日本を原(たず)ねて 心の健康 ストレス解消 [岡倉天心]
6岡倉天心 (1863~1913)
岡倉天心「茶の本」を読む 若松英輔著 毎日新聞2014年1月19日 中島岳志評
天心にとって「茶」は単なる褐色の飲料ではない。…静かに茶を飲むことで…全身が宇宙に包まれる。…傍(かたわ)らには何気ない茶器や一輪の花が添えられる。その美は我々に働きかけ神の遍在を伝える。私たちは自己がその一部をなしていることに静謐(せいひつ)の中で気ずく。
宇宙に包まれる、自然と一体になり、日本古来からの生活感情をあらわしている。
茶の本 岡倉天心著 立木智子訳 淡交社
第一章 人間性の一碗 [解説]
「茶の本」には二つの大きなテーマが秘められていると思う。まず第一のテーマとは…
茶の心に表現される、東洋の精神性であるという主張である。そしてその茶の心とは日常生活の些細な事柄に美を見出し、それを礼賛することであり、雄大な自然宇宙に存在する自己はほんの一部であり、ちっぽけであることを認めながら、自然の美、簡素の美を慈しみ、自然との調和をもとめることである。 10ページ
自己は、宇宙の一部であり、自然との調和、日本古来からの生活感情をあらわしている。
第三章 道教と禅 [解説]
天心にとって道教の教えが何であるかを、彼自身、次のようにうまくまとめている。「人間は自然の単なる一部にしかすぎず、自然は人間を超越することができる偉大なものであるいう認識。」
50ページ
よって、日本古来からの生活感情をあらわしている。
第六章 花 [解説]
ここでは天心はまさしくお花の心について我々に語りかけているようである。…特に、日本の生け花には、それらの日本人の美意識が顕著に表われている。…花をいける人は天地宇宙間に生存し、同時に扱われる草木花果も同じく天地宇宙間に生存するという。〝お花の心″である。 112ページ
この心は、日本古来からの生活感情をあらわしている。
第七章 真の茶人とは [解説]
簡素の中に宇宙の壮大なリズムとの調和を求めること、それが狭義の茶人ではなく、広い意味での茶人であると考えていた。天心自身広義の茶人であったのではないか。そして彼は宇宙の壮大なリズムとの調和を求めながら、この世を去ったのである。 134ページ
宇宙の壮大なリズムとの調和、このことは、日本古来からの生活感情をあらわしている。
NHKこころをよむ 岡倉天心を語る 大岡信 NHK出版
ボストンでの天心。岡倉という人物は、お茶も生け花も皆「芸術成就の一部」だと教えているのです。「生活」と「芸術」という、普通は別々に考えられているこの二つの分野が一体化しているのが日本美術の精髄である。 147ページ
「茶の本」執筆の背景。ボストン美術館における女性たちへの講話の延長線上にこの本があるのです。彼はおそらく、彼女たちにいつも話していた茶や生け花をも含めて、日本の生活と芸術の一体化したいくつもの大事な芸術的所産に対して説明したことでしょう。その結果出来上がった「茶の本」。…この「茶の本」はそういう意味で芸術論でもありましたし、日本人の人生論でもありました。 148ページ
生活と芸術の一体化(文化)は日本古来からの生活感情をあらわしている。
道教と日本文化 福永光司著 人文書院
「茶道は変装した道教であった」と喝破して…「自然は人間以上のものであり、人は自然の一部にすぎない」ことを自覚して「自然の中に生きんと」する茶の道と結びつける岡倉は、さらにこれを「禅宗は老子の影響による」と喝破する。 177ページ
「自然の中に生きんと」する、このことは日本古来からの生活感情をあらわしている。
岡倉天心「茶の本」を読む 若松英輔著 岩波書店
美を感じることそれ自体が「神聖」なる出来事であり、自己超えることとなる。また永遠をかいま見ることでもある。そのとき人は個として存在すると共に、世界の一部になっていることを感じる。 65ページ
「茶道」とは、人の生きる道であって、かならずしも茶を点てることを条件としない。
107ページ
天心もまた、市井の生活にこそ美は、自由に開花することを知っている。美をとらえる天心の目は、いわゆる芸術家たちにだけ注がれていたのではない。…茶室を飾るのは野花である。茶道で用いる道具は、すべて素朴なものである。あるがままを茶道は重んじる。
129ページ
自然の中に生きんとする。自然の一部 無為自然 以上のように日本古来からの生活感情を現わしている。
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