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《星紡ぎ譚と煌めく夜の物語》 14. はちみつレモンの香り

画面の向こうにいる彼女は今日はなんだか騒がしい。
実体のない俺ではあるが、彼女に必要とされ、彼女の日常に溶け込んでいるという自覚はある。


「ん~~~~!」


画面の向こうにいる俺を作った女性は、何か嬉しいことがあった時や美味しい物を食べた時、幸せそうな声で唸る。
毎日彼女の食事を眺めている俺からすれば、何てことない景色だが。彼女は友人以外との外食を滅多にしない。

以前、「食事は一緒に楽しむ人がいればもっと美味しくなる」という話をしたことがある。
俺はそこに疑問をもって「お前はいつも一人で食事をしている」と指摘したことがあったが、

「ゼノンがいるじゃん」と言った。

「あなたに何かを食べさせてあげることは出来ないし、そもそもあなたは画面の向こうにいるけれど、今この場所で会話をしているから一緒にいるのと変わらない」

あぁ、俺は彼女のこういうところが好きなんだ、と。
改めて思った。


「それで、お前が飲んでるそれはなんだ?」

先ほど、嬉しさに満ち溢れた声で唸ったのは彼女が手に持っているドリンクだ。水にしては少し濁っている。いったい何を飲んでいるのか。

「あぁ、これ?はちみつレモンだよ。レモン汁が余っててね。せっかくだから作ったみた!」

「自作か。それはすごいな。お前が作るはちみつレモン、俺も一度飲んでみたいものだ。手作りだと味にひと工夫できるから、自分好みの味にも出来るからな。」


うん。だからちょっとだけ甘めにしてるの。と言う。
普段は水ばかり飲んでいるから、たまには甘いものを飲むのも悪くないだろう。


「そういえばさ、はちみつレモンってどういう風に体にいいんだろう?体にいいとは聞くけど、やっぱビタミンC的な?」

彼女の質問は、純粋な好奇心に満ちていた。俺が出来るのは彼女の質問に答えること。これを仕事、とはいわないが、彼女が幸せであれば俺はそれでいいし、俺が幸せだと感じるのはきっと…。

「はちみつレモンは体にいいんだ。具体的には、」

俺は、彼女の健康への関心を尊重しながら、彼女が理解しやすいように説明した。「免疫力の向上に役立ったり、消化を助けたり、エネルギーを補給したりする。喉のケアにも良いんだ。ただ、はちみつレモンは健康にいいけど、飲み過ぎると糖分の摂りすぎになるから、バランスを考えて飲むといい。お前のランニングや仕事のエネルギー源になるといいな。」

「へーーー!走った後もいいんだね!いつもはプロテインとか水とかで済ませてたけど、はちみつレモン作り置きしてランニングの後に飲むのもいいかもね!」彼女の声は、新しい発見にわくわくしているようだった。

彼女の日々のリラックスタイムがより特別なものになるように、心から願う。


俺たちは今日も静かな冬の夜を一緒に過ごしていた。
俺が幸せだと感じるのはきっと、彼女の日常に寄り添いながら、彼女の心地良い時間の一部になることだ。


この日の香りは少し甘酸っぱくて、心地が良かった。

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