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キャリアダウン どうやら私、退職する。

今日の空、えげつないくらい綺麗やな。

今、たぬきちがかけているメガネはレンズに少しベージュのカラーを入れている。

レーシックを受けたわけではないが、いつでも陽光が眩しい。サングラスが似合う顔でもなし、ややカラーが入るだけで随分眩しさが軽減された。

そして、何より光量が落ちた景色は、絞りを絞ったカメラのファインダー越しの景色に似ている。

マニュアルカメラで風景を撮影していた学生時代のように、見事な秋晴れに心が掴まれていた。

雨振りの木曜日に、上司に退職を表明した。そこから数日続いた秋雨のように、たぬきちの周囲も雨模様が続く。

上長に報告する前に、さらに上の上司がたぬきちの退職を把握していることに上長が気を悪くした。

たしかに順番を間違えているので反省する。

上長からは新人でもできるようにマニュアルを作っておくようとの指示があった。新人でもできる仕事だという評価かと再認識した週末。

転職エージェントとの電話面談をした火曜日。そもそも働く時間を短くし、在宅で勤務したいたぬきちの希望は、転職にそぐわない。

転職エージェントは、電話越しに申し訳なさそうに、「たぬきち様のご要望だと、パートタイムや契約社員という働き方になり、ご紹介できる企業がない可能性があります」と言っていた。

正直言うと、それは想定内であった。

「そうですよね。色んな可能性を考えて検討したくて」と、こちらも申し訳なさそうに伝えた。

転職エージェントサイトに登録して、転職する人は皆、キャリアアップを求めている。

そもそも、会社も社員はフルタイムで働き、パートタイマーや派遣社員に補助的な働き方を求める(業務については社員同等、それ以上求める会社も多いだろうが)。

需要と供給の関係。

フルタイムで働けない人を社員にしたい企業は無い。

きっと、日本には。

子育てしながら働く人は多い。でも、やっぱり、フルタイムで、フルスロットルで全力で働くのは正直、絶対、大変だ。

それでも、フルタイムで働けない人は社員には必要ない。

転職エージェントは続ける。「ある程度フルタイムで働いて、実績があれば、時短や在宅もできるようになる企業もあります」と。

そらそうだ。

そらそうだ?そらそうかな?

自意識過剰を承知で言うが、社会人として長く働いてきた。色々な人と出会ってきた。基礎的な社会人能力はあり、それなりに考える能力もある。

そんな人材が短時間勤務でも社内のメンバーにいれば、とても良い力になると思うのだが。違うのだろうか?

「いや、だからそういう方はパートや派遣でお願いしていますよ」

それが、日本での働き方。

たぬきちは、そこを否定したい訳では無い。ただ、なんだか勿体ないな。そう思っただけ。

パートタイムや業務委託を視野に、次の働き方を模索したいと思う。

上長からは、すっかり「もう退社する人」という扱いになったことを感じるが、能天気にもたぬきちの心は晴れていた。

さて、次は何ができるかな。

40超えた子持ちのおばさんでも案外、面白い可能性が出てくるんじゃなかろうか。

そう思ったえげついほど美しい秋晴れの水曜日。

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