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映画に出てくるワインを考察します③「レッドファミリー」

 時流もストーリーも気にせず、画面に出てきたワインをゆるく考察する第3回目です。今日は韓国映画で見つけたワイン。2021年に新型コロナで亡くなられたキム・ギドク氏が製作・脚本・編集を手がけた「レッドファミリー」という作品で、テーマは「家族」。同じ韓国映画の「パラサイト」も家族の話でしたがこの「レッドファミリー」の方が先で2013年の公開でした。

このポスターというかチラシ、デザインもコピーも秀逸です。


北朝鮮の工作員4人が祖父・夫・妻・娘という構成の家族を装って韓国に潜入、滞在するというお話です。表向きはどこにでもいそうな仲良し家族ですが、家では監視され同志と呼び合い、家庭の団欒とは程遠い緊張感。それに工作員といっても殺しのスペシャリストとかではないので、脱北者の暗殺を命じられるうち、色々しんどくなっていきます。皆それぞれ、実の家族が人質状態のため何を命じられてもNOとはいえない。自分は正しいことをやっているのか?国家を信じていいのか?観ている方も任務の辛さに重い気持ちになります。

「パラサイト」では2つの家族が描かれましたが、ここでも、もう一つの家族、工作員のお隣さん一家が登場します。お隣さんは四六時中夫婦げんかばかり。近所に聞こえても構わず大声で言いたいことを言い合う。でもそれってなんと平和なことでしょう。

うるさいお隣さんですが、根は善良なようで、工作員一家の実情を知らぬままおばあちゃんの誕生パーティーへ招待してくれます。その時出たお酒がワイン。お隣の妻は「いい味でしょう?デパートで買ってきたのよ」と言ってました。


誕生パーティーの乾杯


その後も何かにつけて、ご馳走とワインを持って工作員一家を訪れます。

ちゃんと抜栓したワインを持ってきました


隣の妻は工作員の家にワイングラスがないのをみて「グラスで飲まなきゃ」などと言います。飲み方にもこだわっている。
また、2家族合同でキャンプをするシーンでもお隣はワインを飲んでいました。


食事会のたびにワインを飲んでます。銘柄は不明


韓国ドラマを観ていると、韓国人にとってお酒といえばチャミスルなのかな?というくらい、宴会のたびに緑の瓶が現れます。いや我が家のホームパーティーではワインですよ、というご家庭もあるとは思いますが、ここまでチャミスルが出てこない韓国作品は珍しいような気がします。

もしかしたら、監督のイ・ジュヒョンさんか、脚本・編集のキム・ギドクさんがワインびいきなのかもしれないですね。キム・ギドクさんはフランスで芸術を学んでいたそうなので、ワインは飲んでいたでしょう。またご自身が監督した「嘆きのピエタ」という映画のノベライズ記念に、同名のワインを発売したという記事もネットで見かけました。

「レッドファミリー」に戻りますが、人の温かさにじわっときたり、クスッと笑えるユーモアがあったり、ただの悲しいドラマではありません。機会があったら観て損はない1本です。

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