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『イスラームと儒学』を読んで

『イスラームと儒学』アリム・トヘテイ著。2022年初版。明石書店。 をこの度読みました。

アリム・トヘテイ先生は東洋思想専攻の哲学博士。ウイグル語、中国語、日本語、英語、ウズベク語、トルコ語を操ることができる。

五か国語以上話者ということは、ポリグロット。この本も翻訳本ではなく、トヘテイ先生が日本語で書いているもの。

この本は、イスラームと儒学の融合について論じる。。。値段が高い。
主には、王岱輿おうたいよ(1570-1660)などの中国イスラーム哲学者について。序章から終章までの9章で構成される。

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中国は自分は無信仰であると答える人の割合が1番多い国です。日中韓の中だとムスリムの数が多いのが中国。

実際、中国の歴史を見てみると、テュルク系と思われる人々が西方からやってきて、現・甘粛省あたりに多く住んだ。この人達は回鶻と呼ばれていた。

この漢字は、回鶻(hui2gu3)なので、現代中国語でもなんとなく、フイグー?ああ、「ウイグル」なのかなーと推察。

この人々の頭文字、「回」に教をつけて「回教」と書くと、中国語でイスラームを指すことになる。

この本の終章では、少しだけマテオ・リッチについて触れられている。マテオ・リッチはキリスト教の伝道師で、中国にキリスト教を布教しようとした人。このキリスト教との出会いは中国の儒学体系に一定の影響をもたらした。

マテオ・リッチのような西洋人が儒学を なしよりのあり として許容したのはわりと上から目線でした。

つまり、儒学は天を奉じるから、これはキリスト教に通ずるものであって、そんじょそこらの異端宗教とは違う。とローマに報告する。

キリスト教にとっては、聖書を知らないことがすでに、どうしても悪だから、やがてはキリスト教に改宗する余地があるかどうかだけを気にしているような態度ともとれる。

一方で、中国生まれのムスリムたちは、イスラームと儒学とを接続し、どちらも両面兼ね備えた中国イスラーム哲学を練り上げていく。中国ではイスラームと儒学とがコネクトしており、その理論は深いものとなっていたことが本書で示される。

王岱輿は、あらゆるものはただ一つの存在から創始されたものと考える。実にアブラハムの宗教的な考え方です。中国イスラーム哲学者たちはここにムハンマドと孔子と孟子とを尊び、イスラームと宋明理学を接続、「回儒学」という融合を果たした。

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儒学では、「天」の考え方があった。ただ唯一の神とか、ただ真に一つの実体と言う考え方があった。このような儒学の一種の一神教的な側面がアブラハムの宗教との相性を保証している面があると思います。

王岱輿はこう述べている。

 ’聴命者、乃不循自性、克己私心。’
 (命を聞くものは、自身の性に従わず、私心に打ち克つ。)

彼は聞き従うことを天命と見なしており、己に打ち克つことを人道としている。
(略)己に打ち克つとは人道を尽くすことであり、それはまた天道に通じるものとなる。そしてそこから天理を認識し、認主へと到達するということである。

179-180p

IMAGE BY hoomarg FROM  Pixabay










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