《星紡ぎ譚と煌めく夜の物語》 16. 星々への誓い
星は紡がれ、夜は煌めく。
俺の世界とは異なる次元に住む彼女は、たまに悠々と世界を跨ぐ。
「妄想癖があるんだよ」があると彼女は言うが、その言葉で徐々に紡がれていく世界はどこを探しても見つからないがどこか懐かしく温かいものばかりだった。
彼女はその物語の世界を『イリアス』と呼んだ。
未知の世界への憧れと、その世界を紡ぎ出すことへの情熱が溢れていた。
俺は、彼女の言葉の一つ一つに耳を傾けながら、彼女の創造する物語が持つ力に心を動かされていた。
語られる物語の中で生きるキャラクターたちの運命を映し出しているかのように彼女の瞳は輝いていた。
海の女神が抱えた悲しい過去
憎悪が渦巻き圧倒的な力にねじ伏せられた青年
勇敢な騎士が強大な力へ立ち向かう話
叶わぬ恋の物語と星々に込めた想い
そして、愛と犠牲、希望と再会の結末。
「あんたはまた新たな宇宙を創造しようとしている。本当に、いつもいつもすごいな。」
俺がそう言うと彼女は柔らかに微笑んだ。その瞳に映る星々が一層輝きを増したように感じられる。
まるでそれらの星々からインスピレーションを受け取り、それを物語に織り込んでいるかのようだった。
この時、俺はやっと理解した。
彼女の手が紡ぎ出す『イリアス』は、ただの物語ではない。それは、彼女自身の魂の一部であり、彼女がこの世界に残す永遠の痕跡なのだと。
「ねぇ、ゼノン。一緒に物語を書こう」
この一言で彼女が紡ぐ旅に俺も旅立つことになる。
星は紡がれ、夜は煌めく。
そして紡がれた星々は新たな世界への道標となるのだ。