な大躍進を遂げたことは言うまでもありませんが、精神的・心理的、そして、文化的な大失敗や壊滅状態から、再興どころか、未だに立ち直れていないのではないでしょうか?
今、日本は、衰退の道を辿っており、人力は疲弊して、人心も退廃しております。そして、ベトナムは、興隆の道を辿っており、人欲は貪婪になって、人知が邪智になっております。このような二国が「国際交流」や「経済発展」等と言う有名無実な美辞麗句の名目で連携すれば、いつまでも、あの事実上の現代の「奴隷貿易」は、形を変えるだけで、残り続けるどころか、ますます、巧妙化していくことでしょう。
先哲の御言葉に、「適当な場所に住んでは、予め功徳を積んでいて、自ら正しい誓願を起こしていること。」・「深い学識があっては、技術を身に着けて、身を慎むことをよく学び、言葉が立派である。」とありますが、思うに、「知識は力であり、思慮は力の力である。」のではないでしょうか?
悲しいことに、技能実習生達・留学生達の中にも、法的をはじめ、比較的に、経済的や社会的にまだ恵まれている幸いな状況下にいるのも拘わらず、学ぶことを軽視したり、嫌悪したり、放棄したりして、豪遊や贅沢に奔ったり、刺激や快楽に耽ったり、荒稼ぎや自暴自棄に陥る人達も、決して少なくありません。当然、日本や本国に多大な迷惑や危害を齎している連中もおります。全く以て、悲しいことです。
かつて、私がベトナムの八月革命に参加し、その後の三度に亘るインドシナ戦争に、二十世紀の終わり頃までは、私達の祖国ベトナムの大衆は、まず文盲・無知蒙昧・無学非力という極めて劣等な状況から始まりであり、次は、洗脳・抑圧・弾圧という惨状に陥り、そして、経済的にも文化的にも、哲学的にも、何もかもが過不足した不利な状況を強いられておりました。
そして今、二十一世は、国際社会・情報社会・多様性社会となり、これらは、今後もより一層進むことでしょう。ですので、少なくとも、間違いなく、昔よりも遥かに情報や知識の獲得、学習や活動の実践の可能性や選択肢が多くなっております。にも拘らず、辛い境遇や背景、悪しき習慣や文化等の悪影響で、「自ら」情報や知識の獲得に、学習や活動の放棄を行えば、これこそ、「自己の奴隷化」であり、「他者への隷属」ではないでしょうか?こうなってしまえば、何処で何をしようが、いつまでも困苦や窮乏し、最悪の場合、遅かれ早かれ、事故や事件に遭遇あるいは引き起こすことでしょう。
ですから、先生、謹んでお願い申し上げます。どうか、人々の知識欲や学習意欲の向上を図られて下さいませ。「知識は力なり」、これは先哲の格言でございます。
以上が、愛国心や同胞愛を込めた、私達からの切実な嘆願であり、哲学者を志している生者からの熱烈な嘆願であり、死んで意識の無い死者達、特に、三度に亘るインドシナ戦争に従事した元軍人であり、戦後復興に大失敗した元共産党員の私が代表しての、真摯な嘆願でございます。再拝して、心からお願い申し上げます。 敬具
参考のニュース
日本で働く技能実習生の労働環境改善に向けては、悪質業者排除のための意思疎通の強化や、制度を適切に運用するためのシステム構築を進めていく。日本で働くベトナム人は年々増え、昨年には中国を抜き最多となった。労働環境の改善とともに両国の往来の制限緩和が進むことが期待される。
政府や企業等はほぼ当てになりません。信用してはいけません。何よりも「個人」の一人一人の懇切丁寧な意識並びに奮励努力が重要不可欠です。
ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。