動物病院での犬と猫の病気:下痢(7) 小腸性下痢と大腸性下痢の原因について
千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。
前回のnoteでは
小腸性下痢と大腸性下痢の違い
について解説をしました。
今回は
小腸性下痢と大腸性下痢の原因
についてお話をしたいと思います。
前回のNOTEでお話しした小腸性と大腸性の下痢の違いによって、大まかな部位の特定ができます。
そして実はもう一つ下痢の原因を特定するうえで大切なことがあります。
それは
急性な症状か、慢性な症状か
ということです。
急性の下痢とは、突然下痢が始まりその症状も強く出る傾向があります。
一方の慢性の下痢とは、ダラダラと長期間にわたり下痢が続きますが、症状は急性のように強く出ることはほとんどありません。
急性と慢性の明確な時間的定義は決まっていません。
また急性の症状から慢性の症状へ移行することもあるため、あくまで感覚的なものになってしまうかもしれません。
そのためご家族の立場で急性と慢性の見極めをする際は、
考えられる要因がなく突然ひどい下痢が始まった場合を急性
ひどい下痢ではないが何日も下痢が続いている場合を慢性
みたいな感じで考えていただければよいと思います。
そして小腸性下痢と大腸性下痢の違いは前回のNOTEの復習になりますが
小腸性下痢では一般的に便の量がとても多く、排便回数も多くなります。
そして未消化物が多くなりますが、粘膜便(ドロッとしたゼリー状の粘膜を含んだ便)は少量です。そして嘔吐や体重減少、脱水も認められます。
大腸性下痢では便の量は正常かやや増加する程度で、排便回数はとても増え、粘膜便も多く出るようになります。そしてしぶり(便をする際に出にくかったり、痛みを伴うためにりきむこと。便がほとんど出ないのに違和感が強いため排便姿勢を繰り返すこと。)の症状が出てきます。嘔吐や体重減少は比較的少なめです。
になります。
こうしたそれぞれの特徴を元におおまかな下痢の原因を分類すると以下のようになります。
①急性の小腸性下痢
急性の小腸性下痢では主に感染症や中毒、そして膵炎が考えられます。
特に子犬では命に係わるとても怖いウイルス病もあるので、急性小腸性下痢の場合はなるべく早くお近くの動物病院に行くことをお勧めします。
また今回は詳しくお話ししませんが、膵炎もとてもやっかいな病気でその症状の程度によっては成犬でも命に係わるほど重症化することもあります。膵炎はいずれこのNOTEにて改めて詳しくお話ししたいと考えています。
② 慢性の小腸性下痢
慢性の小腸性下痢では
寄生虫や食物アレルギー、甲状腺機能亢進症(猫)、膵外分泌不全、免疫異常の病気、腫瘍などが考えられます。
特に高齢の猫でこのような症状の時は腫瘍が隠れていることがよくあります。初期だと分かりませんが、進行したケースだと診察時にお腹の中にしこりが触れることもあります。
③ 急性の大腸性下痢
急性の大腸性下痢では感染症が主な原因として考えられます。
急性の大腸性下痢は粘膜便が大量には出てきて、しぶりの症状がきついので見ていてとてもかわいそうです。
④ 慢性の大腸性下痢
慢性の大腸性下痢では寄生虫、免疫異常の病気、腫瘍などが考えられます。
猫は小腸に腫瘍が見つかる場合が多いですが、犬は大腸に腫瘍が見つかる場合の方が多いです。
今回は教科書的な病気の羅列になってしまったので、退屈に感じてしまった方はすみません。
次回は今までのお話を含め、
私が実際行っている動物病院での下痢の診断方法について
お話しをしていきます。
つづく
参考文献:
徴候からみる鑑別診断 犬と猫の臨床
SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE
Small Animal Medical Diagnosis
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