ツインレイ？の記録１２

私がインナーチャイルドと真剣に向き合いだしたきっかけは間違いなく彼だった。

彼との連絡が初めて途絶えた時、心臓がつぶれそうに痛くなり、本当に死ぬかと思った。

私は自分にインナーチャイルドの問題があるのはわかっていたし、一度買ったインナーチャイルドの本が、ちがうルートでまた手に入るなどということもあり、絶対に取り組む必要があるのはわかっていた。

私はいつも恋愛で同じ問題を起こすし、結婚の失敗の理由にも同じ原因がある。もちろん大きな問題としては元旦那がアスペルガーで交流が難しいことと暴力というのがあるが、そもそもその暴力を発動させたのは、私のインナーチャイルドだ。

五歳の頃、親の離婚で母に捨てられ、祖父母の家で育った私は、居候扱いだった。父も一緒に暮らしていたが、祖母に溺愛される父と私では立場もちがった。

私は親密な関係になるパートナーに対していつも試し行動をする癖があった。私を愛して欲しいと思いながらもどうせ愛されるわけがないと二律背反する気持ちがあった。

相手がいくら私を好きだと言っても信用できないどころか、自分をバカにしているとさえ思った。不信感は拭えないし、自分をぞんざいに扱う態度を見て、「ほらやっぱりね」と安心するようなところもあった。
自分を尊重してほしいと思いながらも、尊重されるわけないと思ったし、そのくせ関心を持たれないことに強い憤りを感じていた。

最初に彼からの連絡が途絶えた時、私は強烈に母親に置き去りにされた時の感覚を思い出したのかもしれない。
彼に嫌われたと思い、彼に嫌われることをしたのではないかと激しく後悔し、彼にもう会えないと思うと、狂いそうなほどつらかった。
あれは感情の再現なのか、今度こそ本気でインナーチャイルドと向き合わなければいけないと思ったきっかけはあそこだったと思う。

私は本を読みながら、イメージワークを試しつつ、自分に一番合った方法として、文字を打ちながら、幼い頃の自分と対話を始めた。

それにより、わかったのは、おそらく私は母親からネグレクトされていたということ。

五歳以前の記憶がほとんどない私だが、断片的に覚えている記憶から、母がほとんど私に関心がなく、共感能力も乏しく、私が転んで痛い時すら、笑っているような人だったことは間違いない。仮面のような笑顔が怖かったこと。気持ちに寄り添ってもらえないこと、ここにいるのにいないような感覚、すべてが蘇ってきた。

そしてそれは母だけじゃなく、父もある意味同じだった。
私の気持ちに対して寄り添うことがない。

私の問題は母だけではなかった。
両親共に私のことを何も理解してなかったのだ。
そして私自身も自分の中にある親の身勝手さによりもたらされた理不尽な環境への怒りを言語化できていない。
それを言語化した上で、幼い私に寄り添ったのは、大人である今の私だ。

幼い頃、親の離婚で傷ついた私の心をケアする人は誰もいなかった。
それどころか、傷口に塩を塗りつけられるような環境だった。

更に抑圧された女性性。
私にとって女性は母であり、その母と似ていると言われることは呪いであり、私が子どものままであることを望んだ父により、大人の女性としての成長が止められてしまったところがある。

さらに幼い私は語る。
インナーチャイルドが欲しかったのは、親の関心と愛情。
しかし褒められるためにはいつも条件が必要だった。

だから、彼が最初に出会った日から、私に毎日連絡をくれて体調を気遣って関心を持ってくれてることがうれしかったのだ。
たくさん私を褒めてくれたことがうれしかったのだ。
親として子どもに精一杯寄り添おうとする、父親としての彼も好きだった。

さらに私が思い出したのは、祖父母の家での冷たい食卓。
おいしくないご飯。カピカピに乾いた白いご飯。

彼が私に食べさせてくれたおにぎりのおいしさが忘れられない。おいしくて泣いた。あれは私のインナーチャイルドの心の栄養になったのだ。

さらに思い出したのは祖父母と共に寝てた部屋。
冷たくて重い布団。温もりのない寝床。隣で眠る祖母はただ隣で寝ているだけの人。いつも怖い夢を見た。

私が発熱した時、彼は毛布を運んできてくれた。とても温かかった。
今も、その毛布にくるまれていると、彼の大きな愛に包まれているようで安心する。

あの頃の私、傷ついたインナーチャイルドが必要していたものを彼は私に与え、そして思い出させてくれた。ずっと癒えない心の傷を。

私はずっと母親に問題があると思っていたが、実は父親との関係にも相当問題があるとわかってきた。

私を捨てた母よりも現在も進行して私を傷つける父の態度や言葉の方が問題だった。

父は未熟な人でもあり、心無い言葉で幼い私は自尊心を傷つけられてきた。

だから私は父みたいな人とは絶対に結婚したくないと思ったし、ファザコンが年上の男性を求めるのとは対照的に、自分よりも年齢が下の若者ばかり相手にしてきたのだ。以前の夫も十歳年下だ。

