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己を殺して他人を殺す

臨床心理学の第一人者である

河合隼雄さんの言葉です。


己を殺すとは
自分の欲望を押さえつけること

いつも周りの期待に応え
自分のことは後回し
どれだけひどい仕打ちにあっても
堪え忍ぶ健気な人

でも

押し殺した自分もまた
自分の一部なのだということを
忘れてはならない。


勉強会に参加してきたA子は
20代半ばのごく普通の
大人しい主婦という印象だった。

年の離れた夫と二人暮らし。
可もなく不可もなく平穏な日々だと
穏やかに笑いながら

一方で
彼の子供は絶対欲しくない!と
突然声を張り上げる一面もあった。

何度か勉強会に来ていたA子は
その後何の前触れもなく
夫の前から姿を消してしまった。

穏やかな空気を一転させる
突飛な行動を起こす人を
私は結構知っている。

彼女たちはみな
自分を殺して生きている。

近所に住む70代の主婦B子は
全てを酒乱の夫に管理されていた。
文句を言えばキレて暴れる。
だから従順な妻を演じるようになった。

自分さえ我慢すれば
全てが上手くいく
そんな幻想を抱いて…

3人の息子たちは
陰鬱な現実から逃避するように
我が家に入り浸った。


はたして

彼女は押さえ殺したはずの
自分の感情というゾンビに
復讐されることになる。

ほとばしる憎悪の塊は
もう誰にも受け止めることは出来ない。


ある日

寝ている夫の頭をめがけて

彼女は炊飯器を振り下ろした。

何度も何度も…


家族の為に
自分を必死に押し殺して生きてきた

それなのに

神様はなんて薄情なんだと叫びながら


その後
長男は無免許で事故を起こし
交通刑務所へ

末の一人娘は精神を壊し
夜な夜な知らない家の玄関先に
居座っては連れ戻されるという

あまりにも悲しい
家族の末路を私は見た。



己を殺してはいけない



己を生かしてこそ

人は人に優しくなれるし
その優しさを持って

他人も
生かすことになるのだから…

















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