SDGsと農業遺産とSATOYAMAの関係
畑仕事、はじまりました。土いじりの季節ですねー。
せたがや体験農園、今年も楽しく野菜つくり。初日は畝づくりでした。
2年前の記事だけど、書き直してシェア。
#SDGsと農業遺産とSATOYAMA
#世界が認める村の宝
2021年は、日本に「世界農業遺産」が誕生して10年!
2011年に石川県・能登地域と新潟県・佐渡地域が初めての認定を受けました。
「世界農業遺産」とは、(GIAHS:通称ジアス)国連食糧農業機関(FAO)による地域伝統の持続可能な農業システムを評価する制度で、現在日本国内には11地域あり、FAOの基準に則って国が定めた「日本農業遺産」と合わせると、ぜんぶで30地域に上ります。
この「農業遺産」で最も特筆すべきは、SDGs17目標のすべてに貢献するということ点です。
「SDGs」を国連が提唱するに至った背景には、世界的な科学者グループによる「プラネタリーバウンダリー(人間の活動が【地球の限界】を超えつつある)」という概念が元になっています。
地球の危機的状況の解決手段として生まれたのが「SDGs」であり、同じ文脈で自然共生社会へ取り組む先駆けとしてFAOが提唱したのが、「世界農業遺産」なのです。
よって、SDGsと世界農業遺産は、地球を持続可能にする(サステイナブル)開発・発展に向けて目指すゴールが同じなのです。
先頃開かれた認証式で、専門家会議委員長で、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長の武内和彦教授は、
「自然資本の健全性はSDGs達成の基礎であり、国連では、家族農業の振興や生態系の回復(エコシステム)を掲げている」と講演しました。
小さく多様な農業があちこちに分散してあることが、実は大規模一極集中よりもリスクに強い=レジリエント(回復力があって強い)というわけです。
世界的な環境学者である武内委員長は、2010年に開かれたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)で、日本における自然共生型モデルを「SATOYAMA」として国際社会に広めたことでも知られています。
日本農業遺産や里地里山に注目が集まれば、伝統的な農業や美しい景観が評価され、農村にやる気が生まれ、経済や地域の活性化につながります。
ところで、今年認定された7地域のうち、特に時代を感じたのは、兵庫県・南あわじの水稲・玉ねぎ・畜産システムと、宮崎県・田野清武地域の干し野菜システム(名称略)で、どちらも「耕畜連携」が農業システムに含まれています。
一見、厄介者とされがちな牛の糞は土壌にとっては重要な堆肥の原料です。地域と連携して生かせば、土壌劣化を防ぎ、環境にも生産にも貢献できるのです。これは国の畜産の未来を考える上でも重要なのではないでしょうか。
農業遺産はどれも生産性、大規模、新技術の真逆にありますが、地域の個性が輝き、継承者が誇りを持っています。実はこれが一番の宝で、農泊、観光、商品開発、教育や人材育成に繋がっています。
プレイヤーが楽しそうに取り組む地域には、人を呼び込む力があります。イノベーション、新技術も結構ですが、喫緊の課題として、いま、農村に必要なのは、耕す人のやる気、郷土への愛着や誇りではないでしょうか。生産性の前に必要なのは、そもそもの営農意欲です。
循環型の里山ライフスタイルは、自然資本を基盤とするSDGsの理念に合致します。多様で分散した小さな農業は、大規模一極集中よりもリスクを低く抑えることができ、リスク共生時代に重要かつ有効な食料生産の仕組みになる、それが農業遺産だというわけです。
ただ同時に筆者が付け加えておきたいのは、農業遺産はあくまで学術的見地に基づいた基準を設けたうえでの評価です。誰が評価しようがしまいが、その地に耕す人と家族がいる限り、そのむらは国の宝だということです。
・世界農業遺産=Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS*通称:ジアス)
・現在日本国内には13地域