けれど、今回わかったのは、結局私は父のような未熟な男性ばかりを選んできたということだ。そして心無い言葉を受けたりすることや気持ちによりそってもらえないことや理解されないことへの怒りを感じている。

そのパターンは彼により変わる。
そもそも私の恋愛対象はいつも２０代であり、４０代の既婚者を好きになったことはないし、完全にイレギュラーなことだった。

おそらく彼は勘のいい人で、私がいつものパターンに陥りメンヘラになりかけたところをするりとかわして距離を置いたんじゃないだろうか。

私は彼に対してだけは最初から圧倒的な信頼があり、彼を卑怯とか逃げたとか思えなくて、いつものように被害者根性丸出しで相手に怒りをぶつけたり呪うようなこともなかった。すべて自分の内側に原因があると思えたのだ。

そして私はついにわかったのだ。
私が本当に求めていたのは彼のような人だったということを。
自分を不安にさせる相手ではなく、信頼できて安心できる男性だったということを。

だけど、もし彼が既婚者じゃなければ、私は自分と向き合えただろうか。
彼も彼で、もし独身者なら、私を必死に救おうとしたんじゃないだろうか。
彼は自分に助けを求める相手を簡単には切り捨てられないような人だと思う。でもその結果相互依存になってしまったかもしれない。

彼は自分の家族が何より大事で、家族を守るためにはほかの人間は切り捨てるぐらいの意志の強さがある。

だから私を助けない。
私も彼にしがみつけない。

自分で自分を救うためには徹底的に自分と向き合うしかない。

私は彼が私に返信や連絡をしなくなると、徹底的にインナーチャイルドワークに取り組む習慣ができた。

問題は自分の中にあると思いながら、インナーチャイルドの声を聞き、寄り添い、子どものまま置き去りにされた自分に必要な言葉をかけている。

「あなたは何も悪くない」

幼い頃の私は誰かにそう言ってもらいたかった。
そう言ってくれた人もいた。
以前の夫がそうだった。

だけど私は彼を信じられなかった。
私は彼がすぐ逃げること、ずるくて嘘をつくことも知っていた。
でも信じられなかったのはそれが原因でもないと思う。
その言葉は、私が私自身に言う必要があったのだ。

「私は悪くない、愛されてもいい、もっと大事にされてもいい」

自分が自分に与える許可が必要だった。

親が離婚したこと、遠くの親戚の家にやられたり、施設にいれられそうになったり、祖父母の家で冷遇されるような環境で育たなければならなかったこと、親戚に居候呼ばわりされたこと、父が家に入れる生活費の金額について言われたこと……全部私のせいじゃない。
なのになぜ自分がこんな目にあうのかと理不尽さに怒っていたのに、私の声は誰にも届かない。幼い私には言語化ができない。
その言葉を今言語化し、気持ちに寄り添うことができるのは、私自身に他ならない。

大人になった私はずっとインナーチャイルドに寄り添ってあげようと決めた。彼女が望むこと、喜ぶことは何か、何に怒りを感じ、何に悲しいと思っているのか。

これまでも自分で自分の機嫌をとり、自分を楽しませるためにはどうしたらいいかといつも考えるようにしていた。

それは離婚を通して知ったことでもある。
自分を救うのは自分しかいないし、自分を幸せにするのも自分しかいない。

２月４日、彼と過ごした幸福な時間。
でもその直後から彼の体調不良や家族の問題でしばらく会えなくなってしまう。

その間私はメリー親子と過ごす。
私と同じ機能不全家族の元育ったメリー。
息子は５歳。離婚して一度は自分を置いて去った母への不信感を抱えながら、母の関心を引くのに必死だ。
でもメリーは息子を捨てて彼氏との結婚を望んでいた。
自分に唯一関心を向けてくれていると思い込んでいる彼氏へ執着していた。

私の母も機能不全家族で育ち愛情不足で他者の承認を強く求める人だった。私にもその傾向がある。
そして息子の不安定さ。５歳で親が離婚したあの時の私と同じ。
「僕を見て、携帯を見ないで、ママ、ママ」
それはまるであの頃の私そのものだ。

