版画×写真1839-1900 町田市立国際版画美術館
これは見なくては、と先月からチェックしていた、版画と写真初期の関わりをテーマにした美術展に行って来ました。
なんと、行こうと思っていた文化の日は無料だったのです!ラッキー!
町田市立国際版画美術館は以前も記事にしたことがありました。
町田駅からわりと歩くのですが、散歩にはちょうどいいかもしれません。
ただ、美術館の手前がかなりの急坂なので、帰りはちょっとしんどいです。
土日祝は送迎バスが出ています。
今日は楽して往復バスに乗せてもらいました。
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1839年は、世界初の写真術であるダゲレオタイプが公表された年です。
写真の登場によって、それまで絵画の複製などに使われていた版画という技術が大きな影響を受けましたが、初期の写真は撮影に時間がかかったり、大量印刷ができなかったりしたので、版画と写真が補い合う関係でもあったそうです。
今回の展覧会は、1839年から「写真の技術が向上し印刷技術として実用化されていく19世紀末まで、版画と写真が支えあい競いあった関係を探るもの」というテーマでした。
国際版画美術館が所蔵している版画の他に、国立西洋美術館所蔵の版画、中野にある東京工芸大学図書館所蔵の古い写真、昔の写真機材やダゲレオタイプの写真など、初期の写真に関する展示もいろいろとありました。
もしかして今まで気づいていなかったかも、と今回思ったのは、絵画の複製に版画が使われていたこと。
絵画そのもの、あるいは絵画を写真で撮ったもの、と勘違いしていたことがあったかもしれないと思いました。
例えば、これ
レンブラントの「夜警」ですが、版画で複製したものなんですよね。
これまで、こういった複製を「版画」と認識していなかったかもしれません。
彫刻を撮った写真を元にした版画などもあり、写真なのか版画なのか、写真そのものにしか見えないものもありました。
写真の登場によって版画が廃れるのではなく、芸術への道に活路を見出していったということも興味深かったです。
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上はネイラー夫妻のミニアチュールと、下はダゲレオタイプの夫妻の写真。
細密画を頼むより、写真のほうが費用も時間もかからなくなり、肖像画の分野でも写真が主流になっていったことがわかります。
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下の肖像画(銅版画)はフィジオノトラースという肖像画を描くための装置を使って制作されたものです。
横顔がイケメンだったのでつい撮ってしまいました。
「木枠の中にモデルを座らせ、接眼レンズをのぞきながらトレースすると、その動きがパンタグラフに固定された鉛筆を動かし、数分で等身大に近いスケッチが得られる」
それを銅版上に転写するらしいのですが、ダゲレオタイプが登場するまで人気を博したものだそうです。
これを用いて制作したデッサンや銅版画もフィジオノトラースと呼ばれたとのこと。
これは初めて知った手法でした。
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下の2枚の写真は、パリ生まれの写真家、風刺画家のナダール(本名ガスパール・フェリックス・トゥールナション)が撮ったものです。
ナダールはどういう人かというと
とあります。
この展覧会のチラシのリトグラフはナダールを描いたもので、この絵のとおり気球に乗っての航空写真も撮っていたそう。写真を芸術として認めさせることに尽力した人物だそうです。
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あまり昔関わった仕事のことは詳しく書けませんが、今回の展示物で初期の写真にかかわる物、仕事で手に取ったものが多いのです。
覚えているものも多く、感慨深いものがあります。
以前、webマガジン「Stay Salty」でも書いたことがありましたが、昔は焼き増しすることができなかった写真は貴重なもので、こういう美しい革のケースに入れられて大切にされていました。
子供の遺体の写真を残すこともあり、遺髪も一緒に収められることがありました。
最初は裕福な人々だけが撮ることのできた写真でしたが、だんだん多くの人が自分のポートレイトを撮れるようになったのですね。
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今日はあまり展示物を写真に撮らなかったので、展覧会のレポートにはなっていませんが、気になったものを載せてみました。
展示数がけっこう多く、興味深いものがたくさんあったので、版画や写真史に興味があれば面白い展示だと思います。
無料の日ということで来場者もけっこう多かったのですが、混雑というほどでもなく、ちょうどいい感じでした。
若い人も割と多かったので、写真に興味がある人かもしれませんね。
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