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カスタマーセールス 〜カスタマーサクセス強化の新たな方法論〜

「新規の顧客は順調に増加している。既存顧客にはカスタマーサクセスチームもしっかりサポートできている。じゃあ、大きく売上拡大をするとしたらどこに手を入れる?」

営業顧問をしていると、そんな相談を受けることがあります。

そんなとき、よくご紹介するのが「Customer Sales(カスタマーセールス)」というチームの設置です。

今回は「カスタマーセールス」という概念が、SaaSの売上拡大になぜ重要か、どうやって設置するのかについて、執筆することにしました。

あれ、カスタマーサクセスに営業機能もあったはず?

まず「カスタマーセールス」とは、既存顧客へのクロスセル・アップセル(・値下げの値戻し)に特化した専門のチームのことです。

そんなカスタマーセールスの必要性を説明するにあたり、前提となる存在である

・カスタマーサポート
・カスタマーサクセス

この2つを「カスタマーサクセス」の言葉の生みの親であるSalesforceや、カスタマーサポートやカスタマーサクセスで世界的に利用される製品であるZendeskの考えを参考に整理してみます。

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引用:Salesforce, How To Differentiate Customer Success vs. Customer Support
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引用:Zendesk, What is a customer success manager? responsibilities + job description

ざっくりと日本語で下記にまとめてみるとこんな感じですかね。

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© 2021 Shuhei Nomura All Right Reserved

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに、スピーディーに確実に回答をし、満足度をキープして解約を阻止する部署です。

ただ、日々問い合わせに対応するのがメインでは利益を生めず、構造上コストセンター化しやすいといえます。

そんな「カスタマーサポートがコストセンターになりがちな現実」を変えるために生み出された言葉が「カスタマーサクセス」でした。

この組織は、自社のサービスを導入してくれた顧客のゴールを達成するために、サービスの導入〜運用までを積極的にサポートするための部門です。
(言葉通りにカスタマーサクセスがサクセスできているかどうかは別として、、、)

カスタマーサクセスが営業を担うと期待された現実は?

このカスタマーサクセスで求められるのが既存顧客のゴール達成までの全てだとすると、ちょっと期待される領域が広すぎるんじゃないかなと感じています。

例えば、

・普段の問い合わせ対応(従来のカスタマサポート)
・導入時のサポート(オンボーディング)
・ゴール達成までのサービスの運用提案

もしそこに営業機能を追加して「他の商品のクロスセルなどをしてこい」となると、実際のところかなり困難ではないでしょうか。
(実際に下記のツイートしても同じような危機感をいだく方がCSの方も含めて多かったですね)

どういうことか、少し補足します。

理由1. 営業スキル的に難しい

大前提として、2021年末の時点で「サクセスもセールスもゴリゴリやってきました!!!」と言える人材は、なかなかいません。希少も希少な人材です。

つまり「カスタマーサクセスの多くはセールス経験者ではない」ということ。

経験のない中、新しい価値を持つサービスをクロスセルするためには、顧客内部での相手先が変わってくる場合があります。

例えば、人材評価システムを人事部に導入してもらっていたが、今後は会計システムを経理部に売る必要がある、などです。

つまり、先方社内で部門を横断して営業する必要があるということ。

・部門を横断する方法
・実際のアポどり
・事例の少ないエリアで商談を獲得していく

などなど、いわゆる営業活動をするのは営業経験のないカスタマーサクセスだと結構難しいと思います。実際のところ、営業担当だって難しいんだから...(本音の本音)。

理由2. 工数的に難しい

正直、多くの新興SaaSは品質や機能が足りていません。するとその分、カスタマーサクセスが、トラブル対応やアップグレード対応で人的にサポートする必要が出てきます。彼らはすんごく忙しいです。

しかし、多くのカスタマーサクセスは解約(チャーン)されないことが主要KPI。

とすると、とにかく今のプロダクトを使い込んでもらうことに、稼働時間の大部分を投下せざるを得ないのが実態だと思います。

そう考えると、カスタマーサクセスがここでさらに本格的な営業活動を必要とするクロスセルに手を出す余裕は...ありますでしょうか?

もし本気で実行するなら、カスタマーサクセスの一人一人が担当するクライアント数を減らすしかないと思います。ただ、人的リソースにそんなに余裕がある会社は少ないですよね。

じゃあ、営業チームが新規だけでなく既存も頑張ればいいじゃんという話なのか?

もちろん、できるのであれば「営業が既存も頑張る」で問題ありません。ただ私の経験上、これができる会社は少ないと思っています。

セールスチームは、既存顧客への営業が手薄になりやすいからです。

例えば、「○○社で、初めて受注」となったら盛り上がりますよね。しかしその後、クロスセルで同じ会社に2つめの商品が売れたとしても、1つ目ほどの評価にはなりにくいです。

実際に、初めての受注は難しいので、初受注を評価すること自体が間違いだとは思いません。

ただ、結果的に「新規やってなんぼ」という文化になりやすいことは事実です。

そのまま新規営業への偏重が続くと「売ったら終わり」を招きかねません。トラブルが起きた既存客に時間割かれるよりも、新しい「揉めていないお客さん」を探しにいくほうが楽だから、です。
(意外とあるあるなんです。)

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今こそ、既存顧客に向き合う営業部隊「カスタマーセールス」の設置ですぞ!

