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障がい者就労において「ウエルフェアトレード」の意義とは ー就労支援フォーラムNIPPON2024参加レポートー

2024年12月13日、14日と東京ビッグサイトにて日本財団が主催する年1回の福祉のイベントに参加しました。 そこで、提起された「ウェルフェアトレード」の意義について、日々感じている私なりの所感も交えて共有させていただきます。

「ウエルフェアトレード」とは

フェアトレード(fair trade)は発展途上国の生産者や労働者が不当に買い叩かれることなく、適正に価値を評価し持続的な貿易を行うことを目指すもので、現在、多くのグローバルな企業がフェアトレードを掲げています。 この考えを福祉事業に当てはめたものが「ウエルフェアトレード」(walfare+fairを併せた言葉)です。

就労支援フォーラムNIPPON2024とは

2014年に障がい者就労の現状共有と課題提起を目的に開始されました。今年度は「再起動」をコンセプトに、「就労施設の工賃は安い」という思い込みを乗り越えるべく意欲的な取り組み発表や就労支援の在り方についてのパネルディスカッションがありました。福祉事業所から一般企業まで1,000名を超える参加がありました(主催者発表)。私自身は地元農家との連携をテーマにポスター発表とスクリーン上での案件紹介をさせていただきました。

就労支援フォーラムの会場での案件紹介

就労支援事業B型の現状課題

就労継続支援事業B型における平均工賃月額は宮城県平均で18,169円(令和4年度)と未だ低い水準にあります。自立した生活ができるように工賃を引き上げることが事業者の大きな役割の1つです。例えば、宮城県の必要生活費が月額106,658円という試算があります。障害年金支給額(2級の場合)が66,250円と宮城県の平均工賃では不足してしまいます。

最低生活費とモデル工賃

工賃向上に必要な人材開発とジョブ開発

一般的に就労継続支援B型事業では、事業所の利用者が生産活動を行うことで得られた利益を「工賃」として分配しています。一方、事業所の運営や支援する職員の人件費などは行政からの給付金によって運営されます。工賃の原資となる利益を上げるためには、商品・サービスの品質を高め、お客様となる消費者や企業に評価していただく必要があります。そのため、私たち就労支援事業者は一人ひとりの生産活動の質を高める訓練を通じて「人材開発」を行うとともに一人ひとりの特性(持ち味)を活かせる仕事のラインナップを増やす「ジョブ開発」を行っています。

就労継続支援B型事業のビジネスモデル

営業活動で感じる壁

私は各事業所でのジョブ開発を進めるため、日々、企業への営業活動を行っています。そこで感じるのは「福祉施設で製造する商品は安い!」というイメージが蔓延していることです。

例えば、作業の受託を提案をする際、よく企業のご責任者様から「そちらではいくらでお願いできますか?」と尋ねられます。私はすかさず「貴社ではアルバイトを雇っていると思います。それを基準にして同じ時間で同じ品質の作業ができるのであれば、同じ金額をいただけませんか?」とお答えしますが、大抵は驚かれます。続けて「貴社が直接アルバイトを雇用した場合、品質管理、欠員の補充や労災などの対応も必要となります。その役割を当事業所や職員が担うのですから、同じ金額であればむしろメリットがあるのではないでしょうか」とウエルフェアトレードの考えを説明しています。少しずつですが納得いただける取引先も出てきました。

一方、ウエルフェアトレードでは、私たちが「お情け」ではなく、お金を払いたくなるような「顧客価値」を提供することを求めています。顧客のニーズを掴み、高い品質と価値を伝える努力を積み重ねることが工賃の向上に繋がると私は信じています。

自らの営業活動なしにウエルフェアトレードの実現はない

私自身はキャリアの中で営業活動や企業の営業強化支援を多く経験してきました。営業は自分たちの価値を伝えるやりがいのある仕事です。就労支援事業所においては利用者のみなさんの活動の価値を伝え、正しく評価いただくために経営者が足を使い、知恵を絞る。今回のフォーラムで多くの方の話を伺い、自らの営業活動なしにウエルフェアトレードの実現はないと再認識しました。そして、営業活動は理事長の仕事の中で最も重要かつ楽しい時間のひとつです!

就労支援フォーラムのポスター発表会場
(右は大きな刺激を与えてくださった、一社)ありがとうショップの代表理事 砂長さん)


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