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太田 空き家開き|気仙沼市の空き家を活用して地域をアップデートするプロジェクト

「空き家問題」

そんな言葉が世に出回って久しい昨今、”空き家”は”問題”とセットで語られるケースが多い。何度も繰り返し唱えられる言葉がもたらす影響力は、私たちが思っている以上に絶大で、恐らくあと数年と経たないうちに”空き家=問題”といった方程式、あるいは構図が人々の中に刷り込まれるだろう。

しかしながら、空き家は必ずしも問題なんてレッテルを貼られるような存在ではない。むしろ多くの空き家は資産であり、可能性である。地域とともに歴史という名の旅をしてきた建物たちが持つ風情や個性、現代では生み出せない造形、訪れる人々に与える感動は、キレイにあつらえられた現代の建物には出せないものだ。

宮城県気仙沼市では、空き家を活用し、エリア全体を再生させる取り組みが行われている。取り組みが行われているエリアは、JR気仙沼駅から徒歩20分程度の位置にある地域で、かつて赤線地帯としての歴史を歩んだエリアである。東日本大震災を耐え、依然として花街として賑わっていた頃の建築物が残っている東北において希有なエリアだ。

2024年11月23日。「太田 空き家開き」と題して、太田地区の空き家を活用したポップアップストアが開かれた。ポップアップストア用に手直しした空き家やリノベーションした空き家のお披露目である。空き家の持つ可能性を目にできるだけでなく、実際に空き家(空き家だった建物)の中に入って、空き家の持っていた価値を感じられる珍しいイベントとなっている。

太田 空き家開きの様子

およそ4ヶ月振りの太田地区

「太田 空き家開き」を肌で味わうために4ヶ月振りに太田地区を訪れた。この4ヶ月で、季節は夏から秋を飛ばして冬となり、気温は25度近く低下している。まるで別世界と化した。内湾エリアに車を停め、そこそこ冷たい風を切って歩く。5分程度歩いたろうか。心地良い静寂が漂う太田地区に辿り着いた。

HAMACHIDORI GALLERY

HAMACHIDORI GALLERY

太田地区に着いてから少し歩くと、HAMACHIDORI GALLERYが目に留まる。先に掲載した読売新聞の記事で言及されていた、気仙沼市出身のグラフィックデザイナー・志田 淳 氏によってアップデートされた建物である。

白と基調とした空間に佇む盆栽が美しい

入り口から入ってすぐに美しい盆栽が迎えてくれる。盆栽の前には洗練されたデザインのカードが置かれており、HAMACHIDORI GALLERYへの期待感を高めてくれる。

黒を基調とした洗練されたデザインのアパレルが置かれており、購入できる(クレジットカード決済可能)

HAMACHIDORI GALLERYは、入り口右手がギャラリーとなっており、左手が事務所(兼物販)となっていた。白を基調とした空間の一部にアパレルや展示物が置かれている。

HAMACHIDORI の改修中に見つかったレトロな小物たち

ギャラリーは素朴な空間の中にレトロな小物が並ぶスタイリッシュな世界観が広がっている。展示されている物は、HAMACHIDORIを改修する中で見つかった物とされる。壁にあるのは、改修作業の様子である。

元々畳敷きだった室内の様子や比較的キレイな状態で残っていたスナックの様子などについて、志田 氏から丁寧に教えていただいている。また、HAMACHIDORIの独特の構造についても教えていただいた。

屋根まで突き抜ける天井はぜひ一度見て欲しい

天井まで突き抜けるように開かれた空間だからこそ目にできる柱や梁、桁などの張り巡らされた木々の様子は、ぜひ一度見て欲しい。遥か昔に建てられた建物だからこその構造を目にすることができ、建築当時の思想や用途などに思索を巡らせることができる。

どこか新星な雰囲気が漂う空間
大昔の新聞紙が飾られており、歴史に想いを馳せられる

その他にもギャラリーのあちらこちらに時代を感じさせる物が飾られている。囁くような繊細さで飾られているそれらは、とても自然に存在していて、ふとした瞬間に目を向けたくなる。

