雨の中、古都へ
新幹線に乗ってすぐに、カメラを忘れたことに気づいた。そして御朱印帳も忘れた。
どちらも私の一人旅には欠かせない大切な持ち物だ。
残念ながらこれから向かうのは会議であって、決して一人旅にでたわけではない。それでも1年以上ぶりにどうしても訪れたい場所があった。
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会議を終え、お昼も食べずに電車に乗った。
改札を抜けると、約1年ぶりの京都タワーを見上げる。
うんうん、何も変わってない。
本当に久しぶりにこの場所に帰ってきた。
私にとってこの町は幾つかある『帰る場所』の一つで、
気づいている方もいるかもしれないが、私のアイコンも京都の町並みを撮ったものだ。
天気予報通り、あいにくの雨だった。
でも、こんな時のためにレインシューズを履いてきたので大丈夫。余談だが、足元が濡れる心配がないことは私をとても強くすることに、最近気づいた。
時間的に何ヵ所もは回れなさそうだったので、源光庵に行ってみることにした。この春まで工事で拝観できなかったので、中を見るのは初めてだ。
有名な『迷いの窓・悟りの窓』を実際に見られるとなると気持ちも高まる。
市バスに揺られること約50分。
随分遠くまで来たなぁと感じた頃に、目的のバス停に着いた。平日の夕方近くだったからか、降りたのは私だけ。降りてはみたものの周りは住宅も多く、本当にこんな所に?と思ってしまうような雰囲気だった。
入り口らしき門を見つける。
これまたしん、としていて本当にこの先に…?とドキドキしながら歩いていく。
しばらく石畳を進んだ先に、拝観受付の看板を見つけてホッとした。よかった。
拝観料を払うと、御朱印も受け付けていた。
あぁ、やっぱり御朱印帳も持ってくるべきだったなぁ。残念。
今度京都に行く時は最初に鞄に入れようと決意する。
そろそろと進むと、まず美しい庭が目に入った。
紅葉の時期に来たらたまらないだろうな、と思う。でも新緑の葉は青々として、これはこれで息を呑むほどに美しい。
カメラを忘れたことを心から後悔しながら、お目当ての窓の前にやってきた。
わぁ…。
吸い寄せられるように近づく。
なんとも不思議な空間だ。
きっとこの場所になら何時間でも居られる、と思った。先を急ぐわけでも、他に人が大勢いるわけでもないので、腰をかけてぼんやりと外を眺めて過ごしてみる。
とても静かだった。
かすかに聞こえる雨の音と、においがした。
なんだかもう、それだけでよかった。
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来た時と同じように、バスに揺られながら駅へ戻る。
何をしたわけではないのに、心がすごく満たされているのを感じていた。
行きとは違う、凛とした空気を纏っている。
…ような気がした。気がしただけかもしれない。
やっぱり私にはこういう時間が必要で、そしてそれはこの町でなければダメなんだと思う。
次に行けるのはいつになるか分からないけれど、必ずまた。出来れば近いうちに。
そのお気持ちだけで十分です…と言いたいところですが、ありがたく受け取らせていただいた暁にはnoteの記事に反映させられるような使い方をしたいと思います。