呑むように読む、あるいは見るお酒
お酒をたっぷりとおいしくのめたらいいのにな、といつも思う。わたしはお酒に対してすごく強くもすごく弱くもないけれど、酔っ払うと身体がおもくなって、つまらない(そういうのを、酒飲みの夫は、ちょっと力が抜けていいでしょ、と言う)。味も、通好みのものになればなるほどそのおいしさがよくわからない。けれどわたしはもっといろんなお酒をおいしくのみたいと思っている。
それというのも、本の中でお酒好きのひとびとがのむお酒の、なんとおいしそうなことか。江國香織さんは随筆の中でたびたびきもちよさそうにビールをのんでいらっしゃって、夏の海のように喉を内蔵を洗い流れてゆくこがね色の液体に、私はうっとりと想いを馳せる。「夜風のような」日本酒もすてきだし、「甘くてつめたい」カイピリーニャも魅惑的。それから、伊藤まさこさんの著書に出てくる、贅沢な材料をつかったおつまみとともにのむ大人っぽいワインや、お花と一緒にバケツに入れてお持たせにするスパークリングワインも、とくべつな感じが相まってよけいにおいしい。椎名誠さんが旅の先々でのむ様々なお酒も、わたしの「空想酒」のなかの大好物。
そんなわけで、お酒をあまりのめない人間の、お酒にたいするあこがれというのはなかなか尽きないのです。
ところで、お酒っておいしいこともそうだけど、のんでいる人を見ると「たのしそうだな」とも思うのです。十代のころ小さなレストランバーでアルバイトをしていたのだけれど、そこへ来るお客さんたちの酔っ払い方を見て初めはすごく驚いた。というのもわたしはお酒をのまない両親のもとで育ったこともあり、大人があんなふうに、、、そう、みっともなく、酔いつぶれる姿を見たことがなかったのです。夜のおとななたちはすごく自由で、お酒をのんであたりまえに酔っ払って、恋愛をして、ばかみたいな話で盛り上がって、たまにけんかもしていたし、まれに出入り禁止になったりしていた。それがあまりに新鮮で、初めこそおどろいたけれど、こどもみたいにはしゃいだりけんかしたりするみっともない大人たちの姿を見て、シンプルに、おとなって自由なんだ、と思ったのでした。
ちなみに私の友人にはなぜか酒飲みが多く、若い頃から基本は焼酎、みたいな子ばかりで、彼女たちの自由な酔っ払い方を見ていても、やはり、たのしそうでいいなーと思うのです。私はいつも帰りのことが気になってノンアルコールで済ませることが多いのだけど、こうやって書いていたら外でたのしくお酒が飲みたくなってきた。あぁ、早く、気兼ねなく友達と会ってお酒がのめるようになってほしい(切実)。