だから私はメリーにもっと息子に関心をもってほしいと訴えた。
離婚したメリーの夫も私の父親に似ている。
息子が可愛いし愛情があるのはわかるが、欲しい物をそのまま買い与え、息子はどんどんわがままになっている。

５歳の頃の私もそうだったという。
だから父は心を鬼にして厳しくしたというが、その父のやり方も間違っていた。子どもを教育するために怒鳴ることも殴ることも必要ない。ただ一貫した態度を貫き忍耐強く向き合うことが必要だ。
これがメリーも元夫もできていない。
未熟な親の元で育った５歳の息子にどうしても自分が重なった。

結局メリーは彼氏に捨てられた。

彼と一緒になるために離婚して息子よりも彼氏と生きることを選んだのに。

そもそも相手はわかりやすいぐらいのクズで、メリーに多額の金を貢がせ借金も踏み倒していた。
メリーにとって愛情＝金であり、彼が喜ぶことでメリーの承認欲求は満たされ、甘い言葉を言われれば、愛されていると勘違いすることもできた。

私は色んな人にお金を搾取され行き場もないメリーを迎え入れたが、そんな私よりも彼女を強く求める息子よりも、彼女が必要としたのはクズ彼氏だ。

それでも相手が結婚してくれないとわかるとメリーは彼に対して怒りをぶつけ、別れることを選んだ。
そして今後どうすればいいのかと私に対して聞いてきた。

私は「今誰よりもメリーを必要としているのは息子なのだから、息子のところに戻れ」と言った。そもそも彼女は一人では生きていけない。一人で仕事を探して息子を育てる選択も彼女にはない。それなら生活のためと割り切って、復縁を強く望む元夫のところに戻るのがいいと思った。
その代わりまた離婚ということにならないように復縁の条件を元夫に提示するよう助言した。

すべては５歳の息子のためだった。

本当はここまで立ち入ることでもないし、メリー自身が決めるべきことだが、自分の髪型や服にいたるまですべてクズ彼氏に任せきりだった彼女にはそれができない。

彼女は自己肯定感が低く、自分を尊重するということができない。

だけどそれは私の中にもある部分だ。

だからこそ彼女にも、自分が自分に関心を向け、自分を尊重することの大切さを説いた。でも彼女はそれを聞き入れない。

人は人を変えられないし、私は彼女を反面教師に自分にますます目を向けた。

結婚してくれない彼氏に失望した彼女と「世の中の男はダメだ」という話にもなったこともある。

以前は大事にしてくれたのにだんだん扱いがぞんざいになっていった彼女のクズ彼氏と、私が大好きな彼は同じだと言われた。

私もそれに同意しながらも、私の彼に対する信頼は不思議と変わることはなかった。
たとえ一見私への態度が冷たいと感じても、それは彼なりの理由があるからだということを知っていた。

私の大好きな彼は私から何も搾取しない。
むしろ私に余りあるほどの愛をくれた。
それは男女の愛ではない。人として大きな愛情だ。

ただし私は彼に対して恋愛感情があるのでメスとしての不満は感じている。
そしていつものパターンが出る。
私には女としての魅力がない、男は私を愛さない、誰も私を好きじゃない！
だからメリーと「男なんてみんな同じだ」と悪口を言う。

だけどそれでも彼だけは違うと、なぜか信じられるのだ。
私を苦しめているのは彼ではなく、私自身であることを、私はもう知っていた。

やがて冬休みの終わり。
メリーはあっさり元夫と復縁し、息子の元へ戻った。

そしてまた彼からの連絡が途絶える。

インナーチャイルドと向き合うのと同時に私はツインレイという言葉を知るようになる。

彼の特徴は男性ツインレイそのものだ。
誠実で責任感が強く、頑固で繊細、真面目で一途、時には自己犠牲的なぐらいに他人のために行動する。
彼は、自立していて責任感があり、家族をとても大切にしている大人の男性だ。

彼がツインレイ男性の要素を持っているからといって、私のツインレイであるかどうかはわからない。

ただ一つ確実に言えるのは、彼との出会いをきっかけに私はインナーチャイルドワークに本格的に取り組んだし、これがただの生温い恋ではないことを知っている。

既婚者だからとかそういうことではなくて、これまで好きになった人とは明らかに違うのだ。

２０代でもなければ、クズでもポンコツでもない。
彼女持ちでも好きになったことがないのに彼は既婚者で４０代。

何よりこんなにも自分と向き合うことになる相手はいない。
自分のベクトルは彼というより常に自分に向いている。

一体彼が私にとって何なのかはわからない。

それでもインナーチャイルドワークがまさに今必要だってことだけはわかっている。

彼に出会ったことで、私は大きく変わろうとしていた。