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古傷

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私はひどい男です。懺悔のつもりで綴りました。
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#過去

古傷 (3)

古傷 (3)

真由美からメールが来ないので、会社の昼休みに思い切ってこちらから教えられたメアドに送ってみた。
『今度の土曜日に会えないか?上条隆』
真由美はあの会社にずっと勤めていると言っていた。
お局なんて陰口をたたかれながら、勤めあげて来たのだろう。
真由美は会社では、メガネをかけた地味な存在で、男性社員からの誘いも皆無だったと記憶している。
そんな真由美とおれが接近したのは、入社二年目の忘年会だった。

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古傷 (2)

古傷 (2)

おれは、やましい心を持ちながら、家に帰ると、ガレージから車を出した。
施設に家内を迎えに行かねばならないのだ。
18時15分に小規模多機能ホーム「かざぐるま」に着いた。
夕食の時間らしく、テレビを見ながら利用者たちがテーブルについていた。
「こんばんは、上条です」
おれは、玄関で呼ばわった。
フロア主任の岡本礼子がおれをみとめて、家内に知らせる。
「須磨子さん、ご主人がお迎えにこられましたよ」

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古傷 (1)

古傷 (1)

会社の帰りに駅前のスーパーに寄った。
晩酌用の缶ビールでも買おうと思って、生鮮食品の前を通り過ぎたとき、見覚えのある顔に視線が釘付けになった。
女の方も、おれの顔を見て驚いた表情になった。
「真由美…」
小さくおれは呼びかけたが、彼女は踵(きびす)を返して立ち去ろうとした。
おれは、衝動的に彼女を追いかけ…といっても三歩ほど近づいてその肩に触れた。
「待ってくれ」
「やめて…」
「少し、話さないか

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