合わせて覚えたい組織学総論
組織学総論でおろそかにされがちな暗記事項と観察する上で意識するとはかどる情報をまとめました。補助教材程度にご活用ください。
組織学を始める
はじめに知っておくと勉強しやすくなる知識を最初に覚える。
大まかなサイズ感と染色ごとの特徴を覚えよう。
光学顕微鏡の分解能の限界は300nm程度(0.3μm)
細胞の大きさは20μm程度
多用される染色方法としてH-E染色が挙げられる。正式名称をヘマトキシリン‐エオジン染色という。ヘマトキシリンは塩基性の核やリボソームをよく青色に染色する。ヘマトキシリンは細胞質や赤血球、線維を赤く染色する。
ミトコンドリアはエオジンに染まるためエオジンによく染まり赤くなっている細胞はミトコンドリアが豊富にある場合がある。
その他の染色法
鍍銀法・・・結合組織である膠原線維と細網線維を染め出す
M-G染色・・・好塩基性物質(核の DNA,細胞質の RNA, アズール顆粒など)を青紫色に染める
メタクロマジー・・・色素本来の色とは異なる色に染色されること。この性質を持つのは主に
軟骨基質
肥満細胞
好塩基球
塩基好性細胞
が挙げられる。
細胞生物学の復習
細胞の構成
細胞Cell=原形質+細胞封入体
原形質protoplasm=細胞質+核
細胞質cytoplasm=核+細胞小器官
核nucleus=核膜+核質
核膜nuclear membrane=核膜+核質
核質nucleoplasm=染色質+核小体
細胞小器官(オルガネラ)cytoplasmic organelle
細胞質マトリックスcytoplasmid matrix
染色質chromatin
核小体nucleolus
細胞封入体cytoplasmic inclusion
細胞膜
繊毛と微絨毛 microviliは区別する必要がある。繊毛と微絨毛の直径の大きさは大きな違いはないが繊毛の長さは1-10ミクロン、微絨毛はおよそ0.1ミクロンである。
繊毛にはいくつかの種類がある。
motile cilia・・・むち打ち運動を行い水流を用いて物質輸送を行う。9+2構造
primary cilia・・・動かない。尿細管上皮に見られ水流を水流を受容する。9+0構造
nodal cilia・・・結節における回転運動を行う9+0構造
微絨毛・・・動かない。直径はおよそ250nm。吸収を行う。
不動毛 stereocilia・・・動かない。微絨毛の一種。内耳の有毛細胞に見られる
光学顕微鏡で観察しているのは繊毛であり微絨毛ではない。
物質輸送
エキソサイトーシス
エンドサイトーシス
細胞小器官(オルガネラ)
リボソーム・・・RNAを多く含むためヘマトキシリンに染まる。翻訳(タンパク質合成)が主に行われる。
遊離リボソーム・・・粗面小胞体の膜に付着していないリボソームのことである
エンドソーム
ライソゾーム
ミトコンドリア
粗面小胞体(rER)
ゴルジ装置
ペルオキシソーム
細胞骨格
アクチンフィラメント・・・6~8nm
中間径フィラメント・・・8~10nm
微小管・・・20~25nm。
細胞周期
G₁期
S期
G₂期
M期
G・・・gap
S・・・synthesis
M・・・mitosis
上皮細胞
細胞の中で最も頂端に位置する細胞でラミニンと4型コラーゲンを合成して分泌する。以下のように分類できる。
単層扁平上皮・・・肺胞上皮、血管内皮、中皮
単層立方上皮・・・尿細管上皮
単層円柱上皮・・・小腸上皮
多列上皮・・・気管支など。一部が管腔に達していない。
重層扁平上皮・・・表皮、口腔、食道
重層立方上皮
移行上皮・・・尿管、膀胱、尿道。バリア、保護、伸縮できる。
上皮における細胞間の接着装置
頂端から基底への順で次の接着が見られる。
タイトジャンクション・・・クローディンが接着分子である。ベルト状に細胞を囲む。バリア機能を担う。
アドヘレンスジャンクション・・・それぞれの細胞のカドヘリン同士が接着する(ホモフィリックな接着)。カテニン郡が細胞質でカドヘリンに結合する。ベルト状に細胞を囲む。
デスモソーム・・・デスモグレイン、デスモコリン、ケラチンによって接着する。ボタン上に点在する。物理的な細胞接着をケラチン線維(中間径フィラメント)と結合することで担う。デスモソームの結合が弱まり接着が壊れることによって、天疱瘡が起きる。重層扁平上皮など力のかかる組織に多い。
ギャップジャンクション・・・細胞同士をつなぐ小さいトンネルであり、細胞間コミュニケーションを担う。
ヘミデスモソーム・・・インテグリンによって接着する。ケラチン線維と連結する。重層扁平上皮など力のかかる組織に多い。基底膜と接着する。
focal contact・・・インテグリンによって接着する。アクチンフィラメントと連結する。
結合組織 Connective tissue
膠原線維が多い組織を密性結合組織、少ない組織を疎性結合組織と呼ぶ。
線維芽細胞 Fibroblasts
線維芽細胞は膠原線維や弾性線維などの真皮主成分のほとんど作っている。
脂肪細胞
脂肪細胞は組成計都合組織によって指示されている。
脂肪細胞=白色脂肪組織+褐色脂肪組織
白色脂肪組織
褐色脂肪組織・・・交感神経支配による熱産生。起源、つまり前駆細胞は白色脂肪細胞と異なり筋肉に近い。肩甲骨や胸骨の周囲、腋窩に見られる。
大食細胞 Macrophage
貪食能を持つ
樹状細胞 Dendritic cells
貪食能を持つがより高い抗原提示能を持つ
形質細胞 plasma cells
核が細胞の中心にあらずほぼ例外なく端っこにある
核の周囲に明るくなっているゴルジ野が存在する
肥満細胞 Mast cells
ヒスタミンを分泌、蕁麻疹を起こす。アナフィラキシーショックを起こしているときに主に働いている。血管の透過性が高まることによって赤血球の色が見えやすくなる事によって赤い斑紋ができる。第一選択薬はアドレナリン、その後抗ヒスタミン薬。
メラニン産生細胞 Melanocytes 色素細胞 Chromatophores Pigment cells
表皮、真皮、脈絡膜、虹彩に存在する
有形細胞間物質
膠原線維 Collagen fiber・・・コラーゲンを主成分とし、伸縮性はあまり持たない。
細網線維 Reticular fibers・・・膠原線維の一亜型。
弾性線維 elastic fibers・・・エラスチンを主成分とする。枝分かれを持つ。肺や血管、特に動脈の伸び縮みに関わる部分に存在する
EhLers-Danlos syndrome(エーラス・ダンロス症候群)・・・コラーゲンの合成異常の病気。皮膚の過伸展、関節の脱臼、臓器の脆弱性を引き起こす
Marfan syndrome・・・コラーゲンの合成異常の病気。エイブラハムリンカーンもこの病気であったとされている。高身長で手足が長いという外見的特徴。血管の弾性の欠如によって高血圧
Glycosaminoglycan (GAG)・・・成長因子をつなぎとめる、細胞外基質をつなぎとめておく役割。異なるGAGがヒアルロン分子に結合することによりプロテオグリカンProteoglycanを構成する
ex)ヒアルロン酸
筋組織
A帯・・・横紋が暗く見える部分。アクチンとミオシンが重なり合っている部分。A帯の長さはミオシンフィラメントの長さと等しく変わらない。
I帯・・・横紋が明るく見える部分。アクチンフィラメントのみの部分で骨格筋の収縮によって縮む。ここにZ板が存在する。
サルコメア・・・Z板からZ板までのあいだの筋組織の最小単位。
以下3つに筋組織は分類される。
骨格筋・・・核が外側にある。横紋筋でありサルコメアが観察できる。
平滑筋・・・核が細胞内にあり扁平に伸びている。
心筋・・・核が細胞内にあり丸い。
神経組織
神経核に核小体があり目玉のように見られる。神経細胞の核はユークロマチンに富む。
神経細胞の特徴
ニッスル小体
神経原線維
軸索小丘
多量のミトコンドリア
顕著のゴルジ装置
軸索
樹状突起・・・微小管やニューロフィラメントが認められるが樹状突起棘はアクチンフィラメントに富む。
髄鞘・・・細胞膜の内葉で挟まれるのは周期線であり、外葉に挟まれるのが周期間線である。
血液
赤芽球系
前赤芽球・・・赤芽球の中で最大
好塩基性赤芽球・・・前赤芽球よりやや小型(12~17ミクロン)
多染性赤芽球・・・10~15ミクロン。クロマチン染色が進み、核が車輪状。
正染性赤芽球・・・8~12ミクロン
骨髄球形 12~20ミクロン
骨髄芽球
前骨髄球
骨髄球
後骨髄球
巨核球・・・巨大で40~100ミクロン。巨核芽球は核内分裂を繰り返すが、有糸分裂や細胞質分裂を起こさずに大型の巨核球へ成長する。骨髄で巨核球の細胞質がちぎれて血小板ができる。
赤血球・・・直径7~8ミクロン。核はない。
血小板・・・赤血球より小さい。約3ミクロン。止血作用。
白血球は以下に分類できる。
顆粒球・・・好中球+好酸球+好塩基球
好中球・・・10~12ミクロン。IgEによって被貪食細胞を補足し貪食する。殺菌作用を持つ。白血球の中で最も多い。通常は分節核:桿状(かんじょう)核=9:1程度だが、感染などによる炎症時は桿状核優位となる。一次顆粒(アズール顆粒)、特殊顆粒(二次顆粒)を持つ。
好酸球・・・10~14ミクロン。核は2葉に分かれる。アレルギー、寄生虫感染で増加。一次顆粒(アズール顆粒)、特殊顆粒(二次顆粒)を持つ。
好塩基球
無顆粒球・・・リンパ球+単球
リンパ球・・・ミトコンドリアやゴルジ装置が目立つ。
単球・・・**不整形。**白血球の中で最大で約20ミクロン。組織でマクロファージに分化することで免疫応答に関わる。骨内で破骨細胞に分化する。
脈管系
毛細血管の分類
連続型
有窓型
類洞
血管の存在しない組織
眼球
軟骨、椎間板
心臓弁
周皮細胞・・・収縮能力があり血流調節に関わる。
血管内皮細胞同士はVE‐カドヘリンによって接着する。
骨軟骨
軟骨組織は軟骨細胞と細胞間物質(2型コラーゲン、プロテオグリカン)で構成される。次の3つに分類される。
硝子軟骨・・・胎児、気管軟骨、鼻、喉頭、関節で見られる。大きな卵円形ないし多角形の軟骨細胞とその細胞が分泌した軟骨基質(コラーゲンとプロテオグリカン)がある。メタクトマジーが強い。
弾性軟骨・・・耳介、喉頭蓋、外耳道で見られる。
線維軟骨・・・プロテオグリカンが少なく、1型コラーゲンに富む。靭帯や腱、椎間円板、膝蓋骨でみられる。
骨組織は細胞性要素と細胞間物質によって成り立っている
細胞間要素は
骨細胞
骨芽細胞
破骨細胞
からなる。
細胞間物質は膠原線維(1型コラーゲン)と気質からなる
発生の段階では骨芽細胞も観察でき強い好塩基性を持つ。rER(粗面小胞体)が発達している。