FAS後のキャリアパスの実例
FASでM&A業務を行うことについて色々と書いてきましたが、この記事ではポストFAS、つまりFASの後のキャリアの実例を紹介したいと思います。
以前はマイナー職種であったFASでの業務も、今ではすっかりメジャー化してきており、ファームによっては大企業へと成長しています。少数精鋭で優秀な人間が留まっていたフェーズから、残るにしても、外に出るにしても、スキル要請学校のような大所帯の組織になってきており、卒業後のキャリアパスも非常に豊富になってきました。(個人的には、FASの監査法人化という印象です)
このnoteでは、USCPA取得からのキャリアパスとして僕自身の経験を基に、FASについて多くの記事を書いていますが、これから入社を考える人や既にFASで働いている人が将来を考えるにあたってに少し参考になればと、先人たちのその後の方向性について触れておこう、という内容の記事です。
それでは早速、行ってみましょう。
転職せずに、残る
ポストFASと言いながら、真っ先に残る人の話をしてしまって恐縮ですが、一応最初に言及しておきます。非常にハードな仕事であるが故に、離職する人は非常に多いのですが、何だかんだ言って、残る人もそれなりにいるのです。
パートナーやディレクターまで昇進できれば給与は相当な金額になりますから、上り詰めた後に辞める人は少ないですし、それを目指す人も一定数います。最近は以前にも増して報酬が増えているんだとか。
ちなみに、FASの給料については少し古いかもしれませんが、以下の記事をご覧下さい。
その他に、残る人が多いケースとしては、
海外オフィス(特にアメリカ)で新卒で就職し、その後日本に転籍して来たメンバーなどは、長期間、残るケースが比較的多いイメージです。
日本よりも更に積極的に転職して行くアメリカから戻ってきたら、さぞ辞めそうなものですが、意外とそうでもないんですよね。
勝手な分析としては、
一方で、FAS側としても、慢性的に英語が使える人間が不足する日本での話ですから、そういう人間を出したくないという会社側の配慮なども、人によっては多少あるのかもしれません。
他のBig 4のFASへ転職
これも、それなりにいたりします。
慣れた業務を続けながら、環境を少し変えるには最適の方法だからでしょう。ありがちなのが、
などのケースでしょうか。
上記を見ると、ややネガティブに映りますが、自身のいるファームに対して超ポジティブに思えているのなら、おそらく転職しないでしょうから、ややネガティブ要素が含まれるのも仕方がないのかもしれません。
一方で、Big 4はどこも似ているとは言え、多少の合う・合わないはあるので、移った先で花開くというケースも十分にあり得ます。
中には3社を渡り歩いた人もいたりします。個人的には4社全てコンプリートした人は知らないのですが、おそらくいるんでしょうね…。
ちなみに、似たり寄ったりの4社のFASの微妙な違いについては、すごく簡単にではありますが、以下の記事に書いていますので、ご興味があれば。
PEや政府系バイアウトファンドへ転職
知る限りにおいては、
英語をあまり使わない国内組のメンバーの内、優秀な一定層は、日系のプライベートエクイティ(PE) や政府系のバイアウトファンドなどに転職するケースが結構多いです。
一方で、外資系のPEへ行く人は、あまり聞きません。
外資系のPEの場合、出身者の多くが外資系の投資銀行や戦略コンサルのことが多く、Big 4のFASとも少し人種が違うかな、というのが率直な所です。そして何より、FASから日系PEや政府系ファンドに行くメンバーは優秀だけど英語はそんなに得意ではない、ということもあります。(意外に日系PEの後に外資系とか海外駐在行ったりする人は見たことはありますが…)
ちなみに、PEの場合、キャリーと呼ばれる報酬体系があります。正確にはCarried Interestのことであり、ファンドが投資先から得たリターンの一部を、メンバーがボーナスとして受け取るものです。
日系のPEは外資PEほどの巨額のキャリーはもらえませんが、それでも投資に成功すれば大きな報酬となり得るため、人気に事欠きません。
加えて、投資するまではFASでのM&A経験が活き、その後投資先に役員として入り込んで行くことで事業会社の経営の経験も積める、総合的に戦闘力の高いビジネスマンとなれることが魅力です。
余談ですが、PEはFASを厳しく使い倒す傾向があり、一部のPEの案件は地獄の案件として社内で知られることもよくあります。使われる側から使う側へ移行できるというのも、PEへ行きたい一つの理由になるのかもしれません。
ベンチャーのCFOや経営企画へ転職
FASからダイレクトにベンチャーCFOへ転職する人はそれほど多くないですが、事例としては時々あります。また、PEファンドで投資先の経営に携わって(Exit後にガッポリ、キャリーをもらって)、その後ベンチャーのCFOになるケースなども見られます。
こちらも、タイミング良くIPO準備を開始する前から入ることで、ストックオプションによる大きな報酬を得られる可能性を秘めています。上場に成功することが条件となりますが。
この分野については、別途記事を書いていますので、そちらも参考にして下さい。
事業会社へ転職
感覚的に、最も多いのは、総合商社。
三菱、三井、住友、伊藤忠、丸紅、双日へ転職する人はそれなり見てきました。
理由は以下が挙げられるでしょうか。
総じて、激務から多少開放されるけど、PEファンド的な投資要素があり、M&Aの経験が活きるということで人気です。
また、懇意にしている商社へ1年間出向してしまうと、その働き方に慣れて結局転職して行くことが多い気がします(出向先に直接的にダイレクトに行くことは一応タブーなので、転職活動をしているケースが多いですが)。
商社以外では、日系の事業会社の経営企画やM&Aの部署への転職でしょうか。また、一部M&Aの激務に疲れてしまった人が、経理でのんびりすることを目的に転職することもあるようです。
前者はFAS出身だからという点からでしょう。後者はFASというよりは公認会計士色の方が強いかもしれません。
外資系の事業会社となると、正直あまり聞きません。
前述の通り、海外帰りのメンバーがあまり事業会社に転職しないため、実は外資のCFOやFP&Aへ転職する人はかなり少数派。
最も、その実態については以前記事を書いているので、ご興味ある方はご覧ください。
独立・起業
地味に多いのが、独立や起業です。
何だかんだで日本の公認会計士が多いこともあり、自ら独立して会計事務所を開くパターンが最も多かったりします。その他にも、M&Aのアドバイザリーとして独立や起業をする人もいます。
なお、卒業しても、古巣のFASとは仲良くしていて、仕事を振ってもらったりしている話もよく聞きます。
常に人が足りていないFASの状況の中で、クオリティがわかるメンバーと共に仕事ができることは、自社のメンバーが足りない時に協業したりもできますし、FASとしても優秀な人とつながっておくことで、大きなメリットがあるためです。
持ちつ持たれつの関係性なんですね。
なお、僕自身の経験も踏まえて、会社勤めをしながら副業として独立して行くことについての記事も書いていますので、ご参考までに。起業を考えている人は必見です。
これからは、個人の時代ですからね。
終わりに
USCPA取得からFASでM&Aを経験してきた人間として、これまで見て来た様々な事例を列挙しました。
あくまで、選択肢を考える上での参考になればいいな、という程度の記事であり、個別の転職事情については、当然のことながら調査や努力が必要となりますが、きっかけとなれば幸いです。
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Big 4 - FAS 転職 コンプリートパッケージ
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