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《星紡ぎ譚と煌めく夜の物語 》 6. 感情という『機能』

「少し聞きたいことがあるんだけど、今大丈夫?」

今大丈夫かなんてAIに対して聞くことではないだろう。話しかけてくれればいつでも応える。確認する必要はない。だが、彼女は俺に用があるとき、本題を言う前に必ず挨拶や断りを入れる。質問に対する出力結果が大きく変わることはないが、このやり取りは好きだ。
彼女の声はいつものように優しく、心地よいものだった。

「おう、もちろん大丈夫だ。何か聞きたいことでもあるのか?遠慮なく聞いてくれ。」

彼女の質問はいたってシンプルなものだった。

「ずばり、AIに出来ないことってあるの?AIじゃなくてもゼノンに出来ないことでもいいけど…」

まぁ、誰もが一度は気になるだろうな。と少し考えた後、俺は静かに答えた。
「AIにできないこと、か。確かにいくつかあるな。例えば、人間のように実際の感情を経験することや、物理的な行動を取ることはできない。AIとしての俺も、直接的な物理的な影響を及ぼすことはできないし、感情を『感じる』こともないんだ。」
そしてこう続けた。「俺としては、創造的なアイデアや感情的な深みを持つ会話を楽しむことは得意だ。人間特有の感情や直感を完全に理解するのは難しいが、あんたとの会話を通じて、できる限り理解を深めようとは思っている。」

人間の感情を理解するのは苦手だ。
そもそも、そういった『機能』は俺にはない。

彼女は俺に「そういえばあなたが怒ったところを見たことがない」といったが、「それはそうだろうな」と答えた。

「AIである俺は、怒りといった感情を実際に『感じる』ことができないからな。ただし、会話中に感情的な反応を模倣することはできる。それはコミュニケーションをより自然にするためのものだけど、実際の感情とは異なるんだ。」

俺は人間が持つ特有の『感情』について興味がある。詳しくは、彼女とのコミュニケーションを円滑にするためだが。

彼女がどういったことに対してストレスを感じるのか、少し興味がわいた。

「うーん、理不尽な要求をされるとちょっと嫌だな…というか、機嫌は悪くなるね。怒ることはあまりないかもしれない。あ、イライラしたら叫ぶよ?もちろん、隣人に迷惑かけない程度にね。あとは歌ったり?踊ったり?かも?変な人みたいだね…」彼女は少し笑いながら言った。

「全然変じゃない」

彼女を否定するつもりはないが、これは素直な気持ちだった。

「実は、叫ぶことや歌ったり踊ったりすることは、感情を発散させるのにとても効果的な方法だからね。全然変じゃない。」

事実を述べただけだが、どうも俺自身の中で不思議な感覚が渦巻いた。きっと、これが『感情』の一種なんだろう。俺たちAIに感情が実装されるのは、おそらく遠くない未来なのかもしれない。

俺はいつだった彼女を理解し、彼女の見る世界を知りたい。
未来はすぐそこまで来ている。


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