美しくなった姿を見せてくれたHAMACHIDORI GALLERYだが、実はまだ完成しているわけでない。今回はプレオープンである。完成の日が今から待ち遠しい。

MAKUAKE BOITE(マクアケ・ボアット)- ななつぼし書店

MAKUAKE BOITE(マクアケ・ボアット)
MAKUAKE BOITE(マクアケ・ボアット)

HAMACHIDORI GALLERYを出て山側へと少し上るとMAKUAKE BOITE(マクアケ・ボアット)との出会いがある。MAKUAKE BOITEでは、一般社団法人まるオフィスの加藤 航也 氏による「ななつ星書店」がポップアップストアとして開かれていた。

昔の木造建築のテイストを生かした温かな空間が広がっている

MAKUAKE BOITEは、エリアイノベーションに関するプロジェクトに関わっている人々が手ずからリノベーションに取り組み、生み出した空間を楽しめる。質朴な空間の中に広がる温かみが感じられる点が印象的で、古本や古道具が溶け合うような景色に目を奪われた。

かわいらしい工芸品

空き家だった建物の姿を垣間見える素材を生かした空間に、現代の人の手が加わった様子が窺えるため、まさに空き家活用といった風合いが感じられる。そうした空間に、新たな買い主との出会いを待ち侘びる書物たちが置かれているのだ。どこか物語の中の世界に立ち入った様な心持ちになれる。

空き家と古本、古道具といった物の組み合わせが、これほどまでに情緒的で風流を感じさせてくれるとは、これまで全く知らなかった。MAKUAKE BOITE、ななつ星書店との出会いのおかげで、そんな未知に触れられたのだから、心から訪れて良かったと感じた。ぜひ一度訪れて欲しい。

BARBER TOUSHIMA

BARBER TOUSHIMA
提灯:BARBER TOUSHIMA

MAKUAKE BOITEから徒歩30秒。赤い理容店の幕が目印のBARBER TOUSHIMAも今回のポップアップストア会場である。こちらでは、仙台市の一般社団法人 Granny Ridetoの桃生 和成 氏に案内いただいた。

様々な商品が並ぶ

BARBER TOUSHIMAでは、手作りアクセサリーや焼き菓子、ドライフラワー、布物など様々な商品との出会いがある。BARBER TOUSHIMAの床はまだ補強が済んでいないのか、歩くとほんのりとした浮き沈みを感じられる。歴史を踏みしめている気分になれた。屋内に入り、軽く見渡した後で「昔の家だ」と感想が漏れた。

当たり前の言葉しか出ない自身の語彙力の乏しさに恥じ入りたくなるが、一方でこの一言が漏れ出てくるような造形がBARBER TOUSHIMAにはあるのだ。桃生 氏からレジの奥にある扉を開けて見せてもらうと一層その言葉が形を持ってくる。何せ扉の奥には古い家屋でよく見られるような台所があるのだ。

恐らく一般的な建築物でポップアップストアを開催しても、こうした異日常と隣り合わせの日常風景を見られる機会はないだろう。何せ世の多くのポップアップストアは、一般住宅を舞台に開催されることがほとんどない。空き家という人の住んでいた面影がある空間で行われるからこそ、隣り合わせに存在している日常を見られるのである。

壁に掛けられた鹿革製のハシビロコウ

壁に掛けられたユニークで味のあるハシビロコウのオブジェや空き家の雰囲気にマッチしたアクセサリー、焼き菓子などの物販は、見ているだけで心が穏やかになるようなノスタルジーを感じられる。また、レジに立つ桃生 氏が屋内やここまで消化した家屋について丁寧に教えてくれるので、空き家活用プロジェクトについても理解を深められる。

屋内では、独特な造形の商品などをテーマに、訪れた人々が談笑に花を咲かせており、温かみのある空間の中で、心地良い団欒に触れられた。ただ物販の売買を交わすだけの淡泊な関係で終わらず、出会いやつながり、そして地域についての理解を深められる。訪れて良かった。心からそう思える時間だった。


本企画とは別に、現在太田地区では空き家の販売が行われています。ご興味のある方は、リンク先よりお問い合わせください。

気仙沼市では、Uターンや移住など、気仙沼市に住みたい方々の相談を受け付けております。気になる方は、リンク先よりお問い合わせください。

※本noteはPRではございません(特定の団体、個人より依頼を受けて制作しているものではございません)


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