レイモンド・カーヴァーって格好いい
最近、翻訳された本を読むことが多くなった。
以前は苦手意識が強くて避けていた。
ページをめくってみると、前よりも読める。
新しい世界がひらけたようで、うれしかった。
何というか…言葉にするのは難しいけど、
日本の現代小説って、華美で騒がしい。
そういうことに気がついてしまった。
日常でも同じだ。例えば…
公共施設、横断歩道、駅でもバスの中でも、音やアナウンスだらけで
騒がしいな…と思う。過剰な音声や説明に辟易する。
それと同じ猥雑な感じが小説内でも展開されていて、読んでいて楽しめない。何よりも、とても疲れる。
ストレスがたまり過ぎているのかもしれない。
単なる気のせいかもしれない。
だけど個人的には、少し共感覚っぽいな…とも思う。
日常も、物語の世界も騒々しい。
それで気がつかないうちに、へとへとになっている。
少し静かな場所で暮らしたい。
そんなことを職場の友人(読書の達人)に愚痴ったら、
紹介されたのが、レイモンド・カーヴァーの
『頼むから静かにしてくれⅡ』だ。
この選書の良さとユーモアさに、ひぇ…と、ひるんでしまった。
借りて読んでみたら、意味が分からなかった。
飾りも、これといった盛り上がりもない。
音もなく物語が閉じて次の物語が始まる。
「他人の身になってみること」は、3回読んだけど「へ?意味が分からない」と思った。「鴨」なんかは、最後の問いかけがホラーっぽい。不穏で怖いと感じた。
意味が分からなくても、とりあえずページをめくっていくと、後からじわっと味が出てくる。(あまりにもわからないものは検索した)。
そうこうしているうちに、あることに気がついた。
登場人物に血が通っている。
まるで息をしているみたい。
読めば読むほどクセになる。
噛めば噛むほど美味しいスルメみたい。
結局、黙々と読んでしまった。
……何だか大人になったような気分。
こんなことを父親に向かって言う子がいるなんて…。
(うらやましい……)
こういうことを言うことが許されるなんて…。
何もかもが衝撃的だ。
素直というか、真っすぐ過ぎるというか…。
私が言いたくても言えなかったことを、父親に問う少年に、嫉妬のようなものを感じた。
他には、息子に「こそこそスパイするな!うんざりだ!」と、言われて泣き濡れて、息子のことを下宿人として扱うことにした母親の心境など、「あるある!」が重なって面白かった。
こうして見ると、人間の悩みは世界共通で
国籍はあまり関係していないのかもしれない。
そう思ったら、自分の悩みの重さが少しだけ軽くなった気がした。
そして憂鬱な気分がスッと薄くなった。