
読書#20-2「ルトワックの日本改造論」著:エドワード・ルトワック、訳:奥山真司
この記事の位置づけ
「ルトワックの日本改造論」の読書録。以下の続き。
気づき
軍事力だけでは勝てないのだよ
マリタイム・パワー(海洋力)とは狭義の軍事力だけでなく、関係諸国と有効な関係を持ち、その友好国との軍事的、外交的、経済的、文化的な関係によって形作られる総合的な力のことである。
聞きなじみのない言葉。ググってみたところ、日本語の記事はほとんどなく、英語だとwikipediaにあるのだけど情報量は少ない。
学術的な意味で論文とかで使っていることはあるのかもしれないが、一般に普及した概念ではないと思われる。
シーパワー(海軍力)とは違うという意味で、マリタイムパワーという言葉を使用している。ただ海軍力だけを大きくし、その巨大な力によって周辺諸国を脅して従わせる行為には限界があるということだ。
そうではなく、ちゃんと外交とセットで考えて、軍事力×外交×経済といった複合的な力が必要だというのである。
マリタイムパワーよりもシーパワーの方が重要だと勘違いしてはいけない。その勘違いをしていると指摘されているのが、中国である。
恐喝まがいなことをしていると、周辺諸国全員から共通の敵として認識されてしまう。そうなったとき、単一国家のシーパワーで対処できるだろうか。
日本としては、シーパワーがそもそも不足しているという話もあるかもしれないが、ちゃんとマリタイムパワーを中心に考え、戦略を間違えないようにしてほしい。
リーマン・ショックってすごかったんだなぁ
オバマ大統領が就任した二〇〇九年、リーマン・ショックに端を発する先進諸国の経済混乱を見て、北京政府は「これでアメリカは終わった」と判断し、それまでの「平和的台頭戦略」を改めて、周辺の国々に攻撃的な態度をとるようになったのだ。
今も政治経済に明るいわけではないけれど、リーマン・ショック当時は、ニュースなどほとんど見ず、リーマン・ショックとは何かすらもよくわからなかった。そんな能天気な私と違って、世界は文字通り、大変なショックを受けていたらしい。
この本に依れば、リーマン・ショックによって、北京政府が戦略の方針転換を図ってしまうくらいには転換点となっていたとのことだ。
アメリカオワタと思えるくらいにすごい経済危機だったらしいが、その後、再び経済が復活するなんて誰が予想しただろう。おそらく当時の人の視点から見れば、北京政府をバカにすることはできないだろう。
次の転換点に気づけるか、そして、どこに賭けるか、それが今の私の興味である。負けてもいいので、次は何かに賭けてみたい。
どうでもいいが、リーマン・ショックを題材にした映画として「マネーショート」がある。リーマン・ショックがけっこうわかりやすく説明されているので、一度見てみるとよいかもしれない。
戦争は国内問題の延長?
国民の目を逸らすために、問題解決能力の欠如したリーダーがあえて冒険主義的行動に出て、戦争や紛争を利用するのである。
戦争を起こす国は、たいていそうなのではないかと思われる。というのは、戦争の動機が国内にないことなどないからだ。
たとえば北朝鮮が核ミサイルをもっており、日本に害を加える可能性があると考え、北朝鮮に戦争をしかけるとする。このとき、一見、北朝鮮に原因があるように見えるが、これは日本の安全保障を目的として戦争をしかけているはずなので、国内問題の延長といえるのではないだろうか。
まぁ、現状の日本が、”戦争を起こす”ことはないだろう。私の興味としては、ウクライナの戦争はどうなのかということだ。あれは、ロシアの国内問題の延長なのだろうか。
ただ、ロシアの政権はわりと安定的だと思っていたのだけど、そうでもなかったのか。それとも本当に倒錯した正義感に基づいて戦争に至ったのか。
こればかりは、同時代の視点からはわからない。いずれ時間が経って、俯瞰した視点から調査されるだろうから、それを待つしかない。