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IRCAM の「プロジェクション・スペース」が再オープン

1月12日、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)の「プロジェクション・スペース」が再オープンした。
このスペースは建築家レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャースと、作曲家ピエール・ブーレーズが共同でコンセプトを練り、ヴィクトル・ポイツが音響を担当したスペース。IRCAM内で唯一、一般聴衆を迎えてコンサートなどが開催できるスペースだ。8年間の改装工事を経て、世界で最新の音響設備を搭載し、様々なコンサートやイベントが繰り広げられる。
オープニングフェスティヴァルは1月12日から17日まで行われ、多くの人が訪れた。筆者は最終日の17日に行われたコンサートを聴いた。

IRCAM en fête のヴィジュアル © IRCAM

「エスプロ」の設備

常連の間で、フランス語の名称 Espace de projection を略して「エスプロ」と呼ばれるこのスペースは、1978年オープン。今回の改修によって、天井の高さが3段階に変更可能、壁の材質も3タイプあり異なる音響に対応可能となった。また、339個ものアンプを駆使してスペース音響を実現することができる。WFS と Ambisonics と呼ばれる音響フィールド装置も搭載しており、これらを組み合わせると、無限の音響を作り出すことができる。さらに、これらの音響は固定されたものではなく、コンサートの最中に全く異なるものに変更することも可能。音響音楽のクリエーターなら、一生に一度はここで何かを創作したくなるスペースだ。

オープニングフェスティヴァル

1月12日から17日のオープニングフェスティヴァルでは、エレクトロ、ピアノ、チェロ、サウンド・ディフージョンなどのコンサートのほか、一般の人が自由に音声操作・処理を体験したり、インスタレーションの中で音響を味わったり、実験のデモンストレーションを行ったりと、多彩。メインは14日土曜日の夜に行われたジャン=ミシェル・ジャールのコンサートで、最新アルバム「Oxymore」を発展させたもの。定員はすぐに満杯となり大盛況だったようだが、その道の通に言わせると、前評判を満足させるような体験はできなかったらしい。

「Seconde Nature」

筆者が聴いたのは「Seconde Nature」と銘打たれた最終日のコンサート。ローラン・キュニオLaurent Cuniot 指揮のアンサンブルTM+が、ナターシャ・バレット Natacha Barrett の 『Hidden Value』 と、フロラン・キャロン・ダラス Florent Caron Darras の新作 『Transfert』を演奏。後者はIRCAMとアンサンブルTM+の共同委嘱作品で、世界初演。これらの曲は、森や自然の中で採取した音源を処理して素材とし、これらを様々に組み合わせ、会場全体に設置されたアンプから流し、これをアンサンブルTM+による「生演奏」と組み合わせた。コンサートのテーマの「Seconde Nature」は訳せば「第二の自然」。自然音に音響操作を施して、作曲家のイマジネーションの中にある自然のイメージを表現した。
バレットは雨や風の採取音をそのまま360度に設置されたアンプで聴かせたかと思えば、巧みに処理を施して楽器の音と同化させたりする。カロン・ダラスはこれをさらに発展させ、音の組み合わせによって音響を様々に変えることであらゆる可能性を試みている。大変に面白いのだが、曲の長さに閉口した。
バレットとカロン・ダラスの前には、ピアニストのジュリアン・ル・パップ Julien Le Pape がメシアンの『鳥のカタログ』からの抜粋を演奏。生のピアノの音が、斬新に聴こえる、不思議な体験を味わった。


プログラム

Seconde nature

Olivier Messiaen : La rousserolle effarvatte (2e partie)
Natasha Barrett : Hidden Values (1re partie « The Umbrella » et 3e partie « Optical Tubes »)
Olivier Messiaen : Le Courlis cendré
Florent Caron Darras : Transfert - création 2023

Piano Julien Le Pape
Ensemble TM+
Direction Laurent Cuniot
Électronique Ircam Augustin Muller
Diffusion sonore Ircam Sylvain Cadars

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