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動物病院での犬と猫の病気:下痢(11)  急性膵炎について

千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

前回のnoteでは

血液検査でわかる下痢につながる病気の「中毒」

についてお話をしました。

今回は血液検査でわかる下痢につながる病気の「膵炎」についてお話をします。

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2⃣ 膵炎

何かしらで膵臓に炎症を起こし、強い腹痛と吐き気下痢が止まらなくなってしまうとても怖い病気です。

そもそも膵臓の本来の役割とは
・消化液の分泌
・インスリンなどのホルモンの分泌

になります。

その膵臓が何らかの原因で炎症が起きると、膵臓から分泌される消化液が膵臓自身や周囲の組織を溶かしてしまい、さまざまな怖い症状を引き起こします。

今まで私が診断した膵炎になった子のご家族から多くお聞きした原因は

拾い食い

自宅で食べ慣れないもの(特に脂っぽいもの)を食べた時

が圧倒的に多い印象があります。

拾い食いでは、
・海辺に打ちあがっていた魚を食べてしまった。
・外に落ちていたおやつを食べた

自宅の食べ慣れないものの話では
・焼肉を食べていて焼いた肉を少し与えてしまった。
・ゴミ箱を倒し、生ごみを食べてしまった。

このようなことを実際ご家族からお聞きしたことがあります。

膵炎は10年位前までは診断が難しい病気でしたが、今は院内の血液検査機器や検査キットなどで迅速に診断が可能になりました。

膵炎には急性膵炎慢性膵炎があります。

上記にお話ししたような例では、そのほとんどが急性膵炎を引き起こします。

急性膵炎の主な症状は
・続く下痢と吐き気
・強い腹痛

です。

ただ急性膵炎の症状もその個体や程度によって大きく異なり、ちょっと緩い便が続くような軽度の場合も多いですが、重症例だと嘔吐と下痢が頻発し、治療にも反応が乏しく死に至ることもあります。

治療は基本的には根本治療(膵炎自体を治す治療)はなく、あくまで対症療法(出てきた症状に対する治療)になります。

とにかく

変なものを食べたあとにひどい水下痢と嘔吐が続いている

このような場合は

急性膵炎を疑います。

急性膵炎は時間とともにどんどん症状も強くなり重症化していく可能性があります。

治療が遅れると若い子でも亡くなってしまう場合もあり、実際私は何度もそのような不幸なケースを経験しています。

繰り返しお伝えしますが、

変なものを食べたあとにひどい水下痢と嘔吐が続いている

ときはなるべく早く主治医のいる動物病院にご相談ください。

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ちょっと話が長くなりましたので、慢性膵炎については次回お話ししたいと思います。

つづく


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