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冬のにおい
今日、外に出たら冬のにおいがした。
秋から冬にかけて世界が動き始めている。
いや、むしろ止まり始めているのかも。
おやすみを言った多くの生命が、この世界を緩慢とさせる。
徐々にいきいきとしたにおいが消えてゆく。
空気が澄んで、透明な景色が広がる。
昔から冬のにおいが好きだ。
なにものでもない自分を感じることができる。
深夜、外に出るとまるで時間が止まっているかのようだ。
普段動くのは嫌いだが、そのときに限っては缶コーヒー片手に白い息を吐きながら月明かりだけを頼りに夜道を散歩したくなる。
これから少しずつ冬になり、やがて春が来るその日まで、私の楽しみがひとつ増える。