アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第36回配信 チッパイエリス
エリスがキスを求めている。
どうすればいいのか?
もし、キスをすれば、それはもう、付き合ってるということだ。
ついにエリスが、僕の彼女になる。
夢にまで見たハッピーエンド!
でも……
本当にいいんだろうか?
幸せにする自信がないくせに、勢いでキスをして、エリスを彼女にしてしまっても。
それは、自分の決意したこととちがう。
ついさっき、ご両親に向かって立派に「宣言」したのとは、真逆の結果になってしまう。
あの優しいお父さんとお母さんに嘘をつき、隠れてコソコソと、娘に手をつけることになるのだ。
僕はそういう人間になりたいか?
そういう人間が、エリスにふさわしいか?
僕は手で、自分の口を塞いだ。
「まあだだよ」
塞いだまましゃべったので、ふざけているみたいな変な声になった。
「エリス。キスはやめておこう。それは、お父さんとお母さんに堂々と交際宣言できるようになるまで、とっておくよ」
「ユメオ……」
エリスの息が、顔にかかった。
「私だって、ずっと好きだったんだからね」
「ありがとう。嬉しいよ」
「好きすぎて、どうかなっちゃいそうなの」
「ホントに?」
「ユメオだけだからね。こんなこと、ユメオ以外の誰にも、絶対しないから」
「僕も」
「約束よ。でも、男の人って、浮気するんでしょ?」
「僕はしないよ」
「絶対?」
「だって、エリス以外の人を好きになったことなんて、1回もないもん」
エリスが覆い被さってきた。
頬と頬がくっつく。
エリスの囁きが、耳をくすぐる。
「1回だけ、キスする?」
「したいけど、やめよう」
「1回だけ」
「ゴメンね。まだしないって決めたんだ」
「どうして? そこまでは好きじゃないってこと?」
「ちがうよ。最高に好きだからさ」
僕は自分の気持ちを、正直に言った。
「今、エリスのほっぺが、くっついてるよね?」
「うん」
「それだけで、気持ちいいんだ」
「感触が?」
「うん。そして、胸の触れている感触もする」
「嘘っ! 私ちっちゃいもん」
「小さくても、わかる」
「恥ずかしい」
エリスの照れた声は、僕をゾクゾクさせた。
「そういうのはチッパイといって、好む男子が大勢いるそうだ。まあ、僕は、どっちでもいいけど」
「バカ」
「それはともかく、こうやってくっついてると、すごく危ない。頭ではエリスのことを、大事にしたいと思ってるのに、それとは反対のことをしてしまいそうになるんだ」
「反対のことって?」
「つまり、頭じゃなくって、下半身の命令を聞いてしまいそうになる」
「………」
「軽くキスをして終われればいいけど、たぶん僕、それじゃすまなくなると思う」
「そう?」
「タコみたいに、エリスの口を吸っちゃうと思う」
「やだ」
「そうすると下半身が命令するんだ。チッパイを揉んじまえって」
「変態」
「いや、たぶんそうなる。それはマジでお父さんとお母さんに申し訳ない。まだ高校生の娘のチッパイを揉まれる親の気持ちを考えたら、そんな残酷なこと、僕にはとてもできない」
「……私の胸、ディスってる?」
エリスが身体を起こして、チッパイを両手で触った。
「こんなの揉みたくなる? ホントに全然ないよ」
「下半身の考えることはよくわからない。でも揉んだらもうアウトだ。その次は、パンツを見ようとするだろう。いや、だろうじゃなくて、見る」
「やっぱり。変なことばっかり考えてる。パパと一緒ね」
「それに負けたくないんだ。エリスを大切にしたい。世の中には、簡単にそういうことをしちゃうやつらがたくさんいるけど、僕はそれはまちがってると思う。相手のことが大切であればあるほど、そうしちゃいけないんだ」
「ユメオ」
エリスがようやく、チッパイから手を離した。
「私、ユメオだけだからね」
「ありがとう」
「ユメオが私を彼女にしてくれるのが、例え10年後でも20年後でも、そのあいだ絶対誰ともキスしないし、絶対誰も好きにならないからね」
「そんなに待たせないよ」
「ユメオだけよ。モノマネだって、ユメオの前以外では絶対やらない」
「さっきは面白かったよ」
「エドはるみさんの顔なんて、ユメオ以外には絶対見せないからね。本当よ」
「信じるよ」
「だからユメオも、私以外には、HGを見せないでね」
「約束する」
「ダメよ。誰かれ構わず、バッチコイなんてやったら」
「しないさ」
「あれ、もう1回やってくれる?」
「HG? 見たい?」
「うん!」
僕はベッドに立ち上がり、全力で腰を振った。
「オッケーイ! 見てくださーい! 下半身中心に見てくださいよー!」
そして今度は、腰の動きをスローモーションにし、
「ゆっくりに見えますか? ちがいますよー。余りにも動きが速すぎて、逆にゆっくりに見えるんですよー。どうですかー、お嬢さん」
さらにそこからブリッジをし、
「ワワワッショーイ!!」
手を股間にあてがって、上にひょーんと伸ばした。
「フォフォフォフォーーー!!!」
「ユメオ、もういいわ」
エリスがどことなく、そっけなく聞こえる声で言った。
僕はモノマネをやめて、ベッドに坐った。
「どうだった、HG?」
するとエリスはベッドから立って、パソコンの前の椅子に坐った。
「ねえ、ユメオ、こういう言葉知ってる? 百年の恋も冷めるっていうの」
「なにそれ? 知らない。どういう意味?」
「HGをリアルにやりすぎると、女の子は引いちゃうってことよ。勉強して」
僕は、突然エリスとの距離が100メートルも広がったように感じ、HGなんか2度と観てやるかと決心した。
あらすじ(第1〜3回配信のリンク有り)
第35回配信 女の子に向かって好きと言うこと
第37回配信 男と女の好きなところ