そこで、既存顧客だけを対応する営業部隊である「Customer Sales(カスタマーセールス)」が重要なのではないか、これが今回提唱したい話です。

アメリカでも、特にエンタープライズ向けでは既存営業のためのAccount Managerが存在しています。

引用:Blueprints for a SaaS Sales Organization
(著)Jacco van der Kooij, Fernando Pizarro, Winning by Design

このカスタマーセールスは基本他部署との兼任はせず、既存顧客のセールスのみに集中します。

・アップセルの交渉
・値下げの値戻し
・クロスセルの営業活動

のような典型的な営業活動はもちろん、初期は(前の営業担当の問題で)顧客との関係性が冷え切ってる可能性もあり、カスタマーサクセスと一緒に泥臭く関係性回復に走るなんてことも結構あります。

私も苦労しました、と語り出すと、一晩じゃすまないので、この話はまたどこかで。

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カスタマーセールスと、仰々しく名前をご紹介しましたが、実際のところはあくまで「既存顧客に特化した営業組織」です。

あえて新しい点をいえば、

・カスタマーサクセスチームと積極的なコミュニケーションを取ること
・クロスセル/アップセルに限らず、新規ビジネスの創出をすること

だと思います。

カスタマーサクセスは、これまで密に顧客とコミュニケーションをとってきているので、課題や長期でのゴールについて情報がある(はず)。

その情報をきちんと把握し、長期での成功を達成するために、新しい商品を提案していく存在が必要ですし、もしかするとクロスセル/アップセル以外の顧客との共創(新規ビジネスの創出)かもしれません。

実際に共感値の高いユーザーから、新しいビジネスの種をもらい、新プロダクトや新規事業にしてきた事例を多くみてきましたし、自分が今専念している新規事業も、この流れなんです。

そこまで提案して顧客のゴールを達成していくために動くのがカスタマーセールスです!

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では具体的にどのような仕事の進め方をするかについては、ちょっと今回では書ききれないので項目だけご紹介します。(今後、noteなどでシリーズでご紹介します!)

①なぜ売れてるかを改めて言語化する
②既存顧客の市場を把握して、クロスセル/アップセルの戦略をたてる
③新規契約の売り方にFBする
④事例ユーザーを作る
⑤共創型ユーザーを作る

じゃあ、全ての会社にカスタマーセールスが必要なのか?

もちろん全ての会社にカスタマーセールスが必要なわけだとは思っていません。

ではどういう組織にカスタマーセールスが必要かといえば、大きくは以下の2点を持つ組織かなと思っています。

①既存顧客数が営業1人で対応できないほどに増える
②クロスセル(やアップセル)の余地が大きくある

それぞれ、補足します。
※大前提として「会社、サービスごとに全然違う」ものです。ただ、みなさまの思考の踏み台になれればと思い、あえて無理矢理にでも基準を作ってみます。

①既存顧客数が営業1人で対応できないほどに増えている

カスタマーセールスが必要になるのは「既存顧客の数が、営業が一人で担当できるお客さんの2倍になったとき」が目安です。

例えば、とある○○社のA商品において、営業が担当しきれる顧客企業数が20社だとします。その場合「既存顧客が40社いたら、カスタマーセールス担当が必要になる」ということです。

営業が一人で担当しきれる顧客の数くらいだと、顧客の検討タイミングなどの問題で営業先リストがすぐに枯渇しかねないからです。

②クロスセル(やアップセル)の余地が大きくある

カスタマーセールスが動くべきクロスセル商品とは「現状のサービスの6割以上の単価の、売りたいクロスセル商品」です。(改めてですがこれも、無理矢理基準をつけるなら、です。目安です。)

売上・利益が薄いのであれば、わざわざ人を張り付ける必要がないですよね。それだったら高単価の新規を頑張った方がいいですよね。

※クロスセルする商品がなく、さらにはアップセルがカスタマーサクセスの活動量と比例する場合(例えば、従量課金などの使用量などと比例する場合)はカスタマーサクセスを増強するのが大事です。

では、カスタマーセールスの導入を検討したいが、何から始めるべきか?

まず前提として、

①既存顧客数が営業1人で対応できないほどに増える
②クロスセル(やアップセル)の余地が大きくある

という状態であれば、営業の中で「売れている」人をカスタマーセールスにしてみてください。

正直、売れていない人がいっても実績の出ない部門になるだけで、「効果出なかったね」となって終わります。

そもそも、新規と同じかそれ以上に数字が作れる状況にあるから始めるはず...ですよね。

だったら、そこに売れるかどうかわからない人を送るのはNGだと思いませんか?売れている人が、期待値の高いところでちゃんと売上を作る。それを成功例にする。

そのためにも、まずは営業の中で「売れている」人をカスタマーセールスに抜擢してみてください

次回は「何故売れているのかの言語化」

今回は比較的新しい概念である「Customer Sales(カスタマーセールス)」が必要な理由、そしてどういう組織が導入するべきかについてご紹介してみました。

途中で記載したように、カスタマーセールスが具体的にどのような仕事の進め方をするかについては、ちょっと今回では書ききれないので項目だけご紹介します。
(今後、カスタマーセールスシリーズとして、noteで書いていくのでフォローお願いします!)

①なぜ売れてるかを改めて言語化する
②既存顧客の市場を把握して、クロスセル/アップセルの戦略をたてる
③新規契約の売り方にFBする
④事例ユーザーを作る
⑤共創型ユーザーを作る

今後のやる気に大きく影響するので、シェアをしてもらえると本当に嬉しいです!
僕も積極的にRTするつもりです!

最後まで長文をお読みいただき、ありがとうございました!!!

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野村修平
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