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『正欲』観たよ。



神部と諸橋のシーンが良い!

作中後半、神部が諸橋に内面をさらけ出す。

男性恐怖症なはずなのに、どうしても男の人を好きになってしまう。
けど相手からは好きになってもらえるはずがない。
いくら強く求めても受け入れてもらえないと分かってしまっている。
そんな自分が一番気持ち悪い。

観ていて痛々しくなってしまう。

そんな神部に圧倒されて、

「神部さんは気持ち悪くない」「存在しちゃいけない感情なんてない」なんて聞こえが良いだけの慰めの言葉しか言えない諸橋大也。

今まで諸橋自身が理解すらも拒絶していて、薄っぺらい同情の言葉を毛嫌いしていたにも関わらず、その程度のことしか言えないのが皮肉である。

だけどそれが良い。

他人が嫌いで、
それ以上に自分が嫌いで、
それでもそれを隠して生きていく。
じゃないと世界を生きていくことはできないから。
でもこんな生き方は息苦しい。
誰か本当の自分を理解してほしい。
けど、本当の自分を理解できる人間なんているわけないことも分かっている。

こんな感情を持ったことは無いだろうか?

多くの人がそんな気持ちを抱えて生きているんだと僕は思う。

諸橋は自分だけが理解されない(特別な)存在じゃないってことに気づいたはずだ。

エンディングが痛快!

エンディングをネガティブにとらえている人が多いような気がするけど、僕は桐生夏月から寺井への勝利宣言で終わったような気がしている。

僕なりの妄想でラストのセリフを補ってみよう。

(なんか偉そうにしゃべってるけど、奥さんも息子も出って行ったんだろ?私は夫が捕まって、仮に社会的に死んでしまったとしても心の深い所で理解し合ってる。だからこの一言でも通じ合えるんだよ。お前と違ってな。からの)

「いなくならないから」

心なしかガッキーもドヤ顔しているように見えた。
だから僕は心の中でガッツポーズして劇場を去ることができたんだと思う。

正欲を観るべき理由

本作は朝井リョウからのエールだと思う。

自分のことを孤独で理解されえない存在だと思っている人たちに対して、

「君は特別でも何でもない。ただのありふれた悩める人間で、もしすごく運が良ければ理解し合える仲間に出会えるかもしれない。」

と言ってくれているように思う。

桐生と磯村のような関係性を築ける相手に出会うことは本当にまれだけど、確かにどこかにいるんだという気にさせてもらえる。

それだけで少しでも支えになるんじゃないかな。

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