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「侍タイムスリッパー」に見たヒットの条件

「侍タイムスリッパー」を観てきました!
あちこちで語られているように、語りたくなる映画です。
先人や古典へのリスペクトとさまざまなオマージュ。
あらゆる担当に安田監督の名前があって驚かされます。

映画通ではありませんが、数年前に報道機関の文化部で時代劇を少し取材していた時期があったので、少し語りたくなってしまいました。

時代劇の衰退とオワコン説、そしてそれを塗り替えるような挑戦的な時代劇の潮流は、当時からすでに顕在化していました。

ただそれらはやはり、作品や製作主体のネームバリュー、有名俳優やワイヤーアクションや技術といったものがありきだったと思います。

それが無くてもヒットできたという奇跡。色々な意味で希望が持てる、うれしい現象ですよね。

さまざまな作品との関連が指摘されている中で、個人的にしきりと思い出された2作(映画じゃない)があります。

まず源孝志監督のドラマ「スローな武士にしてくれ」。切られ役専門の大部屋俳優(内野聖陽さん)が主人公という設定もそっくり。こちらは最新技術を駆使した実験的エンタメ時代劇で、最高になるべくして最高によくできたNHK渾身の快作です。

侍タイムスリッパーの場合、撮影技術的に注目されたのは殺陣のスローモーションくらい。白刃さばきの美しさをつぶさに魅せる手法は、「スロー」でNHKの技術力あってこそ実現したと思っていたけれど、今やそこまでの予算をかけなくてもできることが、今作でも証明されています。
(でも「スローな武士」は本当におすすめです。未見の方はぜひ!)

そしてもう一つが、ヤマザキマリさんのテルマエ・ロマエ。両作はタイムスリップ設定だけでなく、過去から来た人(古代ローマ人と会津藩士)が実に質実剛健という点も共通。それゆえ、現代人の軟派さとの対比が際立って笑わせてくれます。

「スロー」で描かれた切られ役の悲哀✖️
「テルマエ・ロマエ」的な古き良きサムライ魂

こうやって見ると、コンセプトとしては決して気を衒っているのでも、それほど先鋭的だったのでもなく、ヒットの条件は満たされていたかもしれませんね。

その上で、なんと言ってもバズりを生んだのは、主役の山口馬木也さんの演技と、ライバル役の冨家ノリマサさんとの殺陣だったのでしょう。このシーンだけでもスクリーンで見る価値があります。もちろんロケ地(滋賀県の油日神社)の良さもあり。

特殊技術を使わなくても、殺陣にすべてを凝縮させて、ここまで画面に惹きつけさせられる。
私たちが惹かれるものって案外、昔も今もそんなに変わらないのかもしれませんね。

(空下元さん、素敵なイラストを使わせていただきました。ありがとうございます!)

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