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New FD 70-210mm F4で夏を見てみる

すっかり季節も夏になり、写真なんて撮ってられないよというくらいの暑さになってきました。
そんな中なのですが、ヤフオクにて面白そうなレンズを見つけたので入札してみたところ1円落札しましたのでスナップがてら持ち出してみました。
1円落札にも関わらずご丁寧に取引して頂いた出品者の方には感謝です。

それがこちらのCanon New FD 70-210mm F4になります。

New FD 70-210mm F4とK&F Concept製マウントアダプター/フィルターの組み合わせ

スペック

発売年は1980年とのことですので、もう40年選手なレンズになります。
いわゆる直進ズームなタイプのMFレンズです。
開放F値は4通しになりますので、一応小三元枠ではあります。
最短撮影距離は1.2m(全域?)、70mm時のみマクロ機能があります。
フィルター枠が58mmであまりソニー、ニコンで見ない径でしたので、フィルターは新規で買いました。
重量が705gありますので、そこそこ重いレンズとはなります。それ相応に長いので、見た目以上に重い感じはありませんが、それでも取り回しに優れているとは流石に言えないですね。
キヤノンカメラミュージアムより

手に入れるにあたった経緯&状態

そもそもなんでこのレンズを落札したのかについてですが、以前レンズを大整理した際にちょうどこの望遠域のレンズがなくなってしまい、普段使わないにしろないと困るということで安ズームを探していたところでした。
「正直現代レンズよりは劣ってて当たり前だから、まぁ使えなくもないくらいのレンズないかなぁ…」と思いヤフオクで商品を探し型番でネット検索を反復横跳びする日々を過ごす中、とある方のブログにてこちらのレンズの話をされており、認知するにあたったわけになります。
私はネット記事や作例も参考にはする一方、実際手にとってみて気に入らなかったら最終的にまた放流してしまうタイプなので、今回も損切りが痛くない価格なら試してみるかとなりました。
そこにちょうど美品が1円スタート。まぁこれもなにかの縁でしょうと入札。今更この時代のズームレンズなんて買うのはもの好きだけでしょうから、全然競うこともなく落札まであれよあれよと行ってしまいました。
余談ですがレンズの送料が1200円、マウントアダプターが中古で1300円+送料550円、フィルターが1500円、レンズキャップが400円かかっていますのでレンズ本体以外の諸経費が高すぎますね。

そんなこのレンズですが、状態は実際十分にいい状態で届きました。(超絶ごく僅かなカビ予備軍がいないでもないですが、フチですしわざわざ1円落札にケチつけるのも違うのでカビが増える前に使い潰しておくことにしました)
出品者の方いわくごく僅かなクモリありとのことなのですが、まぁわからんレベルですね。実用には何ら影響なさそうです。

今回始めてK&F Conceptのフィルターを使ってみましたが、普通って感じで良かったです。


レンズ内の状態はそこそこ良好でした。

作例

まずは撮って出しの写真から並べていこうと思います。使用機材はSONY α7ii、クリエイティブスタイルはディープです。WBはオートを使用しています。
今回EXIFに撮影データが記録されないため、焦点距離を中間域などと書いている写真がありますがお許しください。

橋の上に放置された缶コーヒー(中間域 F4 ISO400)

まずは中間域の開放の作例です。意外とWEBの画面上なんかで見ると悪くないように思えます。開放ですしもっとぽやぽやしててもいいのに、意外とスッキリ写ってくれました。ボケも微ボケ領域(左端)はすこしうるさいように思えますが、ある程度距離があると素直にボケてくれています。ボケに輪郭や色づきもなく、昔のレンズ特有の収差補正でボケが犠牲になっている雰囲気もありません。意外と巷の評価があっている面はあるのかもしれません。

ピント面はそれなりによく写っている

拡大してみるとこんな感じ。意外と良い写りするもんだな…
もちろん柵の端とかに軸上色収差出てたり、コントラストがちょっとおとなしい感じはしますが、オールドレンズ特有のじゃじゃ馬感とかはなく、普通によく写っていますね。ハイライトが滲んだり飛んだりする感じもない、ようやってる。

運動公園の証明と空(広角寄り F4 ISO100)

次は広角寄りで絞り開放のカット。発色やコントラストはやはり控えめで地味ですね。焦点距離が近いシグマ70mm F2.8 DG Macroも持っているのですが、そちらの方がもうちょい色が出る気がします。撮っている感覚としては後ボケの方が収差的に柔らかく、前景のボケは少しだけ硬い気もします。しかし、全然現代レンズでもよくある範囲なことに加えて、レンズ全体の雰囲気として多少柔らかいので、いい感じに有耶無耶にされていると思います。

照明部分の拡大、これ微妙にピントピーク外してます

拡大してみると若干のフリンジが目立ちます。それとは別に微妙にピンずれしている気もしますが…
ただ、これも中間域同様そこそこ「使える」かなと行った印象です

葉っぱ(210mm F4 ISO100)

次は望遠端での撮影です。とは言ってもやはり望遠ズームの宿命、望遠側がゆるくなる現象は拭いきれていません。コントラストが低くあまりスッキリしない写真になってしまいました。それでも縮小サイズならまだ耐える画質ではあります(露出はミスりましたね…)。光量落ちも広角側や中間域に比べて強く、補正は必須かもしれません。

中央部の拡大、やはり甘い

拡大してみると…やっぱり甘いなあ…という感想。まぁ現代レンズでも望遠端はゆるいことがよくある(E 55-210mm F4.5-6.3とかもそうだし)ので、まぁそりゃそうだよなってレベル。コントラスト、彩度も弱いし、あまり解像もしてないですね。

柵に止まったハト(210mm F4 ISO3200)

めちゃくちゃ設定をミスったのですが参考までにもう一枚です。(SS1/4000にしてもた)
まぁ…1枚目と変わらない印象ですね。

ここまでずっと開放の作例しかないやんと思った方もおられると思いますが、普通にマウントアダプターの操作ミスってて絞りがずっと開放だっただけですね。FDマウントって本来撮影時のみ絞りが動くレンズなので、マウントアダプターは強制的に絞り羽根連動ピンを固定するのですが、それができていませんでした…

このようにマウントアダプターにダイアルがあり、これをLOCK側に回さないと絞りが動きません。

望遠端も流石にF8まで絞れば改善はしたのでご報告だけしておきます。

そしてこのレンズには70mmでのマクロ機能があります。それを使って撮影したのがこちらの作例(ここからはLightroomでの現像済み写真です)

逆光耐性を調べるためにも太陽を画角に入れての花
(70mmマクロ最短撮影距離 F4 ISO100)
Lightroom現像済み

どうでしょうか、意外とおまけマクロにしては奮闘していますよね。太陽が画角内にあり、完全逆光のかなり厳しい状態ですが、なんとか耐えてくれました。
ゴーストはバッチリ発生しているものの、円形のゴーストなのでまだ見栄えが悪くないのも良いポイントです。まぁ出なければそれに超したことは無いですが…
一応Lightroomでかすみの除去はかけているので、撮って出しだともう少しフレアっぽいですが、ハイライトがそこまで飛んだり漏れたりしないので、結構復元が容易で驚きました。マジで「オールドレンズ感」が弱くて実用的です。写りの悪さをエモいと思うのは分からんでもないですが、収差的にクセが強すぎるレンズはあまり好きではないので、このくらいに留めてくれるのが好印象です。
総じて逆光耐性は「この時代のレンズにしては」良好な気がします。それでもコントラストの低下など、現代レンズよりも劣っているのは忘れてはいけません。
(正直シグマ 70mm F2.8 DG Macro持ってると次元の差を感じる)

たなびく雑草(70mmマクロ F4 ISO100)
Lightroom現像済み

このレンズ、割と後ボケの方が柔らかい印象があり、それも自分としては好印象です。この焦点領域だと前ボケも入れることはあるので、人によって好みはありそうですが、ズームレンズであまり破綻していないのは褒められる点です。
けしてとろけるようなボケではありませんが、球面収差の過剰補正で出がちなボケの縁どりもなく、F4と望遠域ということも相まって十分にボケを作品に組み込めそうな気がします。

気になった点

とまぁここまで結構好意的な書き方をしたのですが、仕方ないとはいえ気になる点もありました。

まず1つ目が望遠側の画質低下
これは仕方が無さすぎますが、全域で開放から使える!なんてのはありません。というかどの距離にしても1,2段絞ってあげるのが正解です。開放でも意外と悪くないってのと、開放からピーク性能ってのは違いますから。果たしてその写真にボケや高速SSが必要なのかは考えないといけません。明るいレンズを手にすると、人は開放病にかかりがちですからね。

2つ目がマクロモードの使い勝手
絵は悪くないんですが、マクロモードの合照域がちょっと使いづらかったです。通常モードの最短撮影距離が120cmなのに対してマクロモードをつけると急に最「長」撮影距離が5,60cmになるみたいな挙動をするんですよね。自分の使い方としてその間のエリアを多用しがちだったせいで、帯に短し襷に長し状態が多発しました。こうなるとマクロモードと通常モードの境目あたりでフォーカスリングを止めるという用法が必要になります。仕方がないですが、専用のマクロレンズとは比べてはいけなさそうです。(もしくは背景や遠近感
が変わるのを承知で離れて望遠側にする)

70mmにするとマクロ領域までフォーカスリングを回すことができます。

3つ目は別に気にならないっちゃ気にならないのですが、オーバーインフが確定で出るレンズになります。
雲みたいな見づらく無限遠付近の被写体のピント合わせは少し気を使いました。

距離指標のところ、∞がLってなっています。

操作性云々に関しては割愛します。そりゃ直進ズームなので慣れないと使いずらいですし、ズームの自重落下もしますし、経年でヘリコイドが緩めではありましたが分かってて使っている部分があるので、減点ポイントにはなりません。

まとめ

正直現代レンズに比べたら劣りますし、正直感動する所まではいきませんでした(予想の域は超えてこなかった)。あくまでもオールドレンズなのに及第点が出るシーンがあって凄いと言った感じです。「これが1201円(うち1200円送料)で手に入ったとしたらそれはお得ですわ」ってだけですね。
僕としてはそういう意味で「使える」安望遠ズームが欲しかったということなのでアタリでした。

この時代のズームレンズというと、単玉と違ってオールドレンズとして使うにしても性能が足りなさすぎる印象があるのですが、まだ実用に耐えうるシーンがあるというのは凄いことです。

こういうレンズを発掘できると機材を楽しむ身としては楽しいですね。なかなか熱くて外に出る気が起きませんが、今後も定期的に写真を撮っていきたいと思います。

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