忘れるな
朝といっていいのか、昼といっていいのかわからない時間に起床し、惰性でスマホをいじる。
そう、今日僕は暇なのだ。
夕方から少し用事があるだけで、それまでゆっくり、だらだらと、時間を無駄遣いできる。
朝食なのか昼食なのかわからない、ご飯を食べ、未視聴だったドラマと、映画を見た。
しばらくすると、目が疲れて来たので、ベットに横になった。
睡魔がグワっと襲って来たので、その欲に順々に従い、現実と夢の中を右往左往していた。
すると…
「ピンポンポンパンポーン」
急に音が鳴る。
その音が、現実の音なのか、夢の中の音なのか、わからないまま起床した。
「3.11、、、、14時45分、、、黙祷、、、」
地域全体にアナウンスするための、町内スピーカーからの音だった。音質が悪いため、ところどころしか聞こえなかったが、確かに「3.11」「14時45分」「黙祷」というワードを確認することができた。
しまった。
すっかり忘れていた。
のうのうと生きている自分が恥ずかしくなり、なんて愚かなんだと泣きたくなった。
そして、「忘れる」という習性に対して危機感と嫌悪感を抱いた。
町内アナウンスのおかげもあり、僕は黙祷した。
生きていると、自分自身のことで精一杯になり、大切なことを忘れてしまう。
悪いことではないが、人間として何か大切なものが欠けた気がする。
「忘れる」という行為は時に僕らを救ってくれるが、その代償に大きな危険を伴うのだ。
僕はこれからもたくさん「忘れる」
その都度、たくさん「思い出す」
できるだけ「忘れず」過ごす。
できるだけ「思い出し」過ごす。
出かける時間になり、外に出た。電車に揺られ、用事を済ませ、帰宅した。
改札を出る時、残高が「311円」だった。
多分、ポンコツな僕へのメッセージだ。
「忘れるな」という。