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『海亀猟』ヴー・チョン・フン短編翻訳(18)

 二人は頭の上に籠を乗せ楽し気な様子であり、波に向かい共に歩を進める二人の前に灰色の砂の大きな堆積が現れてもその様子は変わらなかった。潮の満ち引きが長い時間をかけて作り上げられた平らで足の裏に穏やかな感触を残すその砂漠の一本道は継ぎ接ぎのない広漠とした一枚の作品のようであった。
 驚くほど大きなその砂山の正体は海亀で、その巨体からすでにこの動物が長きにわたってこの世に住んでいることが知られた。またその側面の長さについて言えば、およそ人間の腕を伸ばした程度はあった。海亀は頭を長く伸ばして口先を地面の下に垂らしていた。必死になって何かを歯に引っかけようとしていて、まるでどこで餌を掘り出したのかを忘れてしまい、それを探しているかのように見えた。海亀の両目は大きく広がり開けられていたけれども、事実この動物には何も見えていなかった。また、どうせインチキ眼が自分に危険が差し迫っていることを把握できたとしても、痛ましいことに海亀は素早く動くことができないやしない。
 パアックとチーは自らの成すべきことを陽気に続けるばかりで、その動物の後ろに座り込むと、二人は海亀の足を持ち上げてその両側から砂を掘り出した。十分に掘り出した後はその穴の中に手を差し込み、持ってきた籠はその付近に置いた。二人が穴から拾い上げるのは海亀の卵で、穴から卵を拾ってはその籠の中へと入れた。この作業は至極容易くおかしみのあるもので、また興奮してその動物の尾の後ろに手を差し出しては、卵が手の上に落ちてくるのを待てばよかった・・・。

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