欠けたボタン 〜カムコ シャンブレーシャツ〜
子どもが生まれる前だったからあれは、6年前の夏頃だったか。
その店にはTシャツを買いに行ったのに、目に留まったのは一着のシャンブレーシャツ。
「このシャツはね、このブランドが毎年出してるやつなんだけどいつも少しずつ仕様が違って。このシャツは去年のモデルだからボタンダウンで今年はもうないデザインなんです。」
お店の人が嬉しげな表情で得意げに教えてくれる。
天邪鬼気味な僕はそういう話に滅法弱かった。
コレとはそれからの付き合い。
何度かボタンがほつれて、自分で縫い直しもした。袖丈が長くて補修店で袖詰めもした。
その後子どもが生まれてからは、着てすぐに洗濯出来る洋服が優先度合いが高くなったけれどコレはそんなニーズにピッタリだった。
買って5年後の去年、いつだったか覚えて無いけれど、気づくと胸ポケットのボタンが外れていた。
また縫い直そう。その時はそう思った。
でも、なんだろう。
なんとなくボタンが無い方が小物を突っ込みやすい。
それにポケット自体が少しヨれて今のしがない自分には似合っている。
しばらく、このままにしておこう。
機能性とかお洒落さが洋服には求められる世の中だろうけどステイホームも相まってなんだか前よりこの少しくたびれたシャツが、愛